主観的な出来は、何とか守れていればいいなという感じ。
分量は、8ページいっぱい。
設問1については、書くべき法律論がいまいちわからなかった。
他の受験生が書きそうなことを拾うという意識で、素直に書いた。
設問2は、旧試験の問題演習が非常に役に立った。(ほぼそのままの出題)
工藤ゼミでの経験を活かせた部分のひとつ。
設問3では、意見陳述権の条文が見つけられなかった。非常に悔しい。普段からもっと条文を丁寧に引いておくべきであった。
全体的には、論点が多く、難しかったと思うが、基本事項はしっかり書けたので相対的には大何とかなるかと。
商法
第1 設問1
1 本件では、A、B、C、D、P、Q、Rの7名が取締役の候補として挙げられている。
しかし、代表取締役兼議長であるHは、候補者毎に投票する方式を採用し、Aから順に裁決を採っている。その結果、本来であれば選任されるはずであったQ(得票数41万個)、R(40万個)が選任されずに決議がなされている。
このような採決方法は、議長の議事運営の方法(会社法(以下、略)315条)として裁量の範囲を超え、「決議方法・・・が著しく不当」(831条1項1号)として、取消事由を構成しないか。
2 この点、議長の裁量権の行使に合理的な理由が認められない場合には、「決議方法・・・が著しく不当」な決議にあたると考える。
3(1)本件では、会社提案として、A,B,C,Dの4名を候補とする内容の議案が提出されている。
一方で、株主である乙社から、P、Q、Rの3名を候補とする内容の議案が提出されている。
そして、甲社の定款によれば、出席株主の過半数の投票があれば、選任要件を満たすとされている。
そうすると、77万個の出席株主の議決権の過半数である38、5万株を取得しているQ,Rは本来であれば選任要件を満たし、選任されるはずであったといえる。
(2)ここで、候補者毎に投票をする方法を採ったことで、Q,Rは選任されず(特にQ)、得票数がQより少なく、選任されるはずではなかったBが選任されるに至っている。
候補者毎の投票は、先に投票される者には選任の機会が十分に与えられるのに対し、後順位の者には十分に選任の機会が与えられないものである。
そして、候補者毎に投票をして、選任を決定することに特別の必要性も認めらないことから、合理的な理由は存しないといえる。
4 よって、本件決議方法は、議長の裁量権の逸脱が認められ、「決議方法・・・が著しく不公正」であり、取消原因を構成する。
第2 設問2
1 (1)について
(1)Aの権限
ア まず、Aは、違法行為差止請求(360条3項、1項)をすることが考えられる。そして、これを本案として仮処分をかけることになる(民事執行法23条2項)。
イ 最初に、Aは「6カ月前から引き続き株式を有する」(360条1項)。
そして、本件貸付は、15億円もの多額の資金を貸し付けるもので、甲社の資本金が30億円であり、その半分に該当することや、甲社の経営状況が悪化している現状では、倒産の危険を含むものである。
よって、「回復することができない損害が生じるおそれ」(同条3項)が認められる。
ウ(ア)では、「法令・・・に違反する行為」(同条1項)が認められるか。
(イ)まず、本件貸付が「重要な財産」(362条4項1号)にあたらないか。
この点、「重要」か否かは当該会社の規模との関係で相関的に決まると考える。
その判断は、資本金に占める割合等から総合的に判断する。
本件では、15億円の貸付は、資本金である30億円の半分にあたるもので、甲社の経営を左右するに十分なものである。
よって、本件貸付は「重要な財産」の「処分」にあたり、取締役会の承認を要する。
(ウ)重ねて、本件貸付が利益相反取引(356条1項2号)にあたり、取締役会の承認決議(365条1項)を要するのではないか。「自己または第三者のために」との文言のうち、「ために」の意義が問題となる。
この点、 「ために」とは,名義の意義であると考える。
なぜなら,実質的な利益相反取引は,間接取引(356条1項3号)として捕足すればよいからである。
本件では、乙社を代表するのはPであるため、「取締役」であるPが、「第三者」である乙社のために、株式会社である「甲社」と取引をする場合にあたる。
よって、直接取引にあたり、取締役会の承認が必要となる。
(エ)では、本件において適法に取締役会の承認がなされているか。
本件では、Pが取締役会に参加している。
Pが特別利害関係取締役(369条2項)にあたるとすれば、参加したことが取締役会の有効性を左右する可能性がある。「特別の利害関係を有する」の意義が問題となる。
この点、特別利害関係があるとは,当該取締役が当該決議について,会社の利益と衝突する個人的な利害関係を有し,忠実義務違反の恐れがあることを指す。
本件では、Pは本件貸付を受ける乙社の唯一の株主であるとともに取締役である。
そうすると、本件貸付について、会社との利害の衝突が認められ、特別利害関係取締役にあたる。
そして、上記の利害衝突のおそれがあることから、このような取締役は、議決に参加できないことはもちろん、取締役会自体に参加することも決議の内容に不当な影響を与えるものとして、無効事由を構成すると考える。
よって、Pが参加している本件取締役会決議は、一般原則に従い無効である。
したがって、「法令・・・に違反する行為」が認められる。
エ 次に、Aは、株主の地位に基づいて株主総会を招集し(297条)、本件貸付を議題とすることで(303条)、これを阻止することも考えられる。
