昨日、「オブシディアンの指環」の原型になった

「蟠桃堂の談話室」という作品について、触れました。

 

日の目を見ることはなく、プリンターで印刷された作品は、

大切に私の机の中に仕舞ってあります。

 

そもそも「蟠桃堂の談話室(以下、談話室)」は、どんな作品だったのか。

 

これは昨日も書きましたが、

藤井夢心が、アンバールートを辿ることで日本の本当の歴史に触れ、

蟠桃堂で出会う人たちと共に成長していくというストーリーなのですが、

まぁ、いま読み返してみると、全然、物語になってません。

 

でも、その後の作品の基礎になっていることだけは事実として存在します。

 

まず、オブシディアンの指環(以下、指環)では、蟠桃堂は喫茶店ですが、

談話室では、漢方薬局でした。だから、〇〇堂なんですね。

 

蟠桃堂の蟠桃については、

漢方薬局ということで、なにか不老不死とか、長寿とかのワードで検索して

引っかかったのが「蟠桃」だったと記憶してます。

蟠桃は、伊邪那美命に会いに行った伊邪那岐命が

黄泉比良坂(よもつひらさか)から命かながら逃げ帰るときに

悪霊に向かって投げつけた桃です。

孫悟空が盗み食いしたことでも有名ですね。

 

漢方薬局を描くのに、僕は漢方薬局に行ったことがなかったので、

たまたま東京に行く機会があったので、そのときに老舗の漢方薬局に行きました。

40分くらいでしょうか、ちゃんとカウンセリングを受けて、

調剤していただいて、購入してきました。

 

そのとき、調剤室に実に美しい百味箪笥(ひゃくみだんす)がありまして、

(百味箪笥とは、千と千尋の物語で鎌爺が使っていたあの箪笥です)

そこからいくつもの生薬を引き出して、調剤していくのです。

 

ちゃんとしたカウンセリングを受けたこと、

百味箪笥を見れて、調剤の様子も見れたことは、とても良かった。

 

指環に登場する人物の多くも、談話室には登場します。

まず、主人公の藤井夢心。

指環では、咲弥姫の生まれ変わりとして、勇猛果敢に行動しますが、

談話室では、当初、アトピー持ちのいじめられっ子として描かれます。

いじめていたのは、指環でも夢心のライバルとして登場する花咲心優。

 

蟠桃堂の店主は、天海珀。

かなりの博識ですが、指環では、その役目の多くは夢心に譲る形になっています。

 

それから、蟠桃堂の常連客、木本理砂。

理砂も談話室では、会社勤めに疲れたOLとして登場し、

蟠桃堂にやってきた飛び込みのお客でした。

指環では、ちゃきちゃきのOLとして描かれ、

物語の終盤では、対峙する相手に凜として立ち向かいます。

 

談話室では、夢心の武器は言葉と行動でした。

でも、それじゃ面白くないので(実際、全然面白くない)、

指環では、夢心に超人的な能力を持たせました。

それが、抜群の運動神経。どこまでも見通せる驚異的な視力。

実体として携える天羽々斬剣、そしてオブシディアンの指環です。

 

でも、物語の書き始めでは、夢心に持たせた能力は

指環と運動神経でした。

書き進めるうちに、驚異的な視力や剣を持たせることを思いつき、

剣は指環と共鳴して、その剣先がほのかに光るように描いたのです。

 

夢心が覚醒するときに胸の真ん中で光る白い珠については、

6月7日の「光 それは希望 それは私たちそのもの」をご参照くださいませ。

 

いろんなことが、驚くほど変わりましたが、

変わっていないものもあります。

それは、生きていくことの大切さ。

 

生きるという意志。

 

誰もが生きる権利を持っているし、だれもがそれを妨げてはいけない。

 

誰もが、他の誰とも似ていないし、似ている必要もない。

誰かと自分は違うという多様性を認めることが大切だということ。

 

みんな同じとか、混合することが多様性と勘違いしている人がとても多い。

多様性とは、差別性です。

 

話ずれた。

 

指環の登場人物は、誰もがそれぞれの朱鳥を餅ながらも懸命に生きています。

物語を読む誰もが、生きる力を持っている、そのことに気付いて欲しい。

そんな変わらぬ願いも、強く、強く、込めて書いています。