「ミニョ!どうした!」
うつ伏せに倒れているミニョに駆けよるテギョン。
「・・・テギョンさん・・・」
苦しそうなミニョの声。
「・・・やっぱり、一人じゃダメみたいです。・・・ちょっと足を押さえてもらえませんか?」
ミニョを抱き起そうと伸ばしたテギョンの手が止まる。
「・・・何?」
首を傾げるテギョン。
「背筋やろうと思ったんですけど、一人じゃできなくて・・・。腹筋はできたんですけど・・・いつもはカトリーヌさんに押さえてもらってたんで・・・」
「・・・・・・」
倒れているように見えたミニョは背筋(上体反らし)をする為に、うつ伏せに寝転んでいるだけだった。
ミニョにテギョンの部屋で寝ろと言ったミナムは、結局最後はカトリックを強調し、倒れていると心配したミニョは実は背筋をしていて、いつもはカトリーヌに手伝ってもらっていると言う。
― お前たち兄妹は俺をからかってるのか?
沸々と怒りが込み上げてきたテギョン。
「おい、コ・ミニョ。そんなことしてないで、さっさと朝飯を食え。時間が無いんだ、歌の練習をするぞ!」
○ ○ ○
テギョンの作業部屋(ピアノ室)にいるテギョンとミニョ。
「歌えないのは 『天使の糧』 だけか?」
「はい、たぶん・・・」
「じゃあとりあえず・・・他の讃美歌を歌ってみろ。そうだな・・・『アヴェ・マリア』 はどうだ、手紙にも書いてあったしな。」
「テギョンさん、 『アヴェ・マリア』 は讃美歌ではありません、聖歌です。」
ミニョが真面目な顔で否定する。
「どう違うんだ?」
「讃美歌はプロテスタントです。プロテスタントにマリア信仰はありません。 『アヴェ・マリア』 はカトリックの聖歌です。」
ミニョのカトリックと言う言葉にピクンと反応するテギョン。
― おい、そんなにカトリックを強調するな・・・
「どっちでもいい、とにかく 『アヴェ・マリア』 だ。」
「・・・他の歌じゃダメですか? 『アヴェ・マリア』 はちょっと・・・。ここでは歌わないようにカトリーヌさんに言われてるんですけど・・・」
おどおどとテギョンの顔色を窺いながら言うミニョ。
「ダメだ。 『アヴェ・マリア』 だ。」
ミニョの口からカトリーヌの名前が出たことが気に食わないテギョンは、何とか歌わせようと語気を強くした。
どうしようかと戸惑っていたミニョだが、テギョンに睨まれるとちょっと待って下さいとその場を離れ、数日前に返してもらっていた携帯をポケットから取出し、電話をし始めた。
暫く話をしていたミニョがテギョンを振り返る。
「テギョンさんもう少しだけ待ってもらえませんか?今からカトリーヌさんが来て下さるそうなんで、それからならOKです。」
「何?お前は彼女の許可がないと、歌も歌えないのか?」
またカトリーヌの名前が出たことに加え、ここに来ると言われ益々不機嫌になるテギョン。
「えーっと、その・・・。あ、お水、私お水飲んできます。」
ミニョは言葉を濁しながらその場から逃げるようにキッチンへ向かった。
○ ○ ○
ミニョはキッチンの椅子に座りながら、腕組みをしてリビングのソファー座っているテギョンをチラチラ見ていた。急に不機嫌になったテギョンに声もかけられず、気まずいままその場にいるとインターホンが鳴る。
ミニョが立ち上がり玄関へ向かうと、それを追い越すようにテギョンが先に玄関のドアを開けた。
ドアの向こうから現れたカトリーヌは、ドアを開けたのがテギョンだったことに少し驚いたようだったが、すぐ後ろにいるミニョの姿を見てニッコリと微笑んだ。
「こんにちは。この間はお電話ありがとう。」
カトリーヌはテギョンに挨拶をするとテギョンの横をスッと通り抜け、ミニョを軽く抱きしめた。
「ミニョ・・・体調はどう?」
「大丈夫です。」
「そう・・・よかった・・・本当に・・・」
「はい・・・私は元気です。」
カトリーヌの腕の中でうっすらと目に涙を浮かべて微笑むミニョを見てテギョンは目を見開く。ミニョの腕を摑みカトリーヌから引き離すとミニョを自分の背中に隠すようにずいっと前へ出た。
「ミニョならしっかり食事もしてますし、夜だってちゃんと眠ってます。一緒に寝ている俺が言うんだから間違いありません。」
「テギョンさん!」
ムキになるテギョンの言葉にミニョは口元を手で押さえ顔を赤くする。
カトリーヌはテギョンの見え見えの嫉妬にクスクスと笑い出した。
「そう、それはよかったわね。それでもうミニョから連絡がきたのね。」
カトリーヌはテギョンの後ろで顔を赤くしているミニョを見て優しく微笑んだ。
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