「ミニョ・・・」
ミニョの頬に触れたテギョンの手に、微かに感じる涙の跡。ゆっくりと顔を近づけるとミニョの頬に光るものが見えた。
「・・・ん・・・ごめんね・・・歌えない・・・・・・」
昨夜と同じようにうなされているのか、眉間にしわを寄せたミニョの口から漏れる苦しそうな息遣い。
「毎晩夢の中で泣いているのか?」
急にテギョンはこの部屋に入ってからの自分の考えていたことが恥ずかしくなった。
「そうだよな、それどころじゃないよな・・・すまない、ミニョ。」
テギョンはミニョの頬の涙を指で拭い、布団を捲るとミニョの身体にピッタリと自分の身体を寄せた。
シングルベッドはかなり狭かったが片側が壁にくっつけて置かれている為ミニョが落ちる心配はない。テギョンが落ちない為には・・・
「やっぱりこうするしかないな。」
ミニョの身体を優しく包み込むように抱きしめるテギョン。
暫くすると苦しそうだったミニョの息遣いが楽になり、表情が穏やかになった。
「俺の傍が安心できるというのなら、ずっとこうしていてやるから・・・ミニョ、サランヘ・・・」
ミニョの額にそっと口づけた。
○ ○ ○
ミニョの朝は早い。ネルソンの事で寝不足と体力低下の為生活が不規則だったが体調さえ元に戻れば朝早く目が覚める。
だがこの日ミニョが目覚めたのには別の理由があった。
「うん・・・重い・・・」
胸の圧迫感による息苦しさを感じ目を開けると・・・
― て・・・手・・・テギョンさんの手が胸の上に!
ミニョの横にピッタリと寄り添いうつ伏せで眠るテギョンの右腕が・・・手の平はミニョの左肩の辺りにあるが二の腕がしっかりと胸の上に乗っていた。
― な、何でテギョンさんが一緒に寝てるの?ここってぬいぐるみ部屋よね。
視線をキョロキョロ動かし部屋の中を見る。半分ほど開いたカーテンから射し込む朝陽は部屋の中を映しだし、確かにここがぬいぐるみ部屋だということがはっきりと判る。
― 一昨日とその前はリビングのソファーに座っていて、いつの間にか眠っちゃったみたいで途中から記憶がなくて・・・それでも何でテギョンさんのベッドにいたのか判らないんだけど、昨日はちゃんと自分でベッドに入ったわ。だってここぬいぐるみ部屋だもの。・・・じゃあ何でテギョンさんがここにいるの?何で?それにこの手!
テギョンの腕がもぞもぞと動き出す。
「て・・・手・・・テギョンさん・・・手!」
「・・・ん・・・」
ミニョの声に目を覚ましたテギョンが眠そうに眼を開けると、真っ赤になったミニョの顔が目に入る。
ミニョはまだしっかりと覚醒していないテギョンの艶めかしい姿に鼓動を跳ね上げると同時に、自分の胸の上に乗っているテギョンの腕を跳ね上げた。
勢い余ってベッドから落ちるテギョン。
「うわっ痛っ!・・・何だ?」
突然の出来事に何が起こったか判らないテギョンが痛む腰をさすりながら辺りを見回し立ち上がると、ベッドで涙目になっているミニョの姿が見えた。
ミニョは着ている服が乱れていないことを確認すると胸元を手で隠し、ベッドから降りるとテギョンを部屋から追い出すようにグイグイと背中を押す。
「おいおいミニョ、何だ、どうした?」
テギョンは何が何だか判らないままミニョに背中を押され部屋から追い出された。
テギョンの後ろで大きな音を立て閉まるドア。
「おい、ミニョどうしたんだ、何があったんだ?」
「何があったじゃありません!何でテギョンさんがここに・・・・・・。開けないで下さいね、私は今から着替えをしてジョギングに行くんですから!」
部屋の中から聞こえるミニョの少し怒ったような声に、テギョンはドアの外で首を傾げ立ちつくした。
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