ゲイ占い師 豫 空潤です。

 

前回に続き、同棲する日本人ゲイ男性Tommyと観たゲイ映画を紹介します。

 

「老ナルキソス」(2023年日本)

監督・脚本:東海林毅

出演者(役名):田村泰二郎(山崎) 水石亜飛夢(レオ) 日出郎(しのぶ) モロ師岡(島本) 村井國夫(幹夫)など

 

あらすじ(ネタバレします)

70代の山崎が全裸で縛られ、鞭打たれている。山崎はゲイのマゾヒスト。ウリ専ボーイ(男性版風俗)のレオ(25)を買って自らを鞭打たせ、SMプレイに興じているのだ。

 

孫のようなレオの若さと美貌を愛でながらも、山崎は満たされない。自身の若い頃の美貌が忘れられないのだ。本当は醜い男から責められてこそ、興奮するのだ。

 

山崎は、レオを行きつけのゲイバーに連れていく。同年代のママしのぶ(男性)とは50年来の友人だ。そこで、山崎が著名な童話作家だと知らされ、レオは喜ぶ。山崎の代表作は、レオが子どもの頃、大好きだった作品なのだ。

 

山崎は、路地裏で空き缶を集めている老人ホームレスを見て「ああなりたくない」とレオに話す。だが、1人になった山崎は、そのホームレスに金を渡し、路地裏で裸になって拘束してもらい、鞭打ちを頼む。

 

しかし、ホームレスは鞭打ちはせず、暴言を吐いて、身動き取れない裸の山崎を殴り、夜の路地裏に放置して去る。山崎は舌でスマホを操作し、レオを呼んで助けてもらう。

 

レオに助けられた山崎は、おのれの惨めさと情けなさで堪らなくなり、ビルから飛び降りようとする。引き止めたレオは、LINE交換して、山崎を支えようと考える。

 

山崎は、前立腺癌を患っていた。老い先短いと自覚する山崎は、レオを買い続ける。

レオの方も、山崎に特別な何かを感じ始めていた。

 

しかし、レオには同棲するゲイ男性の隼人がいた。隼人はレオを家族に紹介し、パートナーシップ制度登録や里子の養育を希望していた。が、父を知らず、母とも疎遠になっていたレオは「家族って、よくわからない」と、隼人への返事を留保していた。

 

山崎も、家族には懐疑的だった。父親が専制的で、山崎の絵をまったく認めず、野球を強制するばかりだったからだ。

 

山崎には、気にかけてくれる人がもう1人いた。出版社の女性、荏子田だ。ずっと独身の荏子田は、一時期、山崎との友情結婚を提案したこともあり、何十年も新たな作品を書けないでいる山崎を見捨てない唯一の存在だった。

 

しかし、山崎本人は、他人に興味なく、若い頃から自分しか愛せない。老いた今も、若い頃の自分のイメージが捨てられない。周囲からの老人に対する親切など、素直に受け入れられないのだ。

 

行くところがない山崎は、しのぶの店に飲みに行く。昔の仲間の話になり、島本が老人ゲイの持ち寄り食事会を開いていること、山崎がかつて振った幹夫が地方の実家にいるという話になる。

 

山崎は、レオを連れて昔仲間の島本を訪ねる。持ち寄り食事会に参加するが、すんなり輪に入れるレオとは対照的に、山崎は加われない。

 

山崎は、前立腺癌が進行していた。もう長くないと感じた山崎は、さすがに寂しくなる。レオとの養子縁組を考え始める。

 

山崎は、著名作家のプライドの高さから、しのぶの忠告に聞く耳を持たない。隠居老人になった昔の仲間とは違うと主張する。そして、しのぶから「あんたこそ惨めよ。あたし以外友達いないでしょ?」と言われ、口論してしまう。

 

しのぶには虚勢を張った山崎だが、荏子田からは「年内に新しい作品を書かなければ、もう待たないよ」と言われるも……やはり、新作は書けない。

 

山崎は、レオにすがり、養子縁組を持ちかける。アトリエも童話の版権も相続できるのだからと……。しかし、レオは話に乗らない。隼人とのパートナーシップ制度を受諾しようと考えていたのだ。

 

山崎は、ウリ専ボーイを辞めたレオに自家用車を運転させ、かつての恋人幹夫を訪ねることにする。途中、人のいない港でレオを手でイカせる。若いレオの射精を見て、興奮した山崎は、埠頭で全裸になる。裸を見られたいのだ。しかし、周囲には誰もいない。

 

山崎とレオは幹夫宅を訪ねる。かつて山崎と別れた幹夫は女性と結婚していた。嫁は病死したが、娘が婿をとり同居して、出産を控えていた。

 

山崎と幹夫は海辺を散歩し、漁師小屋で、50年前のようにSMプレイをしようとして……とちゅうでやめる。2人とも年を取り過ぎたのだ。

 

山崎と幹夫が散歩から帰ると、幹夫の娘と婿がレオと話していた。レオは「山崎の孫です」と自己紹介していた。レオを彼氏だと思いたい山崎は、不機嫌になり、幹夫が80歳前でようやく初孫を持つことを笑い、馬鹿にする。気まずくなって早々に立ち去る山崎とレオ。

