彼女はおかっぱ頭だ。当節はボブカットというのだろうか。大の女が前髪を短く切りそろえておかっぱにしたり、三つ編みを結ったりおさげにしているのは気味が悪い。
彼女が市松人形のごとく不気味に見えないのは、黒くつややかな髪を耳にかけているのと、こどもの紅斑と同じ位置に、そばかすが散っているからだ。
薄いそばかすがやんちゃなイメージを与えていた。形のいい耳は小さかった。福耳の反対だな、と私はつまらないことを考えた。
真っ白い顔の中の部品はどれも小振りで、くるくるとよく動く目が、どんぐりのようにつぶらだった。彼女はパステルピンクのセーターに白いスラックスを履いていて、水色のロンパスにこれまた白いタイツの赤ん坊との取り合わせが、ひと足早い春の風を運んできた。
大きく開いたセーターの胸元から、その体にはあり得ない、豊満なバストが覗いていた。断じて豊胸手術なぞ施すタイプではない。彼女なら悪あがきをせずとも、世界を手に入れることができる。母乳が出ている証拠だ。
大の男がいくらお乳を吸おうとしても無理なのを、 私は過去の経験から知っていた。赤ん坊は独特の舌を使う、天性のテクニシャンである。
私はテクニシャンの容態よりも、お乳の味の方が気になってしかたなかった。