2008/11/11 | 金融経済の鉄人のブログ

2008/11/11

押し寄せる景気後退の波から自動車産業を守ろうと、

アメリカとヨーロッパ各国の政府が支援策を検討している。

EUは新たな環境基準への対応を支援する名目で、

総額400億ユーロ(500億ドル)の低利融資を実施する方針を示したばかり。

一方のアメリカ政府も、フォード、ゼネラル・モーターズ、クライスラーのビッグスリーが窮地に立つなか、

より厳しい燃費基準への対応を支援する250億ドルを拠出した。

ビッグスリーはさらに500億ドルの追加支援を求めている。

どちらのケースも、支援が名目どおりに使われるかどうかはわからない。

多くの人々の生活がかかっている以上、政府の助けに無関心ではいられない。

しかし自動車メーカーそのものを救済することに、疑問を感じる。

まず銀行が救済された。

続いて各国の中央銀行が利下げを実施し、金融緩和へ。

そして現在は、特定の業界が政府支援を要請する段階に入っている。

政治家は今、こうした要求に弱くなっている。

金融機関の救済に何千億ドルも公的資金をつぎ込んだので、

その後の数十億ドルの支援がやりやすくなってしまった。

アメリカ財務省はすでに保険会社へ資金援助わ強く示唆している。


しかし、いったん始めたらどこでやめるつもりなのか。

自動車業界を助けるなら、航空や鉄道も助ければいい。

どこも不景気に苦しんでいる。

ここ数ヵ月で原油価格が半値以下になり、

必要な設備投資を削減するほかない石油業界は支援しないのか。

将来有望なはずねバイオ技術分野も、信用収縮で資金不足に苦しんでいる。

それを考えると、何十年もの間、

消費者に対しても社会の変化に対しても鈍感だったアメリカの自動車業界は、

救済相手としてもっとも不適格だと思う。

トヨタやアメリカ製よりもずっと品質が高く、

スタイリッシュで経済的な車を造ってきたのに、

その努力をアメリカ自動車業界は無視し続けてきた。

80年代以降のアメリカの自動車業界は、

自動車販売ではなく系列金融機関の収益でもっていた。

メーカーというよりは銀行だ。

そして困難が訪れる度に政府の助けを求めた。

70年代のクライスラー救済、

80年代の日本車の輸入規制、

そして日本市場への進出でも。


さらに穏やかな環境規制にも再三にわたって反対し、

大気汚染にはまったく責任がないと言わんばかりの姿勢を取り続けた。


ビッグスリーがつぶれても、

アメリカの自動車産業が終わるわけではない。

トヨタやホンダ、韓国の現代自動車が空白を埋める。

いずれの企業もすでに製造拠点をアメリカに設けているので、

デトロイトがつぶれたら彼らが増産すればいい。

ビッグスリーの工場も一部は買収されるだろう。


いずれにせよ、この景気後退が続き、どこまで深刻化するか、

それは誰にもわからない。


しかし、救済策にしても、もっとよいやり方はあるように思う。

産業そのものを救済するより労働者を保護するような策が有効と考える。

公的資金は企業ではなく、

労働者に投資する。

自動車業界の元従業員への失業給付金を延長し、

再就職のため教育や職業訓練を実施してはどうか。

解雇されたときに、医療保険や年金を維持できるようにするのもよい。


景気後退は思っている以上に深刻化している。

しかし、確信できることは、

これまでの金融システムは変革を余儀なくされ、

多くの産業が姿を変えることになる。


自動車メーカー救済は、短期的な政治効果はともかく、

長期的にみればまずい政策だ。