 

帰路、海岸に寄った山崎は、正式にレオに養子縁組を頼む。保証人まで記名されていて、あとはレオが記名・捺印するだけだ。しかし、レオは断る。山崎が反面教師となり、隼人と家族になろうと決めたのだ。

 

絶望した山崎はレオの首を絞めて無理心中を図り、抵抗されると海に入ってひとりで死のうとする。山崎の身勝手な行動に呆れ、捨ておこうとしたレオだが、やはり見殺しにはできず、海に潜って助け、旅館に泊めた後、ひとりで帰っていく。

 

無事に戻った山崎は、改めてナルシシストの自分を見つめ直し、新作童話を書き上げる。新作童話は、島本やしのぶ・幹夫らに届けられる。

 

レオは荏子田の出版社に勤め、ともに山崎の新作童話を売り込んでいた。隼人とパートナーシップ制度に登録し、幼い里子を育て、山崎の新作童話を読み聞かせていた。

 

そして、山崎は……今も、ゲイアプリで若い男を探し続けている……。

 

 

Tommy「正直言って、山崎のようにはなりたくないね」

 

僕「金で買った若いボーイを『彼氏』として友人に紹介するなんて……痛いよね」

 

Tommy「自分だけが好きで、相手は金が目的だなんて……1番惨めだよ」

 

僕「あと、山崎が全裸になるシーンがたくさんあるけれど、ハッキリ言うと老人の裸は見たくない……ノンケ(異性愛)男女だけでなく、ほとんどのゲイもそうだと思う」

 

Tommy「山崎は周りを振り回してばかり……。周りがかわいそう……」

 

僕「金があるだけに、余計に嫌な老人になっているよね。ただ……」

 

Tommy「ただ?」

 

僕「70過ぎても枯れない人はいる。独居のゲイが、既にモテなくなっていることを受け入れられず、もがいてしまう……」

 

Tommy「ゲイの孤独老人だね」

 

僕「マゾヒストやナルシシストではなく、山崎ほどではないにしても、老いた自分を受け入れられないゲイ男性は少なくないよ」

 

Tommy「まあね」

 

僕「老人になったら、枯れて、落ち着いて、セックスの相手探しは卒業が潔いと思うけど……性欲が残っているから、現実はそうはいかない」

 

Tommy「そうだろうけど……」

 

僕「そういうゲイ老人の現実から、目を背けてはいけない」

 

Tommy「レオはウリ専ボーイを辞めて就職し、隼人とパートナーになったけど……山崎は、ほぼ成長してないよね? 新作は書けたけど、相変わらず男探しをしている……」

 

僕「ただ、山崎は自分に正直に生きている。幹夫は、女性と結婚し、孫までできて、一見、まともな老人だけど……裏では若い男を漁っている……」

 

Tommy「山崎が自分に正直に生きてることは認めるけど……」

 

僕「確かに、山崎はみっともない。でも、そういうゲイ老人は実際にいる。それは、これまで同性愛が認知されず、結婚や家族制度から排除されていたからだ」

 

Tommy「レオのような若い世代は、パートナーシップ制度に乗り、家族を得ていくのと……対照的だね」

 

僕「ある意味、残酷だよね? 同じゲイであっても、若い頃は美貌の青年だったとしても、昔は家族を得ることはまったく不可能だった。今やっと制度が変わりつつあるが、老人が相手が見つけるのは難しい……」

 

Tommy「そこは、わかるけど……」

 

僕「観て、不快感を覚える人もいると思う。でも、これまで、日本のゲイ老人の悲しさをここまでリアルに描いた映画は無かったと思う」

 

Tommy「現実的ではあると思う」

 

僕「一部のゲイエリートや微笑ましいゲイカップルだけ見て、ゲイをわかったような気になってはいけない。幸せなゲイカップルは決して多くないんだから……」

 

Tommy「それはあるね」

 

僕「ラストは、山崎が若い男探しをやめない……っていうシーンだけど、ある意味、救いになっていると思う」

 

Tommy「救い?」

 

僕「どんなに過去が不遇であっても、老いた今がみっともなくても、たくましく生きていくっていう……。絶望して投げやりになるよりいいんじゃない?」

 

Tommy「確かに、山崎は2度も自殺未遂をするけど……。最後は、生きていこうとしている」

 

僕「どんな境遇でも、あきらめちゃダメだよ。生きていれば、希望はある」

 

 

さて、今日の台湾版易タロットです。

↑「山地剝(さんちはく)」

2回連続で運気が「底」のカードです。

 

ガッカリしがちですが……運気が低いことが数日続くのはしかたないこと。

その分、運気がいい日も数日続くのですから。

 

新たな行動はせず、現状維持を心がけましょう。

 

↓占いの師である、霊観占 大幸 峰ゆり子先生。

 

 

↑峰ゆり子先生宅玄関前の観音像(北海道苫小牧市)