いつまでも玄関に立っている訳にもいかないのでとりあえずカトリーヌをリビングへ案内する。
「ミニョこれ・・・オートストローよ。暫く飲んでないでしょ。」
カトリーヌはそう言ってミニョにドライハーブの入った袋を渡す。
「わぁ、ありがとうございます。向こうではカトリーヌさんが淹れて下さいましたね。今日は私が淹れますね。」
ミニョはカトリーヌから袋を受け取るとキッチンへお茶を淹れに行った。
「ハーブティーですか?」
テギョンはカトリーヌにソファーを勧めると自分もテーブルを挟んだ向かい側に座る。
「ええ、強いストレスを抱えた人とか病気の後の体力回復に効くの。ネルソンのことがあってから私が淹れてあげてたわ。」
ニッコリと微笑むカトリーヌ。
ミニョは運んできたカップをテーブルに置くとテギョンの横に腰を下ろした。
「テギョンさんにも飲めると思うんですけど。」
香りはそれほど強くなく、テギョンにも飲めるものだった。
「ホントにこんなに短期間でここまで元気になるとは思わなかったわ。アフリカを出る時はかなりひどい状態だったのに・・・だいぶ立ち直ったようね。」
ミニョを愛おしそうに見つめるカトリーヌの目尻に微かに光るものが見える。
「はい、ご心配おかけしました。」
「ううん、気にしないで、ミニョが元気になればそれでいいから。それにしても・・・・・・ん~、予想よりかなり早くて吃驚したわ。これも全てミニョの星のおかげかしら?」
カトリーヌはチラッとテギョンを見てミニョに優しく微笑みかける。
ミニョはカトリーヌにテギョンのことを星と言われ顔を赤くし俯いているが、テギョンはカトリーヌがミニョに微笑みかける姿も、ミニョがカトリーヌと話をし、顔を赤くしている姿も気に入らない。
「ミニョは 『アヴェ・マリア』 を歌うのに、あなたの許可が必要なんですか?」
テギョンがカトリーヌを軽く睨みつけた。
カトリーヌはそんなテギョンの様子を全く気に留めることもなく、ミニョとテギョンを交互に見て軽くため息をついた。
「そう言えば手紙に書いちゃったって言ってたわね。」
「すみません・・・」
「しょうがないわ、いずれは判ることだし。」
テギョンは二人の遣り取りを口を尖らせて見ていた。自分の知らない間にミニョがカトリーヌと秘密を共有しているようで気に入らない。
「それで?あなたがここに来たということは、ミニョは歌っても構わないんですね。」
「そうね私も聴きたいわ・・・ミニョ、歌える?」
「はい、たぶん・・・」
「水分は?」
「さっき電話をした時にお水を飲みました。それと今のお茶です。」
「OK。場所は?」
「地下にバンドの練習室があります。あそこなら防音も大丈夫だと思います。」
「判ったわ。じゃあそこでやりましょう。」
「はい、こっちです。」
ミニョはソファーから立ち上がると、カトリーヌを地下の練習室へと案内する。
テギョンの目の前で交わされる二人の会話。自分はまるでその場にいないかのように、二人だけでなされる会話に疎外感を感じるテギョン。
― ミニョ、お前はアフリカで彼女と一体何をしていたんだ?
六ヶ月間離れていたミニョが帰って来てほっとしたのも束の間、まさか一人の女性の出現によってこんなにも心が乱されるとは、テギョンも思ってもみなかった。
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