ミニョは真っ直ぐに前を見て運転しているハン・テギョンの方へ顔を向けた。
「テギョンさんが私のお兄ちゃんだと思っている人は・・・違うんです。あの人は・・・」
「僕はミニョちゃんのことが好きだよ。」
ハン・テギョンはミニョの言葉を遮るように自分の言葉を重ねる。
突然の告白にミニョは目を丸くした。
「アフリカにいた時から・・・好きだったんだと思う。韓国に帰って来て、偶然会えた時はもの凄く嬉しかった。何度か偶然会って、その度に僕は跳びあがるくらい嬉しかった。でも・・・もう偶然を待つのは嫌なんだ。今日みたいに約束がしたい。・・・ミニョちゃんは?・・・僕のことどう思う?」
一瞬だけミニョに視線を向け、また元の様に前方を見つめるハン・テギョンの姿を見ながら、ミニョは手に持っていたバッグをギュッと握りしめた。
「あの、ごめんなさい、私・・・私は・・・好きな人が・・・お付き合いしている人が・・・います・・・」
俯くように手元のバッグをじっと見つめるミニョ。
「それって・・・後ろの車の人?・・・やっぱり、お兄さんじゃなくて彼氏だったんだね・・・」
ハン・テギョンはハンドルを握る手に力を込め、バックミラーでチラッと後ろの車を見ると大きく息を吐いた。
「どうしてそれを・・・ごめんなさい、お兄ちゃんじゃないって今まで黙ってて・・・」
「何となく気付いてた、そうじゃないかって。僕が出張に行く前偶然ミニョちゃんに会って、一緒にいた彼にお兄さんて言ったら彼はそれを否定してたよね。そのことが気になってて、戻って来た時に中山聖堂に行ってミニョちゃんのこと聞いたんだ。そしたら双子のお兄さんが一人いるだけで、他に兄弟はいないって教えてくれた。双子のお兄さんて病院で紹介してくれた人だろ?その時気付いたんだ。ああ、あの人は彼氏なのかなって・・・」
ハン・テギョンは一度息をつくと、前を走る車の赤いテールランプを見つめた。
「でも・・・お兄さんだって思いたかった。僕はミニョちゃんのことが好きだから・・・。この間、雨に濡れてるミニョちゃんを見て・・・電話に出ようとしないミニョちゃんを見て・・・こんなに辛そうな顔をさせてる奴がミニョちゃんの彼だなんて、その存在を認めたくなかった。彼からの電話に出て、ちょっと意地悪して、彼を慌てさせるようなことをわざと言った。あの後凄いスピードで青いアウディが走って来たよ。」
ハン・テギョンはゆっくりと車を路肩へ停めると、バックミラーに映る青い車をじっと見た。
「さっきからずっと・・・いや、行く時からずっと後つけてきてるね、ミニョちゃんの彼氏。僕たちが今日出掛けるのを知ってたってことだよね。知ってて自分の彼女が他の男とデートしてるのをずっと後つけてるなんて、変な人だね。」
ハン・テギョンはハンドルに乗せた腕に額を押しつけると、微かに口元に笑みを浮かべながらミニョへと顔を向けた。
「デ、デート!?」
「あれ?違うの?僕はずっとそのつもりだったんだけど。」
「ち、違います!私は、全然、そんなつもりはなくて・・・この間お世話になったお礼がしたいと・・・」
ミニョは顔を赤くしながら首を横に振り、デートという言葉を慌てて否定する。
「だからオッパにも行かせて下さいってお願いしたんです。」
「ふうん・・・」
バックミラーを覗いてみる。
車でずっと後をつけ、自分たちが店の中にいる時はどうしていたんだろう?
男一人の客なんて目立つからすぐに気付くと思うのに、それらしい客はいなかった。
店の外で待っていたのか?
車の中で待っていたのか?