もっとも、甲社は公開会社であるところ、Aは全株式100万株のうち、1万株しか保有してないため、「100分の3」(297条1項)の要件を満たさず、この方法は認められない。
オ また、取締役の地位に基づいて、取締役会を招集(366条)して、本件貸付を阻止することも考えられるが、22年総会において、Aは取締役をして再任されていないため、この方法も採り得ない。
(2)Fの権限
ア Fについても、違法行為差止請求(385条1項)を求めることが考えられる。そして、これを本案として仮処分をかけることになる(民事執行法23条2項)。
イ 前述の通り、「回復することができない損害が生じるおそれ」が認められる本件では、「著しい損害が生じるおそれ」も当然に認められる。
また、前述の通り、「法令・・・に違反する行為」も認められる。
よって、本請求は認められる。
ウ 次に、383条2項に基づいて、取締役に対して、取締役会の招集を求め、本件貸付を阻止するように意見を述べることも可能である。
2 (2)について
(1)A・F共通の責任追及
ア H、D、Pに対して、423条1項に基づいて、損害賠償責任を追及することが考えられる。
イ まず、Aについては、株主代表訴訟を提起する必要がある。
前述の通り、Aは、「6ヶ月前から引続き株式を有する株主」(847条1項)にあたる。
よって、Aは、甲社がAの請求から60日以内に訴えを提起しない場合には自ら世紀人追及の訴えを提起できる。
ウ(ア)423条の責任が認められるには、①損害、②任務懈怠、③①②の間の相当因果関係、④故意・過失が認められる必要がある。
(イ)まず、①損害については、上記の本件貸付が有効であった場合には、乙社が倒産しているため、回収が不可能となった15億円が損害にあたる。
一方、本件貸付が無効であった場合には、甲社は不当利得返還請求権(民法703、704条)を取得するため、損害はないとも思えるが、やはり乙社が倒産しているため、損害の填補が功を奏しないため、15億円が損害となる。
(ウ)次に、②任務懈怠が認められるか。
aこの点、取締役は、会社と委任契約を締結しているため、善管注意義務(330条、民法644条)及び忠実義務(355条)を負う。
そうすると、取締役は、業務執行に際して会社に損害を生じさせない義務を負うと考える。
本件では、H、D、Pはいずれも取締役として、本件の高額な資金の貸付に際して、慎重に相手方の経営状況を調査し、貸し倒れがないようにする等の任務を負っていたといえる。
特に、経営難を立て直すために甲社代表取締役に就任したHについては、甲社の厳しい経営状態を前提として、より慎重に取引を行う注意義務が課せられていたといえる。
bそして、前述の通り、本件貸付は利益相反取引に該当するため、423条3項によって、任務懈怠が推定される。
具体的には、Hは同条項2号、Dは同条項3号、Pは同条項1号に該当する。
よって、以下に、任務懈怠の推定を覆す事情があったかを検討する。
c 本件取締役会において、監査役Fが本件貸付についての説明が不十分であったことを指摘している。
これにもかかわらず、H、Dは特にPに更なる説明を求めることなく、賛成しているため、この2名については推定を覆す事情は認められない。
また、Pについても、本件貸付について十分に説明する法的義務を負っているにも拘わらず(356条1項柱書)、Fの説明要求に何ら答えていない。
よって、Pについても推定を覆す事情は見当たらない。
したがって、H、D、Pのいずれについても②任務懈怠は認められる。
(エ)そして、③相当因果関係、④故意・過失も認められる。
エ したがって、A・FはH、D、Pに対して、15億円の損害賠償を求めることができる。
(2)Aによる責任追及
ア Aは、株主として、429条1項に基づいて、甲社が15億円の損害を被ったことで自己に生じた株式の価値の下落分の間接損害の賠償を求めることが考えられる。
イ ここで、要件の解釈に先立ち、429条の法的性質が問題となるが、法が特別に認めた責任であると考える。
なぜなら、会社の業務執行は取締役に依存し、会社が倒産等した場合には社会に重大な影響を与える危険があるからである。
ウ そうすると、「損害」とは広く、間接損害も含むべきである。
しかし、株主が主体となる場合は、「損害」に間接損害は含まないと考える。
なぜなら、株主代表訴訟によって損害は填補できるし、取締役に二重の責任を負わせる危険があるからである。
エ よって、429条に基づく損害賠償は認められない。
第3 設問3
1 23年総会において、議長Hは、Fが意見を述べようとしたところ、これを制止して裁決に至っている。
このような「決議の方法」は、監査役の意見陳述権を害するもので「法令・・・に違反」(831条1項1号)といえる。
また、議長の議事運営の裁量権の逸脱として「決議の方法が・・・著しく不公正」(同条項)といえる。
2 加えて、Pは、Pが全株式を有する乙社の株主の地位を利用して、監査役選任議案を提出している。
その結果、適法に作成された会社提出の監査役選任議案(343条1項参照)が否決され、上記の株主提案が可決されている。
このような監査役の選任は、監査役の独立性確保を徹底する趣旨である343条1項に反するものである。
よって、本件決議は「決議の方法が・・・法令に違反する」ものといえ、この観点からも取消事由が存在することになる。
以上