【論点】予告を経ない争議行為
この点,団交は既に行われているため,使用者は争議行為を予測できるといえる。
よって,原則として,予告を経ない争議行為に正当性は認められると考える。
しかし,著しく不公正な場合は信義則上,正当性は否定されると考える。
その判断は
①使用者の事業運営に与えた影響
②主観的意図の有無
等を個別具体的に考慮して行うべきである。
態様について
【論点】平和義務違反の効果 争議行為 肯定説 『弘南バス事件』(最判昭43.12.24) (え本32)
(肯定説)
平和義務違反の争議行為は「正当性」が認められるか。
この点,相対的平和義務は労使関係の安定,正常化という労働協約の機能を担保するという重大な意義を有するものであるから,正当性に影
響を与えると考える。
ただし,その正当性の評価は個別具体的な問題であるから
①当該労働協約の形態
②平和義務の内容
③争議行為の形態
④責任の種類
等を総合考慮して個別的に判断すべきである。
【論点】怠業
1 怠業は,正当な争議行為として法的保護(1条2項・7条1号・8条)を受けるか。
2 争議権保障の目的は,団体交渉行き詰まりの打開策としての圧力行動を保障することにあり,その基本的手段は労働力の集団的不提供である。
そこで,争議行為とは,ストライキおよびこれを維持強化するためになされる行為をいい,正当性が認められるためには,その態様が労務の
完全または一部の不提供という消極的態様にとどまらなければならない。
3 よって,スローダウンは労務の完全または一部の不提供という消極的態様にとどまるから,正当性が認められる。
また,一部不履行は,全体の作業能率を低下させるというスローダウンと同様の形態でなされているから,不作為にとどまる限り正当性が認
められると考える。
【論点】順法闘争
1 順法闘争とは,法を形式どおり遵守することによって作業能率を低下させる行為をいい,安全衛生闘争・定時出退勤闘争・残業拒否闘争・一
斉休暇闘争等も広義の順法闘争に含まれる。
順法闘争は正当な争議行為として法的保護(1条2項・7条1号・8条)を受けるか。
2 争議権保障の目的は,団体交渉行き詰まりの打開策としての圧力行動を保障することにあり,その基本的手段は労働力の集団的不提供である。
そこで,争議行為とは,ストライキおよびこれを維持強化するためになされる行為をいい,正当性が認められるためには,その態様が労務の
完全または一部の不提供という消極的態様にとどまらなければならない。
3 安全衛生闘争
まず,安全衛生に関する諸法規を当該法規が客観的に要求する程度に遵守する場合は,争議行為にあたらない。
これに対して,安全衛生法規を当該法規が客観的に要求する程度や内容以外の方法で遵守し,事業の能率を低下させるものである場合は,争議行為にあたると考える。
しかし,労務の完全または一部の停止という消極的態様に止まる場合には,争議行為として正当性が認められると考える。
4 定時出退勤闘争
定時出退勤は労務の一部または完全な不提供ではなく争議行為にあたらないと考える。
5 残業拒否闘争
まず,時間外労働義務が発生していない場合には,労務の一部または完全な不提供ではなく争議行為にあたらない。
これに対して,時間外労働義務が発生している場合には,争議行為にあたる。
しかし,労務の一部または完全な不提供という消極的態様にとどまっているから,争議行為として正当性が認められる。
6 一斉休暇闘争『国労郡山工場事件』(最判昭48.3.2)
労働者がその所属の事業場において,その業務の正常な運営の阻害を目的として全員一斉に休暇届を出して職場を放棄・離脱する一斉休暇闘
争については,その実質が年休に名を借りた同盟罷業であるから争議行為にあたる。
【論点】ピケッティング『御国ハイヤータクシー事件』(最判平4・10・2)
(平和的説得論)
1 ピケッティングとは,ストライキを行っている労働者達がそのストを維持しまたは強化するために,労務を提供しようとしている労働者及び
使用者側の者に対して,見張り,呼びかけ,説得等の働きかけをするものをいう。
このピケッティングは正当な争議行為として法的保護(1条2項・7条1号・8条)を受けるか。
2 争議権保障の目的は,団体交渉行き詰まりの打開策としての圧力行動を保障することにあり,その基本的手段は労働力の集団的不提供である。
そこで,争議行為とは,ストライキおよびこれを維持強化するためになされる行為をいい,正当性が認められるためには,その態様が労務の
完全または不完全な停止という消極的態様に止まらなければならず,他人の業務を阻害するものであってはならない。
3 よって,ピケッティングは平和的説得の限度にとどまるかぎり,争議行為として正当性が認められると考える。
【短文】
ピケが「正当」といえるためには,使用者の利益との調整の観点から,平和的説得の範囲内にとどまるものでなければならない。
※争議行為にあたることを認定するのを忘れずに!
