素晴らしい夏を過ごした。
県高校総体での入賞、
初の東北大会、
そして仲間の力を借りて
インターハイまで経験した。
内から見ても外から見ても、
波に乗っていた。
まだまだある。
大会中に他校の女性(いわゆるファン)から手作りのお菓子をもらったり、
伝統ある部長の座を引き継いだり…
もう、何でもできる気持ちだった。
高校生ならよくある思い上がりかもしれないのだが。
そして、季節は秋になろうとしていた―。
気温も水温も低くなる季節、学校のプールでの部活動を終えて
帰途につこうとしたとき、校門から
華奢な身体に黄色のカーディガンを纏った、見るも可憐な女性が
網目の細かな黒いカゴ付きの、洒落た赤い自転車に跨って出てきた。
あの子だ…!
僕の意志は、完全に内なる欲求によって支配されていた。
面と向かって話がしたい―。
後輩たちに別れを告げ、僕は愛車 silver bulletで
彼女を追いかけた。
きっと、
僕の瞳は
純粋に輝いていただろう…
(*silver bullet…ただの銀色の自転車。オートライト機能搭載で乗り心地も素晴らしく、他の自転車に魅力を感じなくなるほど。
2013年1月、廃車。
敬意を表して、名前を付けた。
どうか安らかに…)