「Amazing grace how sweet the sound
That saved a wretch like me.
I onse was lost but now am found.
Was blind but now I see. ・・・・・・」
アメイジング・グレイス 何と美しい響きであろうか
私のような者までも救ってくださる
道を踏み外しさまよっていた私を神は救い上げてくださり
今まで見えなかった神の恵みを今は見出すことができる ・・・・・・
ミニョが食器を洗いながら小さな声で歌っている。
『アメイジング・グレイス』
二度目にアフリカへ行った時にカトリーヌに教わった歌だが、ミニョは最近この歌をよく歌っていた。
「練習・・・という感じではないわね。まるで誰かを思い出して口ずさんいるように聴こえるわ。テギョン君ではなさそうだけど・・・誰かしら?」
カトリーヌが意味ありげな笑みをミニョへと向け、皿を棚へとしまっていく。
「アフリカにいる時に知り合ったイギリスの方です。ビル・アーリスさんと仰るお年を召された男性で、私の歌を気に入って下さったんです。その時はまだアメイジング・グレイスは教わってなくて、アヴェ・マリアを歌ったんですけど。」
ミニョは雨の降る中、木の下で座っていた男性を思い出していた。
今まで多くの人を傷つけてしまい、その罪滅ぼしの為にボランティアに来たと言っていた。
どんな人生を歩んできたのだろうか。服の袖から出た腕にはたくさんの傷跡が見えた。
難しい顔をして一人で座っていたが、ミニョと言葉を交わすうちに表情が柔らかくなり声を出して笑う姿も見られた。
「たくさんの人を傷つけたと仰っていたんですが、私にはビルさんの心の方が酷く傷ついているように思えて。あとでカトリーヌさんにアメイジング・グレイスを教わった時に、この歌を歌ってあげられたらなって思ったんです。」
カトリーヌと一緒にイギリスへ行くことになった時、イギリスへ帰ると言っていたあの男性のことを思い出した。
イギリスへ来ることがあれば連絡が欲しいと言われたが、知っているのはビル・アーリスという名前だけで連絡先は聞いていない。それに一度会って話をしただけ。相手は自分のことを忘れているかも知れない。
それでもイギリスへ行くのなら、あの男性にアメイジング・グレイスを聞いて欲しいという思いから、つい口ずさんでしまう。
エプロンを外しながら歌い続けるミニョの横で、カトリーヌはじっとミニョの顔を見ていた。
昼食を早目に済ませリビングでくつろいでいると、カトリーヌは何だかそわそわと落ち着かない様子のミニョが気になった。
ミニョは大きなスーツケースと時計を交互に見ては小さなため息をついている。
時折ミニョの携帯が鳴る。
テギョンからのメール。
短い返信をして軽く下唇を噛んでいるミニョを見て、カトリーヌは手にしていた雑誌から顔を上げた。
「まだ仕事終わらないって?」
「はい、何だか今日はトラブルが続いているらしくて・・・」
仕事の進行状況を伝えるような内容のメールが何度か送られてきていた。
収録が終わったらミニョとカトリーヌを空港まで送って行くと電話で話していたテギョン。
飛行機の時間に間に合わせる為にはそろそろ収録が終わらなければならない。
「テギョン君間に合わないかもね・・・会えなくて寂しい?」
ミニョは小さく頷いた。
「・・・ツアー前で特に忙しいみたいで、この間一緒にここでご飯食べたきり会ってないんです。私が帰って来るのが十日後。帰って来てもすぐ会えるか判らないし・・・」
ミニョは俯いたまま手の中の携帯を握りしめた。
ふうっと大きなため息をついた時に再びミニョの携帯が鳴る。今度はメールではなかった。
携帯から聞こえるテギョンの声は沈んでいるように聞こえた。
「オッパ、気にしないで下さい、私ならカトリーヌさんとバスで行きますから。」
収録が終わらず送って行けそうにないと言うテギョンは、代わりにマ室長を行かせたと言う。
カトリーヌはミニョに少しだけテギョンと話したいと耳打ちをした。
「テギョン君、忙しいのに気を遣わせてごめんなさい。今までありがとう・・・今回はミニョ一人だけど、いつか機会があったら二人で私のステージを見に来てね。」
「お仕事頑張って下さい。」
カトリーヌから電話を代わったミニョがそう言うと暫く無言になり、そのまま会話が終わってしまいそうな雰囲気にカトリーヌはミニョの二の腕を人差し指で突っついた。
「ミニョ、それだけでいいの?他にも伝えることがあるんじゃない?」
優しく微笑むカトリーヌにミニョは少しだけ考えるような表情を見せると携帯を持つ手に力を入れた。
「・・・本当は今日、オッパに会えると思ってすごく楽しみにしていたんで、会えなくて残念です。イギリスに行ってカトリーヌさんのステージが見られるのは嬉しいけど、オッパに会えないのは寂しい・・・」
携帯の向こうでミニョの名を呼ぶテギョンの声がとても優しく聞こえる。
「毎日メールします・・・オッパのお仕事の邪魔はしたくありませんから。」
これから始まるA.N.JELLのツアーのことを思い、メールにしようと思ったのだが、それなら俺から電話すると言うテギョンにミニョは顔を綻ばせた。
迎えに来たマ室長の車に乗り、そろそろ空港の駐車場へ着くという頃ミニョの携帯にメールが入った。
テギョンからのメール。
『ミニョ、サランヘ』
ミニョは嬉しそうに見つめると暫く考え、戸惑いながら短いメッセージを送った。
ミニョからテギョンへの初めての言葉。
口に出して言うのはまだ少し恥ずかしい。
でも伝えたい。
『オッパ、サランヘヨ』
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アメンバー申請をして下さっている ○な さん
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