【論点】職場占拠
1 職場占拠とは,スト労働者が団結を維持し,または,スト中の操業を妨害するために職場を占拠する行為をいう。
職場占拠は,正当な争議行為として法的保護(1条2項・7条1号・8条)を受けるか。
2 争議権保障の目的は,団体交渉行き詰まりの打開策としての圧力行動を保障することにあり,その基本的手段は労働力の集団的不提供である。
そこで,争議行為とは,ストライキおよびこれを維持強化するためになされる行為をいい,正当性が認められるためには,その態様が労務の
完全または不完全な停止という消極的態様にとどまらなければならず,使用者の施設管理権を侵害するものであってはならない。
3 よって,職場占拠のうち,使用者の占有を排除せず,その操業も妨害しない態様(滞留)についてのみ正当性が認められると考える。
4 組合活動
【論点】組合活動の正当性一般
争議行為・団交以外の団体行動は,「組合活動」と呼ばれ,争議行為とは異なる基準で正当性が判断される。
その特徴は,「団交のための圧力行為」として保障されたものではないため,主体や目的の点ではより広く解釈されているが,態様の点ではより厳しい限定が加えられているところにある。
1 主体
未組織労働者の活動についても,労働条件の維持改善のための団結行動である限り,憲法28条の団体行動権の保護を受ける。
2 目的
義務的団交事項に限定されず,労働者の地位の向上のために行う組合活動であれば,広く正当性が認められる。
政治的活動についても,労働者の権利利益に直接関係する立法・行政措置のための活動にあたる場合には,組合活動として保護の対象となる。
3 態様
組合活動の態様については,2つの限定が加えられている。
労働契約上の職務専念義務
例 勤務時間中の組合活動,リボン闘争
ただし,就業規則等に許容規定ある場合,慣行,許諾ある場合,職務専念義務と矛盾なく両立する場合には正当性が認められる
使用者の施設管理権
例 ビラ貼り
【論点】組合活動にも民事免責が認められるか
1 組合活動にも民事免責が認められるか。労組法8条には文言上組合活動が含まれていないことから問題となる。
2 この点,労組法8条は,憲法28条が団体行動権を保障していることに基づき民事免責を確認的に規定したものである。
3 よって,8条の規定にかかわらず,民事免責は認められるのであるから,組合活動にも民事免責が認められると考える。
主体
【論点】組合内少数派の執行部批判が統制処分の対象となるか 『北辰電機製作所事件』
この点,執行部批判については,組合民主主義に資する限りで組合活動としての保護を受けると考える。
よって,批判活動が
①虚偽の事実や歪曲された事実に基づく場合
②組合役員の名誉を侵害するような内容である場合
を除き,統制処分の対象とはならないと考える。
【論点】組合決議に反する一部組合員の活動が統制処分の対象となるか 平成20年 新司法試験第2問
この点,組合には団体の方針を統一して団結権を強化する必要がある。
一方で,個々の組合員にも行動の自由が認められる。
よって,両者の調和の観点から,一部の組合員の独自活動については,処分を正当化できる程度に,その目的や活動方法が組合の団結を乱す場合に限り,統制処分の対象となると考える。
態様
【論点】就業時間中の組合活動 『電電公社目黒電話局事件』(最判昭52・12・13)
『大成観光事件』(最判昭57.4.13)(80 9-6)
以下のリボン闘争の論証で対応
【論点】リボン闘争『大成観光事件』(最判昭57.4.13)(え本34)
(伊藤裁判官補足意見ベース)
1 リボン闘争とは,組合が要求・主張等を書いたリボン等を就業時間中に組合員に一斉に着用させることをいう。
2 リボン闘争が職務専念義務に反しないか。職務専念義務の内容が問題となる。
この点,職務専念義務は労働契約上要請される労働を誠実に履行する義務を意味するにすぎない。
そうすると,業務を具体的に阻害することのない行動は必ずしもこの義務に違反するものではないと考える。
3 よって,リボン闘争について
①使用者の業種
②労働者の職務内容・性質
③リボン等の着用の態様
を考慮して,労務の遂行に支障がない場合には,正当性が認められると考える。
【論点】ビラ貼り (許諾説) 『国鉄札幌運転区事件』(最判昭54.10.30)(80 9-6)
平成20年 新司法試験第2問
1 ビラ貼りは組合活動として正当性が認められるか。会社の施設管理権と組合活動の関係が問題となる。
2 この点,労働組合は当然に企業施設を利用する権利を保障されていないから,使用者は企業施設の利用を受忍する義務を負わないと考えるべ
きである。
