最初に戻って来たのは、ミナムだった。
リビングに入ると、ソファーに並んで座っているテギョンとミニョを見て驚いた。
頭を寄せ、幸せそうな顔をして眠っている。しかも手を繫いだまま。
暫くの間、その場に固まって動けなかったが、段々と笑いがこみ上げてくる。
肩を震わせ、声を殺して笑っているところに、三人が戻って来た。
「ミナム、早かったな。」
先頭で入って来たシヌがミナムに声をかけると。
しぃ~っ。
人差し指をそっと口にあて、ジェスチャーで『静かに』と合図を送ってきた。
「シヌヒョン、どうしたの?そんなとこに突っ立って・・・あ~っ」
シヌの後ろから入って来たジェルミが、リビングのソファーに座る二人を見ると、大声を上げそうになり、シヌがあわてて手で口を塞いだ。
「あら、リーダー、可愛いわね。」
最後に入って来たミジャの言葉に、堪えきれなくなったミナムが声を出して笑い出した。
○ ○ ○
さすがに屋上では寒いので、パーティーは音楽鑑賞室で行われた。
テギョンとミニョがソファーで眠っている間に、他の皆で準備が進められた。
起こされたミニョは、手を繫いで眠っているのを見られたのが恥ずかしかったのか、隣に座るテギョンの方をまともに見られないまま、なかなか食事にも手を付けられない。
「ミニョ~、今日はミニョのお別れ・・・じゃない、いってらっしゃいパーティーなんだから、たくさん食べて飲まなきゃ。」
「ほら、ミニョも飲んで。」
ミナムがミニョにシャンパンを勧める。
「こいつはやめておけ。」
パッと明るくなったミニョの顔が、一瞬にして曇る。
「え~、何で?」
テギョンはミナム(実際にはミニョだったが)の歓迎パーティーが行われたクラブの屋上での出来事を思い出し、ブルッと身震いをした。
「ミニョはアルコール弱いからな。」
シヌがミニョの頭にポンと手を置くと、テギョンが軽く睨んで口を尖らせる。
「え、そうなの?」
「あれ、ミナム知らないの?」
「だって俺、高校卒業してからミニョとは会ってなかったから。・・・でも、ちょっとくらいならいいだろ。」
シヌとジェルミがテギョンの顔を窺うように見た。
「何?テギョンヒョンの許可がいるわけ?」
「いや・・・ちょっと・・・・・・」
二人はあの屋上でのことを思い出し、言葉を濁す。
「テギョンさん、ちょっとだけいいですか?」
ミニョがクリッとした丸い目をパチパチと瞬かせて、お願いの表情を作る。
そんな顔をされてはテギョンが勝てる筈がない。
「う・・・グラスに一杯、いや半分なら許可しよう。」
やったーと喜んでグラスに注いでもらうと、嬉しそうにゆっくりと飲み始めた。
今夜は修道院に泊まるというミニョの為に、少し早めに始めたパーティーだったが、外はもう真っ暗だ。
いつの間にかミニョは、テーブルに顔をくっつけて寝てしまっている。
「あれ~、ミニョ寝ちゃったよ。」
「ホントにアルコール弱いんだ。」
暫く席を外していたミナムがニヤニヤしながら戻って来た。
「時間になったら起こして、俺が送って行く。」
そう言ってテギョンは、ミニョの身体を大事そうに横抱きに抱き上げると、部屋から出て行った。
その様子をビールを飲みながらじっと見ているミナム。
「兄としては気になるか?」
シヌに声をかけられた。
いつも穏やかに微笑んでいるように見えるが、時々じぃっと観察するかのように向けられている視線が、ミナムは苦手だった。
― あの微笑みの下で一体何を考えているやら。
何故、皇帝ファン・テギョンが?という疑問はあったが、自分の妹がファン・テギョンに好かれているという事実は、悪くはなかった。願わくは、二人の仲が少しでも長く続いて欲しい。できれば妹の悲しむ姿は・・・あまり見たくない。
「別に・・・・・・」
ミナムは数日前、テギョンが自分の部屋に来た時のことを思い出していた。
* * * * * * *
― 次回予告 ― (次のお話のどこかで出てきます)
「だからもう気にしないで下さい。それにミニョのことは二人の問題でしょ。俺には関係ない。」
そう言うと、部屋から出そうとテギョンの背中を押す。
「テギョンさんが気にしたままだと、俺もA.N.JELLでやりづらいから、この話はこれで終わりにして下さい。じゃないと・・・
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