最後に会ったのは何年前になるだろう。二度と会いたくなかったんだろうね。あの時カフェで最後の話をした時のあなたの表情が忘れられない。連絡がいきなり取れなくなってから、全く音沙汰が無かったのにいきなり電話で別れを告げられた時はショック過ぎて、もうどうして良いか解らなかった。でも最後ちゃんと会って話してくれた事は本当に感謝している。

 

もう忘れているのだろうか私の事を。顔も名前さえも。何も無かったかのように。

たとえ街ですれ違って気付いて貰えなかったとしても私は私だけは振り向く。そしてあなたが知らない人と手を握って笑顔でいるのを見る。そして安心する。あなたが今幸せならそれで良いから。

 

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家庭を持って最初の正月を迎えた時の話

 

「本当に行かないの?」

「うん。」

「えー行こうよー。お母さんも会いたがってたよー」

「だから地元に帰るんだって。」

「えー」

お正月。私の実家では夜に恒例の親戚の集まりがあって私もそれに参加するつもりなのだが主体者が来ないと言う。何があるのかと聞くと地元に帰るのだそう。

「一緒に帰ろうよー」

「いやいやいやいやいや。 何回いやっていっても足りへんわ。 普通夫の地元に一緒に行くもんよ?」

「えーでも私、地元帰りたいもん。」

「だからもう別々で帰ったら良いやんて。」

「えー、一緒にいたい―。行こうよー」

「地元でしないといけない事があるんやってー。」

ははっ。笑わせる。正月にしないといけない事とか。そんなもんお年玉貰うくらいでしょ。

「は!?お前まだお年玉貰ってんの!?」

「何よ。社会人はお年玉貰ったら罪になる訳?何?死刑?」

「極端かよ。死刑て。一般常識や。」

「別に良いじゃーん。」

 

不毛な会話が続いていたが、ケータイの着信音が会話をストップさせた。あ、お母さんだ。

「もしもしー...そう。..うん。...えーなんでよー。良いじゃんー私も皆に会いたいー。はー?夫の地元に行かないと罪になる訳?死刑? ん?え?」

お母さんが主体者に換われと言ってきた。仕方が無いのでケータイを主体者に渡した。

「明けましておめでとうございますー 御無沙汰してますー」

主体者の関西弁がいきなり標準語になった。ついでに声のトーンも少し高くなっていた。

「あははは。いえいえー。僕もお義母さんにお会いしたいんですけど...。すみません本当に。 いえいえー」

よくそんな歯が浮くような言葉が平気で出るもんだ。

「え? あ、ご、ご無沙汰しております。昨年は大変お世話になり」

お父さんが出たようだ。主体者の態度が一気に営業マンになった。返事する度にお辞儀している。向こうには見えないというのに。

「はい!はい!ありがとうございます!」

主体者がくの字に曲がる。見てて本当に面白い。これはもう営業マンでは無く海老だ海老。

「はい。はい。何卒宜しくお願いします。はい。」 

お、主体者がケータイを返してきた。

そこから、主体者の地元に行けとか帰ってきたら迷惑だとかあんたは本当にとか色々言われたけど結局互いの地元に帰る事で収まった。

「それじゃあね。エビ君!」

「はぁ?冷蔵庫のものだけちゃんとしといてよ。帰ってきたら腐ってるとか無いように。あと、」

先に地元に帰る主体者の言葉を聞き流して見送った。海老だけに。