好きになってもいいですか? 15 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

「テギョンさんて・・・恋人が、いるんですか?」


心配事じゃない、悩み事でもない、話したからってスッキリするとは思えないけど。

今日物置であの記事を見てから、何だか判らないもやもやが頭の中にあって、とにかくそれを何とかしたいっていう気持ちでいっぱいだった。

突然そんなことを聞かれたシヌさんは初めは驚いた顔をしてたけど、それが何だか寂しそうな表情に変わってきて。


「・・・テギョンのことが、好き?」


「え?」


「好きだから気になるんじゃないの?」


思いもよらない質問に、私は顔が赤くなるのを感じながら首を横に振った。


「えっ!?えっと、ち、違います、そうじゃなくて、今日物置で古い新聞を読んでて・・・」


見つけた古い記事になぜだか心を乱される。

私を見る目は険しくて不機嫌そうで素っ気ないことが多いのに、時々優しい面もあって、そんなテギョンさんのことが気になって・・・

その先にどんな感情があるかなんて、考えてなかった。


「テギョンには好きな子がいるよ、恋人が・・・。ちょっとドジなとこもあるけど、いつも一生懸命で優しい子が」


シヌさんもその人ことをよく知っているのか、テギョンさんの彼女の話をする顔は優しくて穏やかで・・・でも、どことなく沈んだような複雑な表情。



・・・そっか・・・やっぱりいるんだ。



ザワザワとしていた心が深い海の底へ落ちるようにゆっくりと沈んでいく。



そっか、いるんだ・・・特別な人・・・



「テギョンの前で彼女の話はしない方がいいよ。あいつののろけ話なんて、聞きたくないだろ?」


週刊誌で見た写真が頭の中に蘇った。

私が今まで見たこともない、優しくはにかんだ表情・・・


コトンと目の前のテーブルに赤いマグカップが置かれた。

いい匂い。シヌさんの淹れてくれたハーブティー。

いつの間に?シヌさんがキッチンへ行ったことも気づかないくらい私ってボーっとしてたのかな。

お礼を言おうとして顔を上げたら、シヌさんの唇が私の耳に触れそうなほど近づいて。


「・・・俺のことも考えてくれると嬉しいんだけどな・・・」



え?



ふわりと香るシヌさんの匂い。

シヌさんはそう呟くと私の頭に手を置いて、くしゃくしゃっと撫でた後、リビングから出て行った。

マグカップからはほんわかと優しい湯気が立ち上る。

その温かい香りはシヌさんそのもののように思えた。






シヌさんの淹れてくれたハーブティーを飲んだ後、部屋へ戻った私はベッドでぼんやりと天井を眺めていた。


『俺のことも考えてくれると嬉しいんだけどな』


あれってどういう意味なんだろう・・・

言葉の意味を考えて、何となく一つのことに辿り着いたんだけど、いくら何でもそれはありえないって判ってるから、別のことを考えてみる。



えーっと、えーっと・・・この間はジェルミがハンバーグが食べたいって言ったから、ハンバーグ作ったんだけど、シヌさんも何かリクエストがあるのかな?

それとも・・・あっ、魔法の本!私が借りたままだったあの本を返して欲しいっていう意味だったのかも。

私がずっと借りっぱなしだったから、寝不足で困ってるのかも知れない。



早く返した方がいいかなって思ったけど、もう夜中。さすがにこんな時間にシヌさんの部屋をノックするのは迷惑だろうから、明日返すことにした。






「はぁ・・・」


眠れない。

部屋の灯りを消して、ベッドに横になっても一向に眠くなる気配がない。ごろごろと何度も寝返りを打つうちに、カーテンの隙間に目が留まった。

細く開いたカーテンから蒼白い光が射し込んでいる。

私は暗闇の中、その光を頼りに窓まで行きカーテンを開けた。


「月?」


蒼白い光が私の顔を照らしている。

でもこの部屋からじゃ、光は見えても肝心な月の姿が見えない。

屋上なら見える筈・・・

月が見たい、そう思ったけど一瞬ためらった。

夜中にごそごそと動いていると、なぜかテギョンさんに会ってしまう。

お水を飲みに行った時も、包帯を巻き直してた時も、星が見たくなった時も・・・

今日も帰りが遅かったテギョンさん。

そんなにいつもいつも家に帰ってからも、遅くまで仕事してないわよね・・・

もし夜中に部屋から出たとしても、私が屋上のドアをきちんと閉めておけば、この間みたいに「冷気が・・・」って、不審には思わない筈。


私は一度大きく呼吸をすると、静かに部屋のドアを開けた。

足音を立てないようにそーっと廊下を歩いて、屋上へ向かう。

テギョンさんに教えてもらったスイッチに手を伸ばし、外の電気を消すとドアを開け、なるべく音を立てないように静かに閉めた。

ドアを開けた瞬間、しまったと思ったのは、今日もパジャマの上にカーディガンを羽織っただけの恰好だったから。

冷気に身体を震わせるけど、上着を取りに部屋に戻って、もしテギョンさんにばったり会ったら・・・と思うと寒いのは我慢することにした。

屋上に出ると、自分の部屋からは見えなかった月がしっかりと見える。私はその月に引き寄せられるように、手すりまで歩いて行った。


「うわぁ・・・」


暗い闇にその存在を思いっ切り主張している月が美しい。昼間見える月は逆にひっそりとしていて好きだけど、こうして夜見る月は、凛と輝いて見えて大好きだった。

手すりに掴まり空を見上げ、月を眺めていた私は不意に後ろで人の気配を感じ、暗がりを振り返った。




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