You're My Only Shinin' Star (231) マリッジブルー? | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

ピピピピピピピピ・・・


薄暗い部屋に電子音が鳴り響く。


「う~ん・・・」


ジェルミはその音を止めるべく、目を瞑ったまま頭の上の方へ手を伸ばした。ごそごそと手を動かし、うるさく鳴り続けるそれに触れた瞬間、部屋の中は静かになる。

しかし暫くするとまた、ピピピ・・・と音が鳴り、反射的に動いたジェルミの手がその音を止める。

何度かそれを繰り返し、ようやく瞑っていた瞼を開けると、目をこすりながらのそのそと窓へと向かった。

カーテンを開けると射し込む朝日。今まで暗かった部屋は一気に明るくなり、小さなテーブルの上に散乱した缶ビールの空き缶が、キラリと光を反射させる。

ジェルミは眩しそうに目を細めながら窓の外を眺め、大きなあくびをした。




合宿所の静かな朝。

軽く朝食を済ませたテギョンは自室で楽譜のチェック中。

シヌはお湯を沸かし、食後をゆったりと過ごす為のお茶の準備。

ミナムはキッチンの椅子に座り、ぱくぱくと朝のエネルギーを補給している。

そして、今起きてきたばかりのジェルミは・・・リビングでガックリと肩を落としていた。




「はあ~~~」


「・・・・・・」


「はあ~~~~~」


「・・・・・・」


「はあ~」


「おい、いい加減に、そのこっちまで気が滅入るようなため息やめろよ。」


ミナムは「ご飯が不味くなる」と左手に持った箸をテーブルへ置き、ジェルミの方を見た。


「そんなこと言われても・・・はあ~~~」


ゆっくりと振り返り、ソファーの背もたれに肘を乗せたジェルミはミナムと視線が合うと言葉を止め、ため息をつく。


「昨夜も一緒に飲もうとか誘っておいて、結局ため息ばっかついてたじゃないか。」


「だって・・・だってさぁ、もうすぐ結婚しちゃうんだよ。そう思うと、何だか・・・はあ~~・・・」


本日何度目かの大きなため息をついたジェルミは、ソファーの背もたれに顔を埋めた。


「今更って気もするけど、ジェルミは反対なの?」


「違う、そうじゃなくて・・・・・・何となく心配じゃない?だって相手はテギョンヒョンだよ。潔癖症で、神経質で、食べ物の好き嫌いは多いし、凄い焼きもち焼きだし・・・・」


テギョンと一緒に生活するのがどれだけ大変か、と指折り数えるジェルミ。


「ミニョ、大丈夫かなぁ・・・」


「それこそ今更だろ。」


う~んと唸るジェルミは崩れるようにソファーに身体を沈み込ませた。


「結婚に不安を感じて気分が落ち込む・・・これも一種のマリッジブルーっていうのかな。」


シヌがカップに注いだ温かいお茶をゆっくりと飲みながら、ポツリと言った。


「はあ?自分が結婚する訳でもないのに?世話のかかるヤツだなあ。シヌヒョン、何とかならないの?」


「別にほっといてもいいんだが・・・確かにあのため息はこっちまで気分が沈むし、ここままじゃ仕事にも影響しそうだな。」


ジェルミのうっとうしいため息はテギョンをイラつかせるだろうし、今のままではジェルミがすぐに気持ちを切り替えてミスのない演奏ができるとも思えない。

ジェルミのため息がうつった訳ではないがシヌも小さなため息に似た息を吐くと、飲みかけのお茶をテーブルへ置いた。


「ジェルミの場合ミニョの心配っていうより、どっちかっていうと・・・ジェルミ、昨日は楽しかったか?」


「へ?あ、うん、すっごく楽しかった。久しぶりにミニョに会えたし、一緒にバドミントンもやったし。」


先程までの暗い顔は一変して明るい表情になり、昨日公園でしたバドミントンの話に声を弾ませる。ニコニコとその場にいなかったミナムにどんな風だったかを話すジェルミは本当に楽しそうで。

しかし、「滅多にないことだろう」と言うシヌの言葉にしゅんと俯くと声のトーンがガクンと落ちた。


「だよね・・・あ~あ、ジョリーの散歩も一緒に行きたかったのに・・・」


ソファーから身を乗り出してしゃべっていたジェルミは再び力なくソファーに埋もれる。

昨日、楽しい思いをした分、いやそれ以上に喪失感がジェルミを包み、ミナムと飲んでいてもため息が出て、ベッドに入ってもなかなか眠れなかった。


「で?ジェルミは何を落ち込んでるんだ?」


「だって、ミニョもうすぐ結婚するだろ?そしたらなかなか会えなくなるじゃないか。そりゃあライブとかは見に来てくれるかも知れないけど・・・」


予想通りのジェルミの答えに、やっぱりなと小さく笑うシヌと、結局それかと呆れ顔のミナム。


「それって今とどう違うんだ?」


「へ?」


「今までだって練習室を使いに来た時と、ライブの時にたまに会うくらいだろ?結婚したからって変わらないと思うけど。」


「ああ・・・そっか・・・」


「今までと同じくらい会えるんじゃないか?」


「そっか・・・そうだね・・・・・・今までと同じくらい会えるんだ、なんだ、変わんないじゃん。」


沈んでいたジェルミの声は徐々にいつものトーンに戻っていき、ガバッとソファーから立ち上がると、「悩んだらお腹すいちゃった」とミナムの隣に座り、ご飯を食べ始めた。

すっかりいつもの調子に戻り、口いっぱいに食べ物を頬張っている姿に、単純なヤツと隣をチラリと見るが、あれ?とミナムの首が傾いた。


「ねえ、シヌヒョン、今までと同じって・・・それって結局あんまり会う機会がないってことじゃあ・・・」


「しーっ、『会えない』より『会える』って思ってた方が精神衛生上いいだろ?とりあえずジェルミのため息は何とかしたし、俺は気分よくお茶が飲める。これ以上何か問題があるか?」


唇の前に人差し指を一本立て、ジェルミに聞こえないように小声で話すと、シヌは残りのお茶にゆっくりと口をつける。


「シヌヒョンって時々・・・」


「ん?」


「・・・いや、何でもない。」


左でニコニコとご飯を食べるジェルミと右で小さく微笑みながらお茶を飲むシヌに挟まれ、ミナムは何も言わずに右手のスプーンを口へ運んだ。




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