産経新聞のネット版の記事より

 

特別選抜なども含む全進学希望者のうち、公立志願の割合は59.03%。現行入試制度が始まった平成28年度以降初めて6割を切った。府教育庁担当者は「来年度から順次導入する高校授業料無償化で、私学へ流れる生徒の増加が大きな要因」とみる。

 

この記事は100%間違っているわけではないのだが、もう一つの大きな要因を加味していないと私は考える。

 

  私立高校人気だけが要因ではない!

 

もう一つの大きな要因とは・・・

それは

『受験を早く終わらせたい』

という保護者・受験生双方の気持ち

である。

 

  大阪の高校入試の日程は?

 

大阪の私立高校入試は毎年2月10日に実施される。それに対して公立高校の一般入試は3月10日前後に実施される。実施時期では30日ほど公立高校入試が遅いわけだ。更に合否発表に至っては私立高校が2月13日頃には自宅に結果が郵送されてくるのに対し、公立高校一般入試の合否発表は3月20日前後で学校に貼り出される。

 

公立高校の合否発表日は保護者も休みをとらねばならない。理由は、『もし不合格だった場合、その足で併願受験していた私立高校へ直行し、入学手続きをしなければならないから』だ。慌ただしい状況下で1日が終わるのである。親はもちろん受験生も悲しんでいる暇すらないのである。

 

  進学先が早く決まると親も子も楽になる!

 

だったら早く受験が終わる私立高校受験が『心の負担』が少なくて済む。しかも私立高校入試では、12月の期末懇談で中学校の先生が『まぁ大丈夫でしょう』と言えば、99.9%不合格になることはない。(※本当は100%と言いたいのだが便宜上99・9%にした。)

 

年内にほぼ入学先が決まるわけで、親は『入学金』の工面をじっくり身構えることができる。そこに、追い風になるのが大阪府の高校授業料無償政策だ。ただし、2024年4月時点では、完全無料ではない。2024年入学の現中3は高校3年でやっと完全無料になる。

 

  授業料完全無料は2026年入学者から!

 

現状は、『世帯所得に応じて段階的に授業料無料』になっている。世帯所得が590万円未満であれば授業料は全額無料になる。しかしここにも落とし穴というか、『えっ!?なんで?』という仕組みが潜んでいる。それは・・・

授業料をいったん納入しなければならない

のである。(※私が、ある私立高校の受験担当者から聞いた話)

 

えっ!?無料じゃないの?

 

いいえ、無料です。

しかし、授業料以外のお金は徴収されることを忘れてはならない。保護者の中には『すべてが無料』と思っている人もいた。

 

  授業料以外のお金って何なのか?

 

教科書の代金は有料だ。更に施設の保持費用、制服購入代金、クラブ活動にかかる費用は実費だ。更に修学旅行の積み立て。このような費用を、納入された授業料から引き算して、残金を保護者の口座へ返金するという仕組みになっている(※高校によって仕組みが違う。)

 

この傾向は大学入試でも同様だ。早ければ年内に入学先が決まるからだ。

 

  まとめると、

 

公立志望者が少ないのは、私立人気だけではなく、『早く受験を終わらせたい』という保護者と受験生の気持ちの表れと、2026年から始まる高校授業料完全無償化が、このような傾向を生み出したと考えられる。

 

ただし懸念材料もある。私立高校側の先生一人が面倒を見ることができる生徒数が増えるということは、今後の私立高校の『学力向上』と『進学実績』に大きな影響を与えることが考えられる。

 

カネをかけるから細かいところまで見てもらえるんじゃないのか?そう思っている保護者・受験生は今一度進路を本当に考えてほしいと思う。