よって,労働組合が使用者の許諾を得ることなく企業施設を利用して組合活動を行うことは,利用を許さないことが使用者の施設管理権の濫
用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては,正当性が認められないと考える。
3 そして,特段の事情の有無は
①貼付された施設の性質
②貼付の範囲
③ビラの枚数・形状・内容・貼り方
等を総合的に判断して決すべきと考える。
5 正当性のない争議行為と責任
【論点】使用者による正当性のない争議行為についての責任追及 (80 11-3)
1 使用者→組合員
違法争議行為に参加した労働者の個人責任を追及することができるか。
この点,争議行為においては,個々人の行為は多数決原理によって形成された団体の意思に完全に拘束されるとして,個人責任を否定する見
解もある。
しかし,個々の組合員の行為が存在する点を軽視しており,妥当でない。
ここで,違法な争議行為は,正当性が認められない以上,もはや団体的行為として評価できず,個別的行為に還元されることから,労働者の
個人責任を肯定すべきであると考える。
2 使用者→組合
労働組合は,正当性のない争議行為による不法行為責任を負うと考える。
なぜなら,憲法28条は正当性が認められることを条件として免責したにすぎないからである。
違法行為を企画・指導した組合役員が他人に加えた損害については,一般法人法78条により,役員以外の組合員が指令に基づく争議行為に
よって他人に加えた損害については,民法715条1項によって,不法行為責任を負うと考える。
3 組合員責任と組合責任の関係 不真正連帯責任説 『書泉事件』(東京地判平4・5・6)
個人責任と組合責任の関係が問題となる。
労働組合は,一般法人法78条ないし民法715条1項によって不法行為責任を負うのであるから,労働者個人の責任と組合の責任の関係は
不真正連帯責任の関係であると考える。
ただし,労働組合による違法争議行為の実施過程の実態,損害負担上の平等に鑑み,個人責任は,団体責任に対し,補充的に追求されるべき
であると考える。
【論点】第三者による正当性のない争議行為についての責任追及 (80 11-3)
1 第三者→使用者
第三者は,争議行為による損害につき,誰に対して損害賠償を請求できるか。
まず,第三者と使用者が契約関係にある場合は,第三者は債務不履行責任(民法415条)を追及することになる。
もっとも,使用者に帰責事由が認められるか。
争議中の労働者が履行補助者といえるかが問題となる。
この点,ストライキのような業務離脱型の争議行為については,労働者は実質的に使用者からの指揮命令から離脱しているため,信義則上,
使用者の故意または過失と同視できる履行補助者といえない。
また,労働組合には,憲法28条によって争議権が保障されている反面,使用者には団体交渉上の自由権が与えられている。
よって,主張を拒否することも使用者の自由であり,そのために法的責任を問うべきではない。
2 第三者→労働組合
第三者は,労働者に対する不法行為責任に基づく損害賠償を請求できるか。
この点,争議行為は企業内部の現象であり,経営活動の主体は使用者のみであるから,使用者のみが対外的責任を負うと考える。
よって,争議行為が正当か否かにかかわらず,労働者は原則として第三者に対して不法行為責任を負わないと考える。
ただし,組合側に,積極的な害意等の主観的要件が認められる場合には,例外的に債権侵害に基づく不法行為責任を負うと考える。
【論点】懲戒処分の可否 平成21年 新司法試験第2問
この点,争議中であっても労働関係が存続している以上,一定の企業秩序は存在しているといえる。
よって,正当性を有しない争議行為が懲戒事由に該当するとすれば,懲戒処分を課されることになると考える。
【論点】事実的幹部責任(80 11-2)
争議行為に加担した組合員に懲戒処分をなしうるとした場合,組合幹部に対して損害賠償請求できるかが問題となる。
この点,組合幹部の地位に基づいて責任を認めることはできないが,積極的に違法な争議行為を遂行・指導した場合には,幹部の行為責任が認められると考える。
なぜなら,違法争議行為を現実に企画・指導し,企業秩序侵犯について,実質的に重要な役割を果たしているからである。
6 争議行為と賃金
【論点】ノーワーク・ノーペイの原則の根拠 契約説『三菱重工造船所事件』(最判昭56.9.18)(え本38)(80 11-4)
平成21年 新司法試験第2問
争議行為参加者が,賃金請求権を喪失する根拠が問題となる。
