コンサートの翌日、事務所の電話は鳴りっぱなし、建物の前は記者とファンで一杯だった。
「あれは、あくまでコンサートの演出です。」
というのがA.N.JELLと事務所の返事だった。
『演出にしては、マイクもないし、離れた所にいた人は、何が起こっているか全く判らないと思うんですが。』
「だからいいんですよ。いかにも本当っぽいでしょ。実はミナムに仕掛けたドッキリなんです。ファンの子達にも協力してもらいました。じゃなきゃ、テギョンヒョンがステージから下りて客席を歩くときに、あんなに都合よく皆が道を開けてくれると思います?」
ジェルミがおどけて言う。
「ミナムは初コンサートでかなり緊張してたから、それをほぐそうと。いきなりテギョンヒョンがあんなことしたら、驚いて緊張なんてどっかいっちゃうでしょ。」
「それで俺だけ知らなかったのか」
ミナムがわざとらしく言う。
「そ、俺が考えて、テギョンヒョンに頼んだんだ~。」
「あの後のコンサートは最高の出来だったな。」
シヌが微笑みながらミナムを見る。
へへっと照れたように頭を掻くミナム。
「PV試写会の時は俺のせいで迷惑をかけてしまったので、今回はテギョンに協力してもらいました。」
『シヌさん、あの時の女性との間に何か進展はありますか?』
「ご想像におまかせします。」
ニッコリといつものキラースマイルを顔に浮かべる。
『コ・ミナムさんへのドッキリということですが、相手の女性は同じ事務所の方ですか?』
ミナムがぷっと吹き出した。
「あ、スミマセン・・・くくっ・・・あれ、俺の妹なんです。ジェルミ~、俺本気で焦っちゃったよ~。まさかミニョがテギョンヒョンと・・・って。」
『ミニョさんとおっしゃるんですか?』
「はい、コ・ミニョです。」
「ミナムが朝から凄く緊張して顔色悪かったから、急遽俺が頼んだんですけど、ミナムの為だって言ったら快く引き受けてくれました。」
『今回の告白は、本物なのではないかと噂されていますが。』
「いや~、それはないですね。妹はこれからボランティアで外国へ行くんです。天下の皇帝ファン・テギョンに告白されて、すぐボランティアで外国に行く女性がいると思います?ね、テギョンヒョン。」
テギョンは何も答えず、フンッと横を向いている。
『ボランティアというのはフェイクで、身を隠す為に外国へ行くのでは?』
「あ~、もう疑い深いな~。そんなに信じられないなら、妹のボランティア一緒に行って手伝って下さい。人手不足だって聞いてますから。どうぞアフリカまでついて行って下さい。あ、でも妹は一般人なので取材ではなく、ボランティアとして行って下さいね。」
アフリカと聞いて一瞬言葉に詰まる司会者。そこへ畳みかけるようにシヌが続ける。
「新メンバーコ・ミナムの為にしたドッキリで、皆さんをお騒がせしてしまい、申し訳ありませんでした。コ・ミナムの妹は一般人です。我々の一方的な依頼を快く引き受けてくれた彼女に、迷惑がかかってしまうのではないかと、心苦しく思っています。」
「コ・ミナムは、ああ言っていましたが、彼女の人生に係わることです。どうかアフリカまで付けまわすようなことはしないで下さい。よろしくお願いします。」
最後にテギョンが締めくくるように言うと、メンバー一同頭を下げた。
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