農業簿記において、一般の商業簿記や工業簿記と違う点の一つに、「育成仮勘定」があります。
生物を育成し、育成費用を払った場合、いったん肥料費なり飼料費なりに計上しておいて、期末に育成費振替高勘定を用いて、育成仮勘定として計上するものです。
一般に、建設業などでは、建物を建てるときにかかった費用は、費用を直接「建設仮勘定」に経理しますが、農業の場合は、期末に計上するのですね。
これは、棚卸資産である農産物と固定資産である果樹・家畜などにかかる費用は共通するものが多く、費用が発生した都度区分するのが難しいからと言われています。
具体的には、、
搾乳牛の育成に関して、飼料を5百万円掛けで買いました。の仕訳は、
(飼料費)5百万円 (買掛金)5百万円
ですね。こういう仕訳を期中ずっとやっていって、期末に、たとえば
(育成仮勘定)1百万円 (育成費振替高)1百万円
とかいう仕訳をして、いまだ生物でない(搾乳牛でいえば、つまりまだ子牛を産んでいないのでお乳が出ない状態)ものを、育成仮勘定として固定資産に計上します。
それが、子牛を産んで、みごと「生物」となりました。となったときに、たとえば
(生物)2百万円 (育成仮勘定)1百万円
(育成費振替高)1百万円
などという仕訳をするわけです(金額は適当です)。
この育成費振替高は、売上原価のなかの製造原価から控除する科目です。
よって、育成費振替高を多くすると、経費が減りますので、利益が増えるのですね。
ということは、経理操作、粉飾決算によく使われる、ということです。
農家の決算書を見るときに注意しなければならない点の一つであります。