ビヨンド・メビウス:シダー・ウォルトン | かえるの音楽堂

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70年~80年のCROSSOVER(FUSION)とJAZZを中心にAORか
らSOULまで、かえるのお勧めのGood Music Albumや音楽情報な
どを紹介いたします。

BEYOND MOBIUS : CEDAR WALTON

(1976年)

 1970年代から80年代にはジャズシーンではフュージョンの風が吹きました。そんな中でモダン・ジャズの巨匠達にも影響を与え、ディジー・ガレスビーのようにフュージョン作品を発表した人も多くいます。そんなひとりがモダン・ジャズを代表するピアニスト、シダー・ウォルトンです。シダー・ウォルトンはテキサス州ダラス出身で、1955年後半にはケニー・ドーハムのバンドに加わり活動を始めました。またジョン・コルトレーンの“ジャイアント・ステップス”の録音にも参加しました。1960年代の初めには、ピアニスト、アレンジャーとしてアート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズに3年間在籍しました。ジャズ・メッセンジャーズ時代には“ugetsu”など日本にちなんだ曲も作っています。1964年にジャズ・メッセンジャーズを脱退後は様々なミュージシャンと演奏を行っており日本にも来日しています。彼のピアノを弾くタッチは強く弾いても音の美しさが崩れない、「鈴の音」と形容されました。そんなシダーがフュージョン全盛の1975年にエレピやシンセサイザーを弾き、バックに川崎燎、ゴードン・エドワーズ、スティーヴ・ガッドらを迎えエレクトリック・ファンクなアルバム“MOBIUS(メビウス)”を発表しました。このアルバムは当然のように当時のモダン・ジャズの評論家達には酷評されました。しかしもちろん新しい音楽が好きなフュージョン・ファンには大好評で、このヒットに気を良くしたウォルトンは翌年に続編との言える本作品を発表しました。バックでは結成直後のSTUFFのメンバーから、前作に引き継ぎベースがゴードン・エドワーズ、ギターにエリック・ゲイル、コーネルデュプリー、またモダン・ジャズ界からトランペットとフュリューゲル・ホーンでブルー・ミッチェル、テナー・サックスでエディ・ハリスが参加しています。その他のメンバーはチャールズ・コリンズ、ジミー・ヤング(ds)、エンジェル・アレンデ(perc)、ジョン・ファディス(tpflh)、ジョージ・マージ(ts)、ウェイン・アンドレ(tb)です。何と言ってもSTUFFの3人の参加が嬉しいですね。

 

1BAD LUCK(バッド・ラック)

2LOW RIDER(ロー・ライダー)

3BEYOND MOBIUS(ビヨンド・メビウス)

4JIVE TALKIN’(ジャイヴ・トーキン)

5CANADIAN SUNSET(カナダの夕陽)

6THE GIRL WITH DISCOTHEQUE EYES(ザ・ガール・ウィズ・ディスコティック・アイズ)

7LONELY CATHEDRAL(ロンリー・カテドラル)

 

 曲は全7曲でソウルやディスコのヒット曲や自身のオリジナル曲で構成されており、前作に比べてもよりポップになっています。1曲目「BAD LUCK」はフィリー・ソウルのデュオ、マクファデン&ホワイトヘッドの曲です。アップテンポでファンキーな曲でコロコロ転がるようなエレピを弾いています。ブルー・ミッチェルがトランペット・ソロを吹きます。2曲目「LOW RIDER」はウォーの曲です。3曲目「BEYOND MOBIUS」はシダー・ウォルトンのオリジナルです。タイトなリズムをバックにムーグ・シンセとエレピを弾いています。4曲目「JIVE TALKIN’」はお馴染みビージーズのヒット曲をシダー流ディスコ・サウンドに料理しました。5曲目「CANADIAN SUNSET」はピアニスト、エディ・ヘイウッドの曲です。ここではアコピを弾いています。6曲目「THE GIRL WITH DISCOTHEQUE EYES」はシダー・ウォルトンのオリジナルのメロウでファンキーな曲です。7曲目「LONELY CATHEDRAL」もシダー・ウォルトンのオリジナルです。エリック・ゲイルのギター・ソロが嬉しいですね。ソウルやディスコのカバーもいいですが、6曲目や7曲目のオリジナル曲がなかなか素晴らしく、こちらこそ是非聴いて欲しいですね。シダーの演奏はアコピでもエレピでも本質的にはまったく変わりません。おそらくラムゼイ・ルイスなんかが好きな人にはすんなり受け入れられるのではないでしょうか。結構レアな作品ですが楽しめるフュージョン作品のひとつです。