普段は使っていない作曲部屋。
テギョンはミニョと一緒の時はこの部屋を使う。今日もこの部屋で作曲作業をしていた。
廊下の突当りには自販機があり、事務所ではここの自販機でしか買えないジュースを買いに練習生のジフンがこの部屋の前を通りかかった。
「あれ?テギョン先輩戻ってたんだ。」
今日はドラマの撮影で朝から事務所にいなかったテギョン。
小さめの廊下の窓からテギョンの姿が見えるとジフンは思わず身を隠した。
「何だか判んないけどこの前ここにいた時、凄い目つきで睨まれたからなぁ・・・」
部屋のソファーで眠っているミニョに膝掛けを持って来た時のことを思い出し、身震いするとそっと中の様子を窺う。
作曲をしている最中なのだろうか。
防音になっている為ほとんど音は聞こえてこないが、キーボードを弾き時々譜面に何かを書き込んでいるのが見えた。
「へえ、やっぱり音楽が好きなんだな。あんな楽しそうな顔して。」
キーボードを弾いているテギョンの顔はとても穏やかな表情をしている。
暫くするとテギョンの手が止まり、部屋の隅に顔を向けた。
「あれ?今度は口尖らせて・・・何だろう?」
立ち上がったテギョンが部屋の隅へと歩いて行く。
ジフンはテギョンに見つからないように気を付けながら窓に顔をくっつけるようにして部屋の中を覗いた。
テギョンはソファーに座っていた。
「意外だな、テギョン先輩があんなに人に近づいて座るなんて。」
ジフンは今までのテギョンを思い出していた。
A.N.JELLのメンバーはそれ程でもないが、それ以外の人間に触れるのを嫌がっていた。
練習生のジフンやジュンホともあまり接近したがらないテギョン。
マ室長の話ではドラマの撮影もかなり苦労しているという。
そんなテギョンがピッタリとくっつくようにして座る相手とは一体誰なんだろうと興味津々で中を覗く。
眠っているのだろうか。俯き加減でピクリとも動かないその人物を窓に張り付くようにして見た。そして・・・
「あれは、ミ・・・」
目の前の光景にジフンは口から出かかった言葉を閉じ込める様に慌てて手で口を塞いだ。
部屋の中では眠っているであろう相手にキスをしているテギョンの姿が。
ジフンはゴクンと唾を飲み込むと足早にその場から立ち去った。
マズいものを見たと思った。これは絶対にトップシークレットの筈。
ああ、他の先輩たちは知っているんだろうかとジフンは狼狽える。
アン社長は?マ室長は?
A.N.JELLの皇帝ファン・テギョンに恋人発覚!となったらファンが、記者が、世間が大騒ぎするだろう。
しかも・・・しかも相手がミナム先輩!
「おーい、ジフン。」
同じく練習生のジュンホが廊下を早足で近づいてくるジフンを呼び止める。
「何だ、ジュース買いに行ったんじゃないのか?」
手ぶらのジフンを見てジュンホが首を傾げた。
ジフンはジュンホの声が耳に入っていないのか、そのままジュンホの前を通り過ぎる。
「判った、金忘れたんだろう。いいよ、この前奢ってもらったからな、俺が買ってきてやる。いつものでいいんだろ?」
ジフンの足がピタリと止まると、慌てて引き返しジュンホを引き止める様に服を摑んだ。
「ジュース、いい、いらない。」
ブンブンと大きく首を横に振るジフン。
「いいよ、遠慮するな、買ってきてやるよ。」
「だ、ダメだ、行かなくていい。」
「何だよ、何かあったのか?」
身体を強張らせ、服を離さないジフンをジュンホは怪訝な顔で見た。
何かあった?
大ありだ。
確かに見た。
見てはいけないものを・・・
いつから二人はそういう関係に?
そういえばA.N.JELLの合宿所で一時期二人が同室になったと聞いたことがある。部屋数が足りなくてミナム先輩がテギョン先輩と同室を希望し、テギョン先輩はそれを拒まなかったと。
もしかしてその時に・・・
先程見た光景が目に焼き付いて離れず、そこから色々なことを考えてしまう頭をブルブルと大きく横に振ると、とにかく作曲部屋には近づけさせてはいけないと、「ジュースいらない」を繰り返し言いながらジフンはジュンホの服を摑んでいた。
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