その様な日々が続き、僕はそれとなく彼女を観察するようになっていた。
本当に気持ちが表情に出ないのか?
もし表情に出ないのであれば、きっとどこか別のところに出ているに違いない。
こんな気持ちで彼女を観察するのは不謹慎だろうか…。
そんなある日。
彼女たちが働いている机の方から、ガタンと何かが落ちる音がした。
行ってみると、感情鈍磨のその彼女の机からキーボードが落ちていた。
それを拾い上げながら、
「大丈夫?」と、聞いた。
あっそうか…。無駄だった…。
キーボードが元に戻ると、まるで何事もなかったかのように彼女は原稿を入力し始めた。
ふ~ん。
僕は、疑問と納得の入り混じったような言葉を頭に思い浮かべた。
いや、なんとかその表現で自分を納得させたいと思っていた。
ところがこの世界は、そんな甘い言葉では納得のできるような底の浅い世界ではなかったのである。
それから数日が過ぎたある日のことだった。