母の病❽
数日間入院をして、意識も通常に戻り、お話がありますと病院から呼び出されたのがクリスマスイブ。
約束の時間より一時間以上遅れて登場した医師は、明らかに態度が横柄だった。
汚い裏紙に、「死亡」「回復」という文字と、ある臓器の絵を描き始めた。
病名は、尿路結石による腎盂腎炎。
今、カテーテルを挿入する手術をしました。
明日になっても、カテーテルから尿が出て来なかった場合、「死亡」します。
明日、カテーテルから尿が出て来たら、「回復」します。
淡々と、裏紙に矢印を引っ張りながら数分で話を終える。
「何か質問は?」
まるで母を、物の様に扱われた気がした。
絶句してしまった俺は、「いや、特に」とだけ告げて帰宅した。
あまりにもショックが大き過ぎて、今度は俺が翌日会社に淡々と話してしまった。
「もしかしたら母が危ないかもしれません」と。
しかし翌日、耳を疑う事を病院から言い渡された。
「退院の手続きをお願いします」
亡くなるかもしれないと言われた翌日に、この展開は何なんだ?と困惑した。
ジェットコースターの様なクリスマスとなった。