来週は菱沼さんのキャンプだ。
そこで高校生に向けて、大学受験のアドバイスをすることになっているんだが
どう告げればいいか迷っている。
本音を言えば
俺の薦めるスタイルは極めて現実的でネガティブであり
夢も希望もあったものではない。
俺が進んできた勉強法は、人から評価されるようなものではない。
学力至上主義
勉強の為にならないものは、とにかく切り捨ててきた
放送部での仕事は同級生たちにほぼ丸投げし
行事はとにかく消極的で、ほとんど手伝わず。
そんなことやってたら、お前も手伝えとしがらみも出てくるだろう。
だから、3年生になり新クラスになった時に仲良い友達が少なかったのを
逆にチャンスに捉えた。
あえて仲良くしようとはせず、とにかく存在を薄くすることに努めた。
今までとにかく目立ってやろう、普通とは違う所を見せてやろうという
意識が強かった自分が
とにかく目立たぬよう、平凡に終始することは葛藤があった。
こんな退屈なスタイルで良いのかと。
1,2年で同じクラスだった人は
まるで人が変わったようで、きっと驚いただろう。
とにかく陰にいることに終始努めた。
存在が薄くなれば、行事でいなくても皆の気に止まりにくくなる。
合唱祭の時は、半分くらいは練習に出なかった。
夏休みも20日くらい練習日があって冗談じゃないと思ったものだ。
家でたまに1人練習をして
全体練習に出てなくても文句を言わせぬよう努めたものだ。
勉強は嫌いだった。
英語にも数学にも物理にも、そこまで強い興味はない。
俺は元々、家でダラダラと過ごすのが好きな性分だ。
勉強は将来、安定して人生を過ごすための手段でしかない。
興味なんてないのだ。
だから、とにかく自分を勉強に向かわせるための
モチベーション維持に多大な労力を要した。
夢や希望というポジティブなエネルギーは
俺の勉強生活には存在していない。
安定した生活程度の願望では弱い。
こうなれば、負のエネルギーしかない。
幸いにも塾は激しい競争意識を我々に持たせるよう煽っていた。
それに俺は便乗した。
とにかく周り全員がライバルだ。
どいつもこいつも憎たらしい、こいつらを抜かしたい。
俺より先に塾に入っていたあるラグビー部の連中。
学力も性格も三流の連中で、
人を小馬鹿にしては互いに喜びあっていたりと
何とも残念な連中だった。
しかし、俺は1年の時の怠慢により
入った時はそんな連中にすら学力では劣っていた。
しかし入ってから次のテストまでの2か月間
俺は文法書を何度も見開いては、とにかく勉強した。
そしてそのテストで、あっさりと残念ラグビー部連中を抜き去り
入っていた英語2番目のクラスでTOPになった。
そこから4か月ほどして、俺は残念ラグビー部連中とおさらばし
上のクラスに入った。
上のクラスの連中たちは、努力家の集まりだった。
俺がいくら必死に勉強しても、周りの奴等も同じように勉強している。
敵わなかった。
敵わなかったけど、とにかくもっと昇りつめたいという意識があった。
それに上では厳しいノルマが常に課せられ
ノルマを達成できなければ下に落とすといつも脅されていた。
激しいライバル意識、それに伴う嫉妬や憎悪
そして厳しい達成ノルマ。
毎日のように追われ、心身はすり減っていった。
運動不足で体重は1年で5kg増え
机に向かいすぎで腰は2回痛めた。
とにかく時間と体力が欲しい。
そんな時、怠惰な授業とやたらに熱心な行事が邪魔だった。
授業も行事も部活もいつもサボることを考えていた。
授業に出ても塾の勉強をこっそりするタイミングを伺っていた。
周りの批判の目を気にしながらも
何とか勉強して学力を上げようとする自分に対して
進学校なのに全く勉強に邁進せず
行事も部活もただ流されてやっていた奴は酷く軽蔑したものだ。
特によう分からん女子大の推薦枠が15ほどあり
「おいおい進学校なのに、そんな所行く奴があるものか」
と思っていたのに、
あっさり枠が埋まってしまったことには激しく憤慨した。
女は楽なものだ。
適当に高校生活を過ごし、適当に女子大に入って
あとは男でも見つけて寄生すればいいんだからな。
こんな差別的なことは思いたくなかったが
ろくに努力もせず適当に女子大に入ったんだから、そう思いたくもなるさ。
かくして日陰にいて醜い勉強法は功を奏し
俺は志望の大学に入った。
その道の間には、激しい挫折を覚えた。
俺は一流ではなく三流の人間。
学や仕事で一流になることに才覚もなければ、志向もない。
むしろ三流の人間の方が
味があり、面白い人間が多いように俺は思える。
色々なことを知っており、深みがあるのだ。
ってなことを高校生には言えないな。
勉強のアドバイスか。
ダメだ、思いつくのは邪道なことばかりだな。