カルメンのドン・ホセ役 | 小野弘晴のブログ

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テノール歌手 小野弘晴のブログです!




2月には、フェリス女学院大学のゼミ公演と文京シビックホールの2本のカルメンに出演します。

フェリスは今年で17年目になりますが、オーケストラでの全曲原語公演という素晴らしい試みです。

文京カルメンは毎年大人気でチケットの売れ行きも好調らしく、販売二日目にしてS席完売という凄い売れ行きです。キャスト一同心が引き締まります。


カルメンのドン・ホセ役はテノール転向して数年後から何度か歌わせて頂いていますが、この役はドラマティック、ヒロイックな役どころだけではなく、物語序盤のリリックな要素が入っているのでとても難役に感じます。


アリア「花の歌」で最後に歌われる高いシ(変B音)は大きく歌われるものではないし、ファルセットでもない、頭声と胸声の混合のアクートが求められます。


役どころとしては、ホセの感じる愛、つまり彼の母やミカエラへの愛は温かく心地よいものだった、そこにカルメンという直接的で官能を動かす存在が現れる。

ホセの中にいる悪魔的な心情を揺さぶるのです。


2幕で歌われるこのアリアは単純な愛のアリアではなくて、ホセ自身の心理救済と「僕がこんな風になったのは君のせいだ」と心をさらけ出すのと同時に、正直な心情を露呈することによって「この場面をどうにかしようとしている」という事ではないかと僕は思っています。


牢屋の中で反芻した想いを伝えて、二人きりのこの場で気持ちを告白するホセのこのアリアでは、やはり大きなB音は適切ではないと僕は思っています。


聴衆の皆さんの中でこれを評価してくれる方もいらっしゃると思いますし、過去にしっかり輝かしいB音で歌うテノールを聴いた方の中には不服に思われる方もいらっしゃると思います。

が、僕はやはりホセのこの心情に沿って歌いたいと思っています。


3幕以降ホセの心理は一変、利用されているのではないかと思い、カルメンに感情をぶつけ、脅迫し、それに「諦め」「疲れ」という要素が混ざります。


ここからがドラマティックでとてもセリア的なホセになり、この役の難しい役どころではないかと感じます。

音楽が感情に流されないようにしないといけませんし、必要以上に身体的に力んだ動きにならないようにしないといけません。

感情に任された声は歌声のそれとは全く違う響きを持って客席手前に落ちます。

かといって一歩退いて安全地帯で歌っているホセは皆さん望んでいないですよね。笑

何度歌っても感情と音楽のバランスを取るのがとても難しい場面です。

まさにヴェリズモ、「美より真実」です。


2月「カルメン」お楽しみください!