You're My Only Shinin' Star (112) 二人だけのひと時 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

午後から降り出した雨は次第に激しさを増し、風のせいもあり傘を差していてもマンションへ着く頃には、ミニョの服はずいぶんと濡れていた。


「ただいま。」


夕方部屋へ帰ってきたミニョは 「ただいま」 と言ってからカトリーヌがイギリスへ帰ったことを思い出した。

いつもなら 「お帰り」 と言って微笑むカトリーヌの声に迎えられるのだが、シーンと静まり返ったリビングからは何の返事もない。

濡れたコートを脱ぎ何となく寂しさを感じながらリビングへ入って行くと、奥から人が近づいてくる気配がした。


「お帰り。」


まさかカトリーヌ以外の人間が部屋にいるとは思わなかったミニョは、人の気配を感じた瞬間思わず身構えた。


「あれ?オッパ、どうして・・・」


現れたのがテギョンだったことにホッとしたミニョは安堵のため息をつきながら首を傾げる。

ミニョはマンションで暮らすようになってからテギョンとは会っていなかった。完全に仕事に復帰したテギョンは毎日忙しく、合宿所に帰って来るのは深夜になる為、仕事の合間にメールするのが精一杯でゆっくりと電話で話をすることも出来なかった。


「カトリーヌさんがいない間俺がここへ泊ることになっているんだが・・・彼女から何も聞いていないのか?」


ミニョは首を横に振って返事をする。


「まあいい、とにかく彼女が帰って来るまで俺はここに来るからな。」


さっきまで沈んでいたミニョの表情がパッと明るくなった。





テギョンはアン社長にミニョとのことを話した。

婚約したこと、半年後にはマンションでミニョと一緒に暮らすこと。

アン社長は渋い顔をした。

ミニョがまだアフリカにいる時に騒がれたトレイシーとのことは、トレイシーの顔は写っていなかったが逆にテギョンの笑顔が注目されマスコミがずいぶんと煩かった。

そしてカトリーヌとの写真。テギョンの顔は写っていなかったが、腕を組むカトリーヌの姿がずいぶんと親密に見えた。

マスコミへの対応はトレイシーはツアーに同行している雑誌記者、カトリーヌは友人とそれぞれ恋愛関係を否定していたが騒ぎはなかなか収まらない。

A.N.JELLのリーダーファン・テギョンの完全復帰を何としても成功させたいアン社長にとって、これ以上のスキャンダルは迷惑なだけだった。二つのスキャンダルでファンクラブの会員数は確実に減少している。たとえ真実の愛であろうとファンにとってテギョンに女の影は必要ない。

だが二人の関係を公表すると譲らないテギョンにアン社長は考えた末、半年の間ミニョとの関係を秘密にすること、ドラマの出演を一本引き受けることを条件に、テギョンの要求を受け入れることにした。




雨で濡れた服を着替えながらミニョの顔に笑みが広がっていく。

たった一週間会っていなかっただけなのに・・・

メールの遣り取りはしていたのに・・・

復帰したテギョンはワイドショーなど連日テレビに顔を出していて、それはミニョも見ていた。

しかし目の前でテギョンの姿を見て、テギョンの声を聴いて、テギョンの存在を近くに感じると、嬉しくてどうしてもそれが顔に表れてしまう。

そしてニヤけた顔をしているのがここにも一人。


「今日は午後から外での撮影だったんだが、この雨で延期になったから予定より早く終わった。」


キッチンでコーヒーを淹れながら嬉しそうに話すテギョン。


「わあ、いい香りですね。」


二人でコーヒーを飲みながらテギョンはアン社長の出した条件のことを話した。


「判りました。オッパと一緒にいるところを見られないようにしないといけませんね。」


「明日の朝は少し時間に余裕があるから聖堂まで送って行きたかったんだがな。」


「それよりオッパ、ドラマの方は大丈夫なんですか?今までずっと断ってきたのに。」


「アン社長も俺がドラマに出れば新しいファンを開拓できるとでも思ったんだろう。俺のドラマ嫌いは皆知っている筈なのに、何故かオファーがくる。今きているのは三本だが、どれも俺の出番はそれ程なさそうだ。あまり出番が多いとそれだけで断られると思ったんだろう。制作者側はファン・テギョンの名前さえあればいいんだ。撮影が始まるまでには時間がある。どれにするかは脚本を読んでゆっくり考えるさ。」





「ミニョ?」


風呂上がりのテギョンはリビングにもキッチンにも寝室にもいないミニョの姿を捜して歩き回る。冷たい外気が入ってきていることに気づき、ベランダへ向かった。

激しく降っていた雨はすっかり止み、今は雲の合間から丸い月が顔を覗かせている。

ベランダの窓を開け夜空を眺めているミニョの姿は、月の光を浴びて長い影が部屋の中まで伸びていた。


「今日は月明りで俺でもここまで来られたぞ。」


テギョンは自慢げに言うとミニョの横に並び、同じ様に夜空を眺める。


「月が満月に近づいていくと見える星の数が減っていくんですよね・・・」


寂しそうに呟くミニョの身体を後ろからそっと包み込む。


「今日から暫くは俺がいるから夜空の星はいらないだろう。俺が合宿所に戻る頃にはまた星が沢山見えるようになってるさ。」


ミニョの肩に顎を乗せ、頬をくっつけているテギョンの顔を横目でチラッと見ながらミニョは寂しそうな顔をした。




テギョンがマンションへ泊まりに来るようになって一週間後、カトリーヌから帰って来ると連絡が入り、合宿所へ戻る朝。

マンションの地下駐車場から出て来るテギョンの青い車が写真に撮られた。




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