賃金請求権は労務の給付がなされて初めて発生するものであるから(民法624条1項),労務の不給付が労働者の意思によってなされた場合,反対給付である賃金請求権も発生しないと考える(ノーワーク・ノーペイの原則)。
【論点】賃金カットの範囲 『三菱重工造船所事件』(最判昭56.9.18)(え本38)(80 11-4)
争議行為に参加した者の賃金から生活補助的性格を有する家族手当を控除できるか。賃金カットの範囲が問題となる。
この点,賃金カットの問題は,労働契約の内容としてストライキにより欠勤しても差し引かない賃金部分が設けられているかという契約解釈の問題である。
そこで,賃金カットの範囲は,労働協約,就業規則,労働契約又は労使慣行の趣旨に照らし個別的に判断すべきであると考える。
【論点】家族手当のカット(80 11-4)
家族手当をカットすることは許されるか。労基法37条4項は家族手当を時間外・休日労働の割増賃金算定の基礎から除外しているため問題となる。
この点,労基法37条5項の趣旨は,家族手当が労働者の個人的事情に基づいて支給される賃金であって,割増賃金として参入することは適切でないことにあり,家族手当のカットを違法とする趣旨までを含むものではない。
よって,家族手当をカットできると考える。
【論点】怠業における賃金カット
怠業や労務の一部不提供の場合に労働者は賃金請求権を取得するか。
(ノーワーク・ノーペイの原則)
ただし,怠業の場合,不完全ながら組合員は労務を給付している。
よって,組合員は労務給付に応じた賃金請求権を有すると考える。
【論点】使用者の指示に反して就労した場合(出張拒否闘争)の賃金カット 『水道機工事事件』(最判昭60.3.7)
使用者が命じる種類の労務を拒否し,使用者が是認しない種類の業務に従事する争議行為が行われた場合に賃金をカットすることができるか。
この点,このような労務提供は,債務の本旨に従った履行(民法493条)とはいえない。
よって,使用者が労務提供を受領したと認められない限り,賃金をカットできると考える。
【論点】一時金・賞与産出の基礎としてストライキ参加日数を欠勤扱いすることは私法上許されるか
1 一時金・賞与算出の基礎としてストライキ参加日数を欠勤扱いすることは公序に反しないか。
この点,賃金カットの問題は,労働契約の内容としてストライキにより欠勤しても差し引かない賃金部分が設けられているかという契約解釈
の問題である。
そこで,賃金カットの範囲は,労働協約,就業規則,労働契約の定め又は労働慣行の趣旨に照らし個別的に判断すべきであると考える。
2 では,労働契約の解釈によれば,一時金・賞与算定の基礎として,対象期間の出勤率が用いられる場合,ストライキ参加日数を欠勤扱いする
ことは適法か。
出勤率が支給対象期間中の労働の量に応じて機械的に定められている場合,ストによる労務不提供を欠勤と同一扱いすることは,公序に反しないと考える。
ただし,争議行為を理由に勤務成績等でマイナス評価をすることは公序違反となると考える。
【定義】部分スト
労働組合が一部の組合員にだけ行わせるストライキ
【定義】一部スト
従業員の一部のみを組織する組合が行うストライキ
【論点】労務受領拒否 スト不参加者の就労が客観的に可能であった場合
就労が客観的に可能であった場合,スト不参加組合員はスト期間中の賃金請求権を有するか。
この場合,危険負担の問題として考えるべきであり,債権者たる使用者に「責めに帰すべき事由」があるかが問題となる(民法536条2項
前段)。
使用者が労務の受領を拒否した場合は,「債権者の責めに帰すべき事由」が認められ,スト不参加者は賃金請求権を失わないと考える。
【論点】労務受領拒否 スト不参加者の就労債務が客観的に存在しなくなった場合 民法536条2項
『ノース・ウエスト航空事件』(最判昭62.7.17)(え本38)
平成21年 新司法試験第2問
1 部分スト・一部ストの結果,スト不参加組合員の業務が客観的に存在しなくなった場合,スト不参加組合員はスト期間中の賃金請求権を有す
るか。
2 この場合,危険負担の問題として考えるべきであり,債権者たる使用者に「責めに帰すべき事由」があるかが問題となる(民法536条2項
前段)。
この点,ストライキは労働者に保障された争議権の行使であって,使用者はこれに介入できない。
また,団体交渉においてどの程度譲歩するかは使用者の自由である。
3 よって,使用者が不当な目的をもって殊更ストライキを行わせた場合等の特段の事情がない限り,当該ストライキは「債権者の責めに帰す
べき事由」(民法536条2項)にはあたらず,スト不参加組合員は賃金請求権を有しないと考える。
※使用者が就労を受領する意思があるにもかかわらず,ピケ行為によって受領できないとき
→ 帰責事由なし