その後また自分の車の後をつけてきて・・・
ハン・テギョンはプッと噴き出した後、小さく声を出して笑い出した。
「何か変わってるね、ミニョちゃんの彼氏。ああ、でも・・・」
急に笑い出したハン・テギョンをキョトンとした顔で見ているミニョを見て、何だか判る様な気がした。
心配で目が離せない。
他の男の車の中で無防備に眠ってしまうミニョ。
アフリカで毎日見ていた笑顔。
誰に対しても優しく接する姿に誤解をする男もいるだろう。
自分のように・・・
「あ、ミニョちゃん、まつ毛にゴミがついてる、目に入りそう。ちょっと、目瞑って、取ってあげるから。ああ、動かないで。」
どこですか?と言って手を目に持っていこうとするミニョを言葉で制すると、ハン・テギョンは助手席へと身を乗り出してミニョの顔を覗き込む。
対向車のライトに照らし出されるミニョの顔。
閉じられた瞳。
長いまつ毛。
薄紅色の唇。
ハン・テギョンはミニョの顔を見つめ、瞼を撫でる様にそっと指で触れるとバックミラーを覗いた。
「ミニョちゃん、ダメだよ、男の前で簡単に目なんか瞑っちゃ。憶えておいた方がいい・・・。ほら、彼氏が迎えに来た、出ようか。」
車の外へ出ると走って近づいてくるテギョンの姿。
「おい!今ミニョに何をした!」
テギョンは自分よりも幾分背の高いがっしりとした体格のハン・テギョンの胸倉をつかむとギロリと睨みつけた。
「オッパ、どうしたんですか急に。」
突然テギョンが怒りだし、ハン・テギョンに摑みかかったことに驚いたミニョは慌てて止めに入った。
「どうしたって、今、この男が・・・」
ハン・テギョンはフッと笑い、テギョンの両手首を摑んで自分の胸元から引き剥がすと、テギョンの顔を正面から見据えた。
「何もしてませんよ・・・。こんばんは、ミニョちゃんの彼氏、さん。」
かなり力を入れて摑んでいた服を簡単に外されたテギョンは顔をしかめ、自分の手首を摑んだままのハン・テギョンの手を振り払った。
敵意のこもった視線を背中に受けながら、ハン・テギョンは車の後部座席のドアを開け上半身だけ中に入れると鞄の中をごそごそと探り、心配そうにテギョンを見ているミニョに缶コーヒーを一本手渡した。
「はい、これ、うちの会社で一番人気のコーヒー。美味しいよ。本当は一緒に飲みたかったんだけど・・・無理みたいだから・・・」
寂しそうに微笑むハン・テギョンはミニョへコーヒーを渡した後、眉間にしわを寄せているテギョンの前に立った。
「そういえば名前聞いてなかったな。・・・ま、いいか、もう僕には関係ないし。・・・僕あんまり人の顔覚えるの得意じゃないけど・・・その三白眼はきっと忘れないと思うよ。」
苦笑いするとテギョンにも一本缶コーヒーを渡した。
「それ、うちの会社で一番苦いやつだから。」
運転席のドアを開け、振り向いたハン・テギョンはミニョに言葉をかける。
「ミニョちゃん、僕がさっき言ったこと、忘れないようにね。」
ハン・テギョンは車に乗り込むとミラーに映る二人を一瞥し、アクセルを踏んだ。
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前回の記事を読んで、お祝いの言葉やケーキを下さった方、ありがとうございました。
あんな小さなつぶやきにも反応して頂いて、正直吃驚!すごく嬉しいです。
シナモロールを下さった方、どなたか判りませんがありがとうございました。
ピグ・・・なかなかお部屋にいなくてごめんなさい。
お会いしても緊張しちゃって、動きはぎこちないし、チャットも遅いし・・・
自分から話しかけるのは苦手ですが、話しかけられるのは好きなのでそれでもOKという方、気軽に遊びに来て下さい。・・・って、いないことの方が多いですけど・・・
先週の金曜日に入学式を終えた次男は昨日から元気に小学校へ行ってます。
でも、今週は一年生給食なくてお昼で帰って来るんですよね・・・
取り敢えず今日は午前中に更新出来ました。
次回がいつになるかまだちょっと未定です。ごめんなさい。
最近特に不思議に思うこと。
注目記事のランキング・・・1度11位以下になった記事が再びランクインしている。
今日もPC開いて驚きました。
前回の 『告白 1』 って、1週間近く前の記事なんだけど?
きっとすぐに消えると思うけど、それだけ皆さんが気にしていて下さるのかな、と勝手に喜んでいます。
更新もしていないのに、ペタやポチをして下さる皆さん、本当にいつもありがとうございます。
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