アフガニスタンのタリバン政権は悪魔か? | 明日への飛翔

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2021年8月にアフガニスタンから米軍が撤退しタリバン政権になりました。テレビ・新聞ではタリバンの人権無視や女性の学問禁止など悪魔扱いしていますが、タリバンは本当に悪人なのでしょうか?
はじめにアフガニスタンの近代史を簡単に要約します。

◎ソ連・アフガン戦争 1979~1989年
ソ連が軍事介入しアフガニスタン政府軍と共同でムジャーヒディン(ゲリラ)と戦う。
アメリカ・イギリスなどはムジャーヒディンに武器・断薬・資金を援助しソ連と代理戦争となる。
1989年ソ連は敗退し撤退する。

◎アフガニスタン紛争 1989~1996年
アフガニスタン政府軍とムジャーヒディンの争い
1989~1996年の7年間アフガン全土で麻薬のケシの花を栽培しアヘン・ヘロインの世界最大の産地となる。
 世界で一番大きく動くお金
①    石油
②    武器
③    麻薬(世界の75%がアフガニスタンの麻薬だった)
ムジャーヒディンは麻薬を売ったお金でアメリカから武器を購入
アメリカは武器販売とヘロインで大きな利益を確保する。

◎アフガニスタン紛争 タリバン政権 1996~2001年
タリバン(神学生・求道者)政権誕生
1996年アフガニスタン・イスラム首長国を建国
タリバンは麻薬栽培を禁止
1996~2001年の5年間は麻薬の栽培が無い⇒小麦栽培にチェンジ
タリバンは純粋なイスラム教を信奉し麻薬は人間を堕落させると禁止した。
アメリカは武器販売とヘロインで大きな利益を失った。1998年、このことを背景にアメリカとタリバンは対立を深め西側諸国から孤立する。
2001年3月にバーミヤン大仏を破壊したが、宗教上の理由の棄損や破壊は世界各国で行われてきた。日本では明治3年に出された詔書(大教宣布)で廃仏毀釈が行われ、多くの仏教寺院・仏像・経巻を壊し破棄した。

◎911同時多発テロ 2001年9月11日
ニューヨークの世界貿易センタービルに2機の旅客機が突入し約3000人の犠牲者がでた。
アメリカはアルカイダの犯行と発表している。
これを理由に2001年10月からアフガン爆撃が行われた。

◎アメリカ・アフガン戦争 2001~2021年8月 アメリカ史上最長
アメリカの戦争は公共事業という側面がある。
多国籍軍(アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアなど)とアフガニスタン治安部隊・民間請負業者などの戦死者合計は約7万人。
タリバン側の戦死者は約7万2千人。

◎カルザイ傀儡政権の誕生 2004~2014年アフガニスタン・イスラム共和国
ハーミド・カイザルがアフガニスタン大統領となった。
フランスのリール大学留学

◎アシュラフ・ガニ傀儡政権 2014~2021年8月15日
アメリカの後押しでアフガニスタン大統領になった。
カブール大学⇒コロンビア大学留学⇒カルフォルニア大学バークレー校留学
2021年政権崩壊時、車4台分の多額の現金を持ち出し国外へ逃亡した。
金で雇われた政権は金をもって裏切る。
ただ功績といわれるのは、タリバンに対し政府軍の徹底抗戦を避け無益な殺戮を回避したことと言える。

◎西側の発表・報道は正しいか?
◍2004年4月 米議会で以下の発言
 「ヘロインがタリバンの資金源になっている。」
 (米国務次官補)
 「テロ撲滅にはタリバン撲滅が必須!」
◍事実は(2001年10月の国連総会報告)
 世界の麻薬が2000年~2001年で94%減じた。
  3300ton ⇒185ton
  (国連麻薬犯罪事務所)



 

◎2021年8月~タリバンのムジャヒド報道官
アフガニスタンはいかなる種類の麻薬も作らない。これからは誰も麻薬の密輸に手を出せなくなるだろう。今後、アフガニスタンは麻薬の無い国になるだろう。(アルジャジーラTV)

