「ミック・テイラー 史上最強の追跡者」について記しておきたい。
これは「ウルフ・クリーク 猟奇殺人谷」の続編だそうですが、ホントにそうなのかな?
ってくらい、内容は同じ。
リメイク?と思いきや原題は「ウルフクリーク2」なのです。
2013年のオーストラリア映画。
おっさんが旅行者をブチ○しているだけなので、なんていうのかな。
「いつまでたってもちびまる子ちゃんは小学3年生」のような、アニメとかマンガの世界観に通じる「ミック・テイラーはいつでも通常運転☆」みたいな印象があります。
「ウルフ・クリーク」のじじいと「ミック・テイラー」のじじいが同一人物なのかふとわからなくなったのですが、調べたらちゃんと同じ人でした。
でも、このミック・テイラーという殺人鬼にはあまり特徴がないのです。
オーストラリアにいる農夫のおじさんって感じのルックスなのですが、その頭の中身はもうマジ○チ。
こんなキチおじさんの映画を久しぶりに見たなあ。
全編では旅行者としばきあったり、むごい殺し方をしてニヤニヤしたりしていたものの、拷問シーン自体はほぼないに等しく(にしても、このおっさんの異常性はものすごい伝わってきたけど)、スプラッター要素もほぼなし。
ただ、このおじさんの住んでいる家の汚さとか、死体くさそう(その臭いはわからないけど、こうとしか表現できないモワ~ン感)な部屋の感じとかは初期の「悪魔のいけにえ」に到達できそうな作りこみ具合だった気もする。
ただ、こちらの作品からは「マーダー・ライド・ショー」のように、死体を飾りたてている印象もあります。
あ、でもそれももともとは「悪魔のいけにえ」であったわな。
実話がモチーフになっているとはいえ、エド・ゲインとは関係ないはずなんですがそれでもモチーフにされてしまう感じ。そんな印象。
あらすじは
・ヨーロッパから(たしかドイツだったかな?)来ているヒッチハイカーの男女を殺してBARABARAにするミックおじさん
・女子が逃げた!
・それを拾った男
・ミックおじさんにこてんぱんにされるZO☆
という、相変わらず理不尽な話なのであります。
ざっくりとネタバレ
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カップルのドイツ人バックパッカーが旅をしている様子が冒頭は描かれます。
自然を満喫して、ヒッチハイクして楽しんでいます。
そしてキャンプ中にイチャイチャ。結婚を予期させるような会話もあります。
しかし、そこにやってきた謎の男。
「ここでたき火をすんな!キャンプもスンナ!」と怒り出します。
その乱暴さに不信感を持ったカップルの男性の方と揉みあいになり、彼をぶん殴る男。
彼女をテントから引きずり出しておパンツをちぎりさえします。
毎回思うんだけど「殺人鬼は美女のパンツをちぎる」というファンタジーはなんなのか。
女性でもいるのかもしれませんけど。男性のブリーフを引き裂きたい人。
いや、面白くちぎれるなら見たいですよ。出川さんのブリーフがちぎれたらそらぁ面白いだろうし。
と話を戻して
怯える女子を守ろうと、力を振り絞って立ち上がる男子。
ですがそのまま、彼は謎の男に刺されてしまいます。
女子が気が付くと、そこは荒野の真ん中(ちなみにまだ夜)。
謎の男・ミックはルンルンしながら男子を解体中。
心臓を取り出し、性器を切り取り、体をバラバラにしながら余計なパーツは犬にポイッ。
「ドイツ野郎のペ○スはでっかいなあウヘヘ」とか下衆な一言もあります。
ミックは下品だなあ。
そのあまりの様子に、また卒倒しそうになる女子。
見ているこっちも卒倒しそうになりました。
こっそり逃げる女子ですが、なんと車を見つけて無事にヒッチハイク成功。
この車の運転手こそ、主人公なのであります。
そう、さんざん追っかけまわされてブン殴られて片方は解体されたカップルは添え物。
