最初のワンシーンワンカットでの葬儀の場面から
ヤバい、ゾッコンになる
あらすじは知ってたけど、実際に見ると豊かさがある
それは映画的な豊かさであり、人間的な豊かでもある

最愛の母親が亡くなった警官のジムは、
葬儀で母が好きだったブルース・スプリングスティーンの曲
「涙のサンダーロード」に合わせて踊ろうとする
しかしラジカセの故障により音楽が流れず、涙ながらに無音の中でダンスを踊る

この最初のシーンは、いくらでもコメディになるし
苦笑もしてしまうけど
実際には真正面からリアルに撮ってて、
主演ジム・カミングスの演技も上手いを通りこして、物悲しい

あとで知ったのは、彼自身が監督、脚本、編集、音楽を担当して主演も務めてること
2016年のサンダンス映画祭でグランプリを受賞した短編を
自身のメガホンで長編映画化したという

ファーストシーン以降も、ジムは妻と別れ
さらに親権裁判でも負け、親友とケンカし
警察をクビになり、裸で帰るはめになる
こんなやり取りもコメディではなく、シリアスに描いてるのがいい

負け犬の系譜、とは簡単には言える
ただこの映画はブルース・スプリングスティーンの曲にインスパイアーされてて
つまりそれは労働者の歌であり、働く男たちの姿がモチーフになってる

情けない父親だが、娘と映画を見るラストシーンは忘れられない
つまり長い人生では、負けも勝ちも変わらないということだろう
ジム・カミングスの一撃に頭が下がる作品

★★★★★