チェリー:スタンリー・タレンタイン | かえるの音楽堂

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CHERRY : STANLEY TURRENTINE

(1972年)

 テナー・サックス奏者、スタンリー・タレンタインは、60年代にはブルーノート・レーベルを中心に活動していました。スタンリーは数々のアルバムを残していますが、彼の作品で名盤と言えばブルーノート時代のアルバムでは、ザ・スリー・サウンズとのコラボ作で「BLUE HOUR(ブルーアワー)」等があります。スタンリーは70年代に入るとクリード・テイラーのCTIレコードで活動しました。スタンリー・タレンタインのCTI作品というと、まず「シュガー」そして今回紹介するアルバム「チェリー」が挙げられます。どちらの作品も商業的にも大成功したアルバムです。スタンリーはCTIの作品で一躍人気者となりました。CTIの作品はよりイージーリスニング・ジャズ的な誰にでも聴きやすい作品でした。そんな中で「チェリー」の成功の鍵はビブラフォン奏者ミルト・ジャクソンとの組み合わせと言えるのではないでしょうか。クリード・テイラーはこういった大物を組み合わせて、ミュージシャン同士の言わば化学反応のような効果を最大限に引き出して数々の名盤を生み出しました。このように本作ではスタンリーとミルト・ジャクソンというソウルフルなプレイヤーの共演による相乗効果によるファンキーな熱演が聴けます。今回のアルバムはスタンリー名義ではありますがスタンリーとミルトの双頭アルバムと言っても間違いないと思います。参加メンバーは、スタンリー・タレンタイン(ts)、ミルト・ジャクソン(vib)、ボブ・ジェームス(el-pp)、コーネル・デュプリー(g)、ロン・カーター(b)、ビリー・コブハム(ds)というメンバーによるコンボ演奏です。当時はまだ若手ミュージシャンであった、ボブ・ジェームスとコーネル・デュプリーの二人が参加していることも注目です。

 

1. SPEEDBALL(スピードボール)

2. I REMEMBER YOU(アイ・リメンバー・ユー)

3. THE REVS(回転)

4. SISTER SANCTIFIED(清らかなシスター)

5. CHERRY(チェリー)

6. INTROSPECTIVE(イントロスペクティブ)

 

 1曲目「SPEEDBALL(スピードボール)」はリー・モーガン作のブルース曲で「ザ・ジゴロ」で演奏されていたものです。タレンタインの力強いテナー・ソロに続き、ミルトのヴァイブ、コブハムのドラム・ソロが続きます。2曲目「I REMEMBER YOU(アイ・リメンバー・ユー)」は映画「ザ・フリーツ・イン」の曲です。ここではタレンタインとミルトによるブルージーでゆったりしたバラードが展開されます。3曲目「THE REVS(回転)」はミルト・ジャクソン作曲のブルース・ナンバーです。ボブ・ジェームスのエレピも良い感じですし、コーネル・デュプリーのR&B風ギターも聴けます。4曲目「SISTER SANCTIFIED(清らかなシスター)」はロック調のポップな曲です。ホンキー・トンク風タレンタインのテナーとジャクソンのヴァイブ・ソロに続き、コーネル・デュプリーのソロも聴けます。5曲目「CHERRY(チェリー)」はアルバム・タイトル曲で、ちょっとけだるさの漂う曲調の作品です。ジャクソンのヴァイブ・ソロによるスロー・バラードに始まり、タレンタインの太いサックス・ソロが続きます。6曲目「INTROSPECTIVE(イントロスペクティブ)」では再び軽快な感じの曲となります。ボブのエレピ、コブハムのベース、ロン・カーターのベースとバックのサポートも光っています。それにしてもバラエティーに富んでいて飽きさせないアルバムです。スタンリーはこの後ファンタジー・レコードに移籍し、ばりばりのフュージョン路線に転向してフュージョン・ファンを楽しませてくれる作品を残しました。