◎現在のタリバン外交
ロシア プーチン大統領訪問
中国  習近平国家主席訪問

◎中国・ロシアがタリバンに出した条件
①中央アジアにテロリスト(ジハードの戦士)を入れない
②麻薬はNG

中国にとっては一帯一路(シルクロード経済ベルト)構想が有るので、アフガニスタンが安定し安心のタリバン政権でなくては困る。
地政学的にアフガニスタンは大事で、これからはチャイナマネーが入りデジタル化が進む。

◎アメリカ軍アフガン撤退の裏側
米軍には正規軍と民間契約者がいて、今回撤退したのは正規軍だけです。
アフガン国内には民間契約社員の軍人が1万6千人残っています。
アフガンの周辺国の基地に、アメリカ空軍が待機しており必要とあらば出撃できる態勢。イラク戦争の経過と同じパターンです。

◎アフガニスタン国民・市民の反応
タリバン政権になって一番嬉しいことは、アメリカ軍の空爆が無くなったことです。空に攻撃機やヘリコプター・無人攻撃機などがなく、安心して暮らすことができます。今まで誤爆と称して、家族や親せき・友人など女・子供・老人が沢山殺されました。女性の顔を隠すベールをさせたとの理由や女性を仕事に参加させないとの理由で、私たちに爆弾を落とさないでほしい。



9.11以降の20年間にアメリカの一連の対テロ戦争の費用が8兆ドル(880兆円)にのぼり、これらの戦争で亡くなった人は90万人と米ブラウン大が発表しました。

このうちアフガニスタンやパキスタンでの戦費が2.3兆ドル(250兆円)
と、多国籍軍(主にアメリカ軍)が20年間で残したものは破壊と殺戮だけでした。
 この戦費の1割(25兆円)でもアフガニスタンのインフラ・教育・医療・社会保障などに使われていたら、アフガニスタンは豊かな国に生まれ変わっていたでしょう。
ちなみに灌漑や用水路を作り、農地で作物ができ65万人が飢餓から救われたペシャワール会・中村哲先生が事業に使ったお金はおよそ30億円です。


◎経済封鎖の実情
2021年8月から米国にあるアフガニスタン中央銀行資産90億ドルが凍結され、世界銀行のアフガニスタン復興基金やIMF(国際通貨基金)のアフガニスタン供与金も凍結されています。
日本からの送金やアフガニスタンにある銀行からの預金引き出しも非常に困難になっています。2021年9月20日を過ぎても、企業やNGOなどは9月に2万5千ドルまで1回きりで、それも現地通貨のアフガニでしか引き出せません。
自分の預金が銀行から引き出せないのです。
物価は高騰し食料は足らず医薬品も欠乏しており、国連もこの事態を憂慮し、干ばつで200万人の飢餓が迫っていると、人道支援を呼びかけています。
経済封鎖を厳しくしておいて、片方では人道支援を呼びかける。なんという矛盾でしょうか。爆弾で殺されたあとは封鎖で殺されます。



◎ペシャワール会・中村哲先生の2002年7月の会報から抜粋
 政治的には、旧タリバン(イスラム神学生)政権が国土統一を進め、全土の9割を掌握、北部の戦闘地区を除けば、大干ばつにもかかわらず、過去最も治安が安定していた時期であった。
北部の軍閥(マスード、ドスタムら)は、かろうじて外国の武器援助で命脈を保っていたのである。もともとタリバン勢力は東部・南部のパシュトー部族と親和性が強く、それもアフガン農村社会を基盤とするものであったから、西欧化した都市中産階級には受けが悪かった。
だが、アフガニスタンの9割が農民か遊牧民であることを考えると、農民や都市貧困層の間では、さして嫌われていたわけではない。それどころか、タリバン政権の基盤は、各地域の伝統的自治組織ジルガ(長老会)による支持だったのである。
かくて、報道と情報の偏りが「極悪非道の狂信的集団・タリバン」という虚像を作り上げ、「人権」活動家の格好の標的となった。

◎最近のテレビ報道をみて
亡くなった中村哲先生の生前の言葉が沢山残されていますが、ほとんどは報道されませんでした。アフガニスタンの実情やタリバンの実情が歪曲化され、悪意に満ちた表現になっていたと思います。大国の利益に踊らされていたのです。
その国にはその国の国民が暮らし、食べて寝て作業をする暮らしの現実があります。わたしたちは、テレビや新聞の報道を丸のまま鵜呑みにせず、角度をかえて注視する必要があると思います。