非常の助成金・恒常の助成金 | 新労社 おりおりの記

非常の助成金・恒常の助成金

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助成金でもいろいろありますが、この数十種類の助成金、大きく2つに分かれると思います。今回のコロナさわぎで浮き彫りになった「非常の助成金」と、平和な時代こそ効力を発揮する「恒常の助成金」です。

 

非常の助成金は、非常時に力を発揮して、それ以外の時期にはあまり力を発揮しない助成金です。もうおなじみの雇用調整助成金の他に・・・

 

・特定求職者雇用開発助成金:なかなか就職が難しい高齢者、障害者、若者、母子家庭の母などを就職せしめる。

・労働移動支援助成金:不況業種⇒好況業種への“労働移動”を円滑に行う。

・両立支援等助成金 小学校休業等対応コース:非常時の休業、特に子どものいる労働者を助ける。臨時の新設。

 

などです。

 

どの助成金も、仕事がないのにお給料を払う、働くに当たって、健常者より劣るかもしれないヒトを雇う、もう不況で従業員を抱えていけなくなった業種から人を移動させるなど、経営者にとってけっこう“ムリ”のあることを助成金で補おうという、当局の考えです。

 

実務上これらの助成金は「おカネを素早くあげよう」というものが多いですね。解雇過去の違法も目をつぶろう、書類が多少いい加減でも、助成金に必要な事実を反映したものであればいい、自動で次の書類が黙っていても送られてくる、などです。それで調子に乗って摘発されるヒトも多いのですが、とにかくおカネで主に間接的に労働者を救おうという助成金です。

 

反面、恒常(平和時)の助成金もあります。

 

・キャリアアップ助成金:非正規社員を正社員に上げる。賃上げする。

・人材確保等支援助成金:制度を作って、会社にいるヒトが増えれば非常に結構。

・人材開発支援助成金:教育訓練はおカネがかかる、その何分の1かを補填しましょう。

・両立支援等助成金 出生時両立支援コース:男性労働者の育児休業の規則を作って取らせればごほうび。

 

非常時と違って、就職しているヒト、会社にいてさらにレベルアップしたいヒトのための助成金です。就職できない!そもそも雇用していられない!という非常時の助成金と違って、出さなくっても会社がなくなるということはあるまい、ということで、審査も厳しくなります。

 

これらの助成金の受給のミソは「おカネをあげよう」というものではなく、いかに要件(労働者の上乗せ福利)を強化するかということです。非正規労働者が1人もいないのに非正規労働者の就業規則を作れとか、昨年は受理された助成金対象の教育訓練が、今年は一般的になったから対象から外すとか、渋る会社にちょっとでも処遇を上げることをおカネである程度強制するところがあるのです。そういう強制も助成金が社労士に嫌がられるところですけれどね。

 

ただいずれの助成金にも共通点があります。それは・・・

 

・労働関係の「法定3帳簿」(賃金台帳、労働者名簿、出勤簿)はじめ、労基法(労務関連の最高法規)を守りなさいよ。

 

ということです。昨今の雇調金などは「手書きの給与明細でもいい!」というような緩和がなされていますが、要件が変わっても、役所のチェック機能が緩くなるわけではありません。たいていの社労士は法定3帳簿のない会社には揃えようと努力するはずです。それは「法を守って国民の税金が使われる」大原則を守ろうとするからです。

 

昨今暴力団に対する取り締まりが厳しく、人権まで制限されそうな勢いなのは、暴力団が「自分の法を作って国法に対抗しようとする無法者」だからです。非常時はしかし、無法(の可能性もある)事業所も救うことがあるのは、憲法の「必要最低限度の生活」を守るという、これも法律の趣旨であるからです。