You're My Only Shinin' Star (82) 懸念 1 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

国内のライブツアーを数日後に控え、その日もずっと練習室にいたA.N.JELLのメンバー。テギョンが事務所から出て車へ向かおうとすると前から歩いてきた女性が突然目の前で転びそうになった。

咄嗟にテギョンの肩につかまり、何とか転ぶのを防いだ女性。テギョンは不本意ながら抱き止めるような形で女性の腰に手を添える格好になる。


「あ、ごめんなさい。ありがとうございます。」


女性はテギョンから慌てて離れると軽く頭を下げた。


「あら、ファン・テギョンさんだったんですね。」


赤い縁の眼鏡をかけた青い瞳の女性は軽くウェーブのかかった長い金髪を揺らし、ニッコリと笑った。


「お久しぶりです、トレイシー・オールドマンです。香港では大変失礼しました。」


深々と頭を下げるトレイシー。

テギョンが誰だ?と首を傾げていると後ろから来たシヌが説明をする。


「彼女はイギリスの雑誌記者だ。前回のアジアツアーの時香港で一度取材を受けただろう、食事をしながらでいいって。テギョンのコンサートでの告白のことを聞いてきた・・・・・・エビ料理が出た時だ。」


シヌは最後の言葉だけテギョンの耳に少しだけ口を近づけ小さな声で言う。


「それで今日は何か御用ですか?」


シヌが口元に微笑みを浮かべ静かにトレイシーを見る。


「もうすぐライブツアーですよね。同行取材させて頂くことになりましたので、今日はアン社長にご挨拶に伺いました。・・・それでは失礼します。」


トレイシーは軽く会釈すると後ろにいたカメラマンの男性と共に事務所の中へ入って行った。


「凄いね、イギリスの雑誌記者が同行取材だなんて。やっぱり俺達ってヨーロッパでも人気があるのかなぁ。」


喜ぶジェルミを見てテギョンはフンと鼻を鳴らす。


「エビ女のことなどどうでもいい、帰るぞ。」


口の片端を上げ車へと乗り込んだ。




翌朝テギョンが冷蔵庫の前で青い瓶に口をつけていると、バタバタと慌ただしく階段を下りてくる足音が聞こえた。


「テギョンヒョン、これ見た?」


ジェルミはテギョンの姿を見つけると、手に持っていたパソコンを見せる。


「朝っぱらから騒々しいな・・・何だ、これは!?」


画面にはテギョンと長い髪の女性が写っている。女性の手はテギョンの肩に置かれ、テギョンの手は女性の腰にある写真。女性は後ろ姿で顔は見えないが、テギョンの顔はしっかりと判るように写されていた。


「これって、昨日のじゃない?」


テギョンの横からミナムがパソコンを覗き込む。昨日事務所の前で転びそうになったトレイシーを抱き止めたテギョン。どうやらその時写真を撮られたらしい。


「テギョンヒョンこの手の話題って久しぶりだから書き込みの数が凄いよ。」


ほとんどが後ろ姿の女性は誰?という疑問形のものだったが、中には以前にも同じ女性とテギョンが抱き合っているのを見たとか、キスしているのを見たことがあるというものまであった。


「へぇ~、あることないこと色々書いてある。」


「ミナム、あることなど一つもないぞ。」


テギョンは顔を歪ませるとグイッと水を飲んだ。


「ミニョ大丈夫かなぁ、もしミニョがこれ見たらすっごく傷つくんじゃない?」


ジェルミが心配そうにテギョンを見る。


「ミニョは・・・多分パソコンは見ていないだろう。今までそれらしいことは一度も聞いたことがないからな。」


もしパソコンを見ていたなら、ファンサイトなどテギョンのことが載っている記事について、何か少しでも手紙に書いてきた筈。それが今まで全くなかったということは、パソコンは見ていないと思っていいのではとテギョンは考えた。

携帯を置いて行ったミニョに、今回のことを説明するのは難しい。手紙を出すにしても届くまでに何日もかかる。

ライブツアーも始まる。ミニョが傷ついているのではと気にしたままでは満足のいくライブはできない。


― もしも記事を見ていたとしても、きっとミニョなら判ってくれる。あの写真は何でもないのだということを・・・


「ミニョなら判ってくれる・・・」


テギョンは自分に言いきかせるように小さな声で呟くと胸の月をギュッと握りしめた。




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