You're My Only Shinin' Star (70) 伝わりますか? | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

「テギョンさん、聴いてもらえますか?」


「その為に俺を連れて来たんだろう?」


ニッコリ笑うミニョにテギョンは口の片端を上げて答える。

練習室のドアをバタンと閉めると、テギョンをドアの付近に立たせ、ミニョは部屋の奥へと歩いていく。

一番奥まで来るとクルリと振り返りテギョンの方を見た。

テギョンは緊張した面持ちでミニョを見つめる。

ミニョは胸元の星のネックレスを服の中から取出し、暫くの間じっと見ていた。そしていつものように目を閉じギュッと握りしめる。何度か深呼吸をし、ゆっくりと瞼を開くとテギョンを見て微笑んだ。


Panis angelicus  fit panis hominum

Dat panis coelicus  figuris terminum ・・・


高く澄んだ声が震えている。ミニョの瞳にうっすらと涙が浮かぶ。

事務所の練習室で一度だけ聴いた 『天使の糧』 。あの時の声と比べると、艶も伸びも透明感も格段に素晴らしいものになっていた。だが、何かが違う。 『アヴェ・マリア』 を聴いた時の鳥肌が立つような感じがない。

その代わりに感じるのは・・・優しさ、温もり、慈悲の心、愛しさ・・・。歌を聴いていると温かな感情が湧き上がってくる。

テギョンを見つめるミニョの瞳からは涙が零れ落ちている。


― テギョンさん、伝わりますか?直接的な愛の歌ではありませんが私の想いが伝わりますか?この歌は私がアフリカで初めてテギョンさんを想いながら歌った歌です。天から与えられる恵みのように、私の心も天からあなたの許へ届けたい・・・。テギョンさんのことを愛する気持ちがいっぱい詰まった歌です。ネルソンはきっと私の歌から人を愛する想いを感じ取ってくれたんだと思います。でも、ネルソンが亡くなって私の心は悲しみで一杯になってしまいました。彼の為にと思うあまり、私の心にあるテギョンさんへの想いを忘れてしまっていたみたいです。私の身体はそれを感じ取っていたんでしょうか。ネルソンの為にと焦る心で歌っても、きっと彼の心には響かなかったでしょう。でも今の私の心はテギョンさんへの想いで一杯です。届きますか私の心が?伝わりますか私の愛が?


歌い終わったミニョの顔には笑みが浮かんでいた。

テギョンの頬には一筋の涙が伝っている。テギョンはゆっくりとミニョの方へ歩いていった。


「・・・頑張ったな・・・」


「はい・・・カトリーヌさんのおかげです。」


「カトリーヌさんの?」


「はい、カトリーヌさんに言われたんです。この歌を歌った時、私の心の中には誰がいたのかを、誰を想って歌っていたのかを思い出しなさいって。そして思い出しました。私の心の中にはテギョンさんがいます、どこにいても・・・」


「ミニョ・・・」


優しくミニョを抱きしめるテギョン。


「私、昨日カトリーヌさんに一緒にクラシックを歌わないかって誘われました。」


テギョンの身体が一瞬固くなる。


「それで・・・返事は?」


「まだしていませんが私の答えは決まっています。・・・でもその前に、テギョンさんの気持ちを教えて下さい。私はどうしたらいいですか?」


ミニョはテギョンを見上げ、じっと目を見つめる。


「彼女と一緒に歌えると言うことは凄いことだと思う。だが、そうなるときっと世界中を回ることになるだろう。俺は・・・俺の気持ちは、ミニョに傍にいて欲しい。」


ミニョの目を見つめながらテギョンはためらうことなく答えた。

ミニョはニッコリ笑うと腕をテギョンの背中にそっと回した。


「私の答えと同じです。私もテギョンさんの傍にいたいです。次にアフリカから帰ってきたら・・・私はテギョンさんの傍にいたいです。・・・でもカトリーヌさんには色々お世話になって、まだこれからアフリカへ行っても暫くは歌を教えて頂くことになるのに・・・一緒に歌えないなんて言うのは私の我儘でしょうか・・・」


「だが無理に一緒に歌っても彼女は嬉しくないと思うぞ。」


「そうですね・・・」


ミニョはテギョンから身体を離すとクスッと笑った。


「でも吃驚です。カトリーヌさんがそんな有名な人だったなんて。歌を聴かせて頂くのは今日で二度目ですが、本当に綺麗な声で・・・」


カトリーヌの歌声を思い出しているのか、うっとりとした表情で少し遠くを見ているミニョに、テギョンは少し不安になる。

今は自分の傍にいたいと言っていても将来は?もしかしたら、カトリーヌと一緒に歌いたいと言い出すかもしれない。もしそうなったら、その時自分はどうするのだろう。賛成するのか、反対するのか・・・


「彼女ならたった数ヶ月でミニョの歌があれ程までに変わったのも頷ける。一流の歌手で、一流の指導者だ。」


「はい、ずっと私に付き合って下さって・・・あれ?結婚されてるんですよね・・・。御主人はどうされているんでしょうか。」


「ほったらかしか?かわいそうにな。」


クスクスと笑うテギョン。


「御主人はきっとカトリーヌさんのことをとても信頼されてるんですね。どこにいて何をしていてもちゃんと繋がっていると・・・」


ミニョは意味ありげにテギョンを見る。テギョンはバツが悪そうに顔を背けた。




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