ザ・パス:ラルフ・マクドナルド | かえるの音楽堂

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100-THE PATH













THE PATH : RALPH MACDONALD
(1978年)
 パーカッション奏者ラルフ・マクドナルドが1978年に発表したセカンド・アルバムです。彼はパーカッション奏者として亡くなるまで多くの作品に参加するとともに(一説では数百枚)、自身の作品も11作ほど出しています。また彼はパーカッション奏者だけでなく作曲家、プロデューサーとしても活躍しました。プロデューサーとしてはグローヴァー・ワシントンJr.の名作“ワイン・ライト”を製作し、収録曲“ジャスト・ザ・トゥ・オブ・アス”で、グラミー賞「最優秀リズム&ブルース・ソング賞」を受賞しました。そんなラルフのセカンド・アルバム“THE PATH(ザ・パス)”は発売当時、邦題では“回帰”と付けられていたように自身の音楽家としてのルーツを辿るって感じの、“アフリカ、カリプソへの回帰”をテーマにしており、特に発売当時のアナログ・ディスクではA面はパートⅠからパートⅢまでの17分を超える組曲風の大曲です。またこのアルバムはアルバムジャケットに写っているラルフのおばあちゃんに捧げたものです。ルーツと言えばこのアルバムの前年1977年にアレックス・ヘイリー原作の小説“ルーツ”を基にアメリカ合衆国のテレビドラマが製作されました。これはアメリカの歴史上、最も暗い側面のひとつである黒人奴隷の問題を真っ正面から描き、社会現象と言えるような大反響を巻き起こし、“ルーツ”という言葉も流行りました。ラルフがこのドラマにインスパイアされたのかは分かりませんが、時期的に言えば影響を受けていてもおかしくありませんね。参加メンバーはラルフ・マクドナルド(perc)、ランディ・ブレッカー(tp)、 マイケル・ブレッカー(ts)、 デヴィッド・サンボーン(as)、 バリー・ロジャース(tb)、 ボブ・ジェームス(keyb)、グローヴァー・ワシントンJr.(ss、ts)、 リチャード・ティー(p)、 エリック・ゲイル(g)、 チャック・レイニー、ウィル・リー、ウィリアム・イートン(b)、 スティーヴ・ガッド、リック・マロッタ(ds) 他ブレッカー・ブラザースやSTUFFのメンバーを含む当時のフュージョンのオール・スター達です。

01.THE PATH PART ONE~PART3(ザ・パス:パート1~パート3)
02.SMOKE RINGS AND WINE(スモーク・リングズ・アンド・ワイン)
03.I CROSS MY HEART(アイ・クロス・マイ・ハート)
04.IT FEELS SO GOOD(イット・フィールズ・ソー・グッド)
05.IF I'M STILL AROUND TOMORROW(イフ・アイム・ステイル・アラウンド・トゥモロー)

 1曲目「THE PATH  PART ONE~PART(ザ・パスPART1~3)」は自分のルーツをテーマにしたネイティヴ・アフリカンなサウンドです。“パート1”はジミ・ソランケのメッセージからスタートします。アフロな土着のリズムそしてゴスペル風のコーラスに続くパーカッション・ソロが圧巻です。ドラムはアイドリス・ムハマッドです。“パート2”は父の故郷をテーマにスチール・ドラムを中心としたカリプソ調の曲です。ドラムはリック・マロッタに変わります。“パート3”は自分が生まれたニューヨークをテーマとしたファンキー・チューンです。ニューヨークのミュージシャン達のパワー溢れる演奏が素晴らしいです。エリック・ゲイルの16ビート・カッティング、リチャード・ティーのピアノ、スティーヴ・ガッドのドラムとSTUFFのメンバーのサポートもさすがです。そしてボブ・ジェームスのアナログ・シンセによるソロ、続いてそのまんまブレッカー・ブラザースの登場です。チャック・レイニーのベースもサウンドをよく支えています。最後は再びパート1のコーラスが登場して幕を閉じます。

 2曲目「SMOKE RINGS AND WINE(スモーク・リングズ・アンド・ワイン)」 はトゥーツ・シールマンスのハーモニカをフューチャーしたスロー・バラード曲です。ヘンリー・マンシーニの“酒とばらの日々”と同じコード進行をベースにラルフ&ソルター作によるテーマのメロディの曲です。3曲目「I CROSS MY HEART(アイ・クロス・マイ・ハート)」ではリチャード・ティー、チャック・レイニー、リック・マロッタがバックを務めます。グローヴァー・ワシントンJr.のサックスが全編に渡りフューチャーされ、後のラルフとグローヴァー・コンビの活躍を予感させます。4曲目「IT FEELS SO GOOD(イット・フィールズ・ソー・グッド)」はアーサー・ジェンキンスJr.のピアノのイントロからスタートします。デヴィッド・フリードマンのヴィブラフォンがフューチャーされるラテン・ナンバーです。エリック・ゲイルの独特なギター・ソロも聴き逃せません5曲目「IF I'M STILL AROUND TOMORROW(イフ・アイム・ステイル・アラウンド・トゥモロー)」70年代ディスコ調の曲です。リード・ヴォーカルは米国出身の歌手グェン・ガスリーです。バックはドラムがチャールズ・コリンズ、ベースはウィル・リー、ギターにヒュー・マックラッケンです。アルバム・ジャケットのイメージとは違って、サウンドはアーバンでモダンな感じで、さらに言えばシンプルながらもすごく綿密なアレンジで、メロディーも彼らの演奏もまた超一流の素晴らしいアルバムです。