You're My Only Shinin' Star (107) 初共演 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

「どうしてバスで行くんだ、俺が乗せて行くと言っただろう。」


「でもオッパは今日は事務所でお仕事ですよね。」


バス停でバスを待っていたミニョの前に青い車が停まる。ミニョが助手席に座るとテギョンは口を尖らせていた。

明洞聖堂での仕事は引っ越しが終わってからの予定だったが、その前にもう一度きちんと挨拶をしたいと今日聖堂へ行くことにしていた。

一緒に行くと約束をしていた訳ではないし、少しずつ作曲以外の仕事も再開したテギョンは徐々に忙しくなってきている。そんなテギョンの手を煩わせてはと、ミニョは一人でバスで行こうとしていた。

テギョンはミニョにシートベルトを着けてやりながらその唇をそっと自分の唇で塞ぐ。

一瞬の出来事にミニョは驚いて目を開いたままだった。


「なっ・・・」


慌てて手で口を塞ぐが、その顔は真っ赤ですぐには言葉も出ないようだ。


「お、お、オッパ、こんなところで・・・誰かに見られたらどうするんですか。」


「大丈夫だ、シートベルトを着けてやってるようにしか見えない。それに俺なら見られても全く問題ないぞ。・・・これはお前が勝手に一人で行こうとした罰だ。」


あたふたと慌てるミニョを横目で見ながらニヤリと笑うとテギョンは車を走らせた。





韓国一長い歴史を持ち、韓国カトリック教会の誕生とともに造り上げられた明洞聖堂は、韓国カトリック教会の象徴でもあり、明洞のシンボルにもなっている。

装飾的な要素を排除した比較的シンプルな聖堂で、細く尖った屋根と背の高い時計塔を持つ建物は、すべて煉瓦で建てられており、外装はニ十種類の赤色と灰色の煉瓦を使うことによって建物全体の陰影の美しさを強調していた。


明洞聖堂の院長様に挨拶を済ませると、中山聖堂の院長様から話を聞いていたようで、歌を聴かせてほしいと言われテギョンと一緒に聖堂の中へ。

多くの観光客が訪れる場所でもあるが聖堂に一歩足を踏み入れると町の喧騒が嘘のように厳かな静けさに包まれ、テギョンの歩く靴音が聖堂内に響く。

イエス像を通り中へ入ると、リヴ・ヴォールトの天井、尖頭アーチの窓。その窓に嵌められた美しいステンドグラスや大きな柱が見えた。

中山聖堂よりかなり広い聖堂内は高い天井がその空間をより一層広く感じさせている。

二階へ上がると聖歌隊の歌う場所とパイプオルガンがあり、そこから見る祭壇はその聖堂の広さゆえ遠く小さく見えた。

ミニョが二階の手摺に手を置き、聖堂の荘厳な造りに見惚れていると、すぐ後ろのパイプオルガンをテギョンが弾き出した。

フルートのような柔らかく温かな音色が太いパイプを通して鳴らされ、バイオリンやチェロのような弦楽器の音色が細いパイプを通して鳴らされる。トランペットのような主張の強い音も出せるその楽器は、テギョン一人の演奏でまるでオーケストラの演奏を聴いているような豊かな音色を聖堂内に響かせた。

両手と両足を同時に使い、歌っているかのようにメロディーを奏でるテギョン。


「オッパ、凄いです、パイプオルガンまで弾けるなんて。」


「子供の頃に色々やらされたからな、パイプオルガンもその時に少しだけ。手も足もよく覚えていたものだと自分でも驚いている。」


振り向き感嘆の声を上げるミニョとは対照的に、自分の手を見つめているテギョンの声は少し沈んで聞こえた。


「だがそれも今では良かったと思っている。でなければこんな素晴らしいパイプオルガンを弾くことなど出来なかっただろう。それに・・・ほら、次はお前の番だ。」


そう言ってテギョンが弾き始めたのはシューベルトの 『アヴェ・マリア』 。

テギョンの伴奏に合わせ、ミニョが歌う。

カトリーヌが言っていたように、ミニョの声は完璧にクラシックの声になっている。聖堂の広さと響き具合に合わせ、自分の身体を一つの楽器のようにして声を出す姿は、ソプラノ歌手以外の何者にも見えなかった。

広い聖堂内に二人の織り成す音と声が響き、広がり、満たされていく。

天空から天使が舞い降りてきたような歌声に、その場にいた人々は祈りを捧げていた人もミニョの方を振り返り、美しい調べに耳を傾けていた。

ミニョは歌いながら曲の合間にテギョンを見ると、テギョンも弾きながら時々ミニョを見つめる。二人の視線が合うたびにミニョの顔には笑みが浮かび、テギョンの顔も綻ぶ。そんな二人を見ていると、心が温かくなり幸せな気持ちになると、帰り際に院長様が仰った。




「ミニョはあそこで歌うことになるのか?」


帰りの車の中で二人は今日のことを話していた。


「私があの場所で歌うことはないと思います、あそこは聖歌隊の場所ですから。私はできれば外で歌いたいです。大聖堂の中にはなかなか入り辛いという観光客の方も大勢みえます。その方達に聴いて頂くには外で歌うのが一番です。」


「ミニョは自分の歌を聴いてもらいたいのか?」


「アフリカのシスターメアリーが仰いました。韓国に帰ったら自分に出来ることをしなさいって。私に出来るのは、子供達の世話と歌うことくらいですから。」


前をじっと見つめて話すミニョにテギョンはチラッと目を遣ると、ハンドルを強く握りしめた。


「オッパ、今日は凄く素敵な日でした。バスで行かなくて良かったです。」


まさかテギョンの伴奏で聖堂で歌うことが出来るとは思っていなかったミニョは、テギョンの方を向くとペコリと頭を下げた。


「そうだろう、俺が一緒で良かったとやっと判ったようだな。」


合宿所に着き自分のシートベルトをサッと外すとミニョのシートベルトへと手を伸ばすテギョン。ベルトを外してやりながらミニョの艶やかな唇に自分の唇を重ねる。


「これはご褒美だ。」


行きと同じように一瞬の出来事に慌てて手で口を塞ぐミニョを楽しそうに見つめ、テギョンは拳を口に当てるとクックッと声を殺して笑った。



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二人が初めて人前で共演しました。

テギョンの伴奏でミニョがクラシックを歌う。

私が書きたかったシーンの一つです。

やっと書けた・・・

その割にはその部分が短いかな?

聴いていたのは僅かな人数で、しかも二人には誰かが聴いているという意識はなさそうです。

完全に二人の世界・・・

クラシックと言ってもうちのミニョはオペラではないので、これからもテギョンと共演させたい。

ずいぶん先の話になっちゃうかな?

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