助成金の「近代化」 | 新労社 おりおりの記

助成金の「近代化」

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「近代化」というのは、歴史上「暗黒の中世」に比べると能率が上がるようになった意味もありますが、おおむね都市化とか、工業化とか、物理的な生産性向上の意味合いが強いのです。

 

雇用関係助成金という限られた書類手続きのお仕事では、どういう「近代化」がなされるでしょうか?年々叫ばれてきたところではあるのですが、このコロナ禍で、けっこう進んだような気がするのです。助成金業務がより不能率な点は・・・

 

1、計画⇒実行⇒申請という流れなので、何か労務管理のためになることをしたとしても、計画を出していないと助成金申請がそもそも出来ない。だから何かためになることは切羽詰まらないと「やらない」ということになる。

 

2、書類を作る上で、同じようなことを紙に入力し、紙ベースで考えなければならない。電子申請などムリ。FAXもダメなところが多い。そのマイナス動機は個人情報の保護と不正の防止。

 

3、不正を防ぐために、性善説と紙一重の性悪説がまかり通っている。だから現場のヒトの思い付きの、紙に書いた法律以外の「ローカル・ルール」が多く、当局に何度も足を運んだり、何度も郵送費用を掛けなければならない。

 

これを解消するには・・・

 

1、計画を出さなくても、結果として労務管理の恩恵があればいいでしょう。そういういい意味での「結果論」主義。当局の定める福利の基準に合っていれば、計画がなくても思い立ったが吉日で始め、結果が出て初めて書類を出して審査をしてもらう。

 

2、いったんデータを入力すれば、それが各書類の必要なところ数か所に飛んで自動で記載してくれる。それらをPDFに直すなどしなくても、必要なパスワードなどで保護した能率的なデータが文字通り飛んで、AI等で審査してくれる。

 

3、ローカル・ルールがあるのなら、それを電子化でしっかりと通知し、必要な書類は居ながらにしてできる体制を整える。細かい改正・要領も、分かりにくい体裁で1400ページもあるが、ネットで見ることができる。

 

これらのこと、すでにこのコロナ禍の雇用調整助成金の一連の改正で行われているのですね。何度も役所と会社を往復していては時間がかかり、また、やらねばならないこと(制度や書類の確認)が多いと、非常時の本質(おカネを早く給付して雇用を救う)を見失う、ということで、のんびりと行うはずだったのが、一気に「近代化」が進みました。他の育児関係やキャリアアップ助成金などでも少しずつ入力の簡略化など「近代化」が進んでいます。

 

実は数年前に、助成金の電子化は2020年度にやる!と言っていたのです。ただやっぱり非常のことが起きないと、助成金という事務にしても、進歩しないというものでしょうか。ただコロナ禍ではこれまでになかった新たな動きが出てきています。

 

「事業主が労働者への福利をやらないなら、労働者自らやってもらおう」という動きです。雇用関係助成金は労働者への福利を経営者が行う、会社へのごほうびという性格を前提としています。これを崩して、おカネの入るスピードを重視して、労働者自らが自分に福利を自力で与えてくれというものです。

 

こうなりますともう「雇用関係助成金」とは言えず、「個人自力給付金」とでもいうべきものになってきています。近代化もクソもない、経営者⇒労働者という、社会のひとびとの関係性から考え直す必要が出始めているのではないでしょうか。