この主人公はイギリス生まれの男性なのですが、女子を拾ってわけもわからないまま、カーチェイスをするはめに。
ミックの執念は非常にすさまじい。
車で追いかけ続け、女子を射殺した後も主人公を追いかけてきます。
それにしても、拾った女の子がわけもわからないうちにライフルで射殺されてしまうのですから恐ろしい。
また、いかにも暑そうな気候のオーストラリアでその死体は思いっきり臭いそうなのであります。
むせっかえるような血の匂いが、嗅いだこともないのにこみあげてきますぞ。
ちなみに青年は謝りながら死体を荒野に放置。
青年の車が大破した後もまだまだ追いかけるミック。
なんと、大きなトラックをどこからか調達してきたミックに追われる青年のシーンでは、この映画であまりにも有名な「カンガルーをバンバン轢き殺す」場面も出てきます。
愉快そうなミックですが、あまりの映像にこちらもビックリ。
「ハングオーバー」シリーズでも、高速道路のトンネルで首が飛んじゃうキリンが出てきましたが、こういう動物の交通事故ってびっくりしますね。
カニが大量発生する島では、島民の皆さんは毎年のことだから気にせずバンバンカニ轢き殺してたけど。
あの映像を思い出したじゃないか。
主人公が民家を見つけて保護された後も、その家を襲ってまで彼を殺そうとするミック。
親切な老夫婦をも犠牲にして、彼らの戦いは続くのです。
荒野の真ん中に住んでいる老夫婦って、どうしてホラー映画ではえじきになるのかなあ。
ってくらい、冷徹にミックは彼らを撃ち殺していきます。
しかし、ミックに拉致された青年が連れてこられたのは彼のアジト。
「ウルフ・クリーク」の時よりもすごく凝った作りになっております。
倉庫のような場所で椅子に固定された彼は、ミックに翻弄されます。
殺されまいと、あえてミックを煽ったり、大きなことを言って注意を引く青年。
そして彼とミックは、解放をかけて、ミックの出すオーストラリアクイズに挑戦することになります。
青年には選択権はないのですが…。
しかし大学で歴史を先行していた青年はことごとくミックの質問に正しく回答。
イラついたミックは逆ギレで勝手に不正解にしちゃいます。
そして不正解だから指切るね☆彡とギコギコ。
イギリスはオーストラリアを植民地にした過去があるのですが、ミックは徐々にその事実で思い出し怒りをしはじめ、青年をいたぶります。
ですが青年もスキを見てミックをハンマーで殴打。
逃げようとしますが、このアジトのおそろしさに衝撃を受けることになります。
しかも、ミックは相変わらず頑丈なのでぶったたかれてもすぐにムクリと起き上がります。
元気なじじいである。
まず、もともと倉庫に合った「人間で作った家具」はもちろんのこと、洞穴を掘って作ったようなアジトのなかには死体がこんもり。ありとあらゆるところに死体が落ちていて、吊るされていて、虫も湧いていて。
ここのシーンはさまざまなホラー映画のオマージュのようにも見えます。
怯えながら逃げ惑う青年。
トラップや犬攻撃にも耐えながら、彼は出口近くまでたどり着くものの、主人公はミックに掴まってしまいます。
オーストラリアを訪れる観光客を寄生虫よばわりするミック、その「殺人の美学」がここで唐突に語られます。オーストラリアに巣食う外国人観光客を片付けて、祖国を守るぞ!というその精神。
内容自体はかぶっていないのですが、なんとなく村上龍の「インザ・ミソスープ」を思い出した。
(この小説は面白いですよね)
ラストは青年が解放され、道端に捨てられているシーン。
彼の手には「敗者」というメモが握らされています。
結局青年は生還したものの、警察の取り調べを経て、彼は精神病院のお世話にもなっているという補足テロップが入って終わり。
見ていて非常に不愉快で、「早く終わってほしい」としか願えないこの映画。
その点でも非常に優れたホラーだと思う。