小説★SIRIUSU★③ | ☆永遠★

☆永遠★

祈りに変えて…


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「月姉!どうかした?」

弟ゼウスが私(セレネ)に言う
セレネ=月の女神

弟は、ずっと前から私を
そう呼び…姉を大姉と呼ぶ
ヘリオス=太陽の女神

「電気が胸の所に走ったの」と
私も初めて“しかめっつら”を
見せたのだ

「痛い」の表現がわからなくても
顔の表情で読み取る…
弟ゼウスは鋭く頭のイイ
頼り甲斐のある男に
成長していたのだった


「月姉、それは“痛い”
もしくは、“苦しい”って言うんだよ」

「イタイ?クッ…クルシイ?」
初めてのことばかりで
何が何だか
わからないことだらけ


3才ほどの赤子が言葉を
カタコトで話し始めるような
感じであった



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「祖父?勝利?何それ?」

身内は姉弟と
この国の父(王)ウラノスしか
知らない私は何が何だか
サッパリ理解、出来なかった

この国には赤子(あかご)はいない

子を産む痛みさえ
悲痛なものはないのだから…

だから勿論ゎ母などは
存在していなかった


弟ゼウスは…

「ひとりひとり 誰にでも

自分を産んでくれた母がいるんだ

すべてのみんなの父ではなく
自分だけの父と母がいるんだよ
そしてその父と母にも
また、父と母がいて
祖父と祖母と言うんだよ」


「でも月姉、一度に色々
説明しても 頭の中が
ゴチャゴチャでわからないでしょ?

今日はもう帰ろう…

胸の痛みは大丈夫?」


私は何故か?わからないが

弟のことを“海”と呼んでしまった

不思議なココの湖が
引いてゆく汐の匂いに
海が言った

自分だけの“父と母”に
“祖父と祖母”に

とっても懐かしい響きを感じ
暖かさを感じ…


目からダイヤみたいな
水が溢れてしまった

ビックリしてしまって
海に「目から…」と

しがみついて泣いてしまったのを
記憶に強く覚えている


その時、 姉もまた
大粒のダイヤを流していた


私達、姉妹が初めて流した

“涙”だった



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そして…

この国のすべての父
ウラノス大王は

息子のクロノス王に
戦争で負けてしまうのである

その背景には
偉大なる母がいた