令和2年度 雇用関係助成金の動き | 新労社 おりおりの記

令和2年度 雇用関係助成金の動き

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令和2年度は、平成31年度とそれほど変わりませんが、廃止の助成金が0と、近年にありません。新設は2つありますが、これは昨年度並み。ですから助成金自体はそれほど大変わりしていません。ただ、この2月、3月の新型コロナウイルス感染症対策で、年度替わり前にけっこう意外な改正、新設もあります。

 

ただ伸びていないが政治の意向で伸ばしたいものは額や要件が緩和され、出過ぎているもの、正社員化やインターバルなどは現状維持で、数字上、決まり上では変化ありませんが、審査など現場の態度が、不正行為など相まって厳しくなっています。本稿では令和元年補正予算(令和2年1月施行)も一部含み、またはコロナウイルス関連の予備費由来(令和元年2月以降順次施行)の内容も含みます。

 

 

☆彡 新設される助成金 

 

☆ 人材確保等支援助成金 外国人労働者就労環境整備助成コース

外国人が自らの労働条件等を十分に理解し、適正な待遇の下で安心・納得して就労を継続し、その能力を発揮することができるよう、外国人特有の事情に配慮した事業主の雇用管理改善の取組みに対する助成を通じて、外国人労働者の職場定着の促進等を図る。事業所毎に制度環境整備計画を策定し、外国人労働者及び日本人労働者の離職率に関する目標を達成した場合に支給対象経費の1/2(生産性要件を満たした場合は2/3)を支給。 

 

☆ エイジフレンドリー補助金

高年齢労働者の安全・健康の確保のために努力する中小企業等の支援 ・先進的な安全衛生対策技術等の普及促進を目指すものです。対象は60歳以上の高年齢労働者を雇用する中小企業等の事業者で、対象経費の補助率1/2(上限100万円)対象は高年齢労働者の特性に配慮した安全衛生教育に係る経費 高年齢労働者に優しい機械設備の導入等に関する経費、健康に対する取り組みなどです。

 

☆ 新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金(令和2年3月より、3月限定)

新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、小学校等が臨時休業した場合等に、その小学校等に通う子の保護者である労働者の休職に伴う所得の減少に対応するため、正規・非正規を問わず、労働基準法上の年次有給休暇とは別途、有給の休暇を取得させた企業に対する助成です。3月末までの休暇限定です。1日1人当たり最大8,330円給付されます。

 

☆ 緊急特定地域特別雇用安定助成金(令和2年2~4月限定)

これは雇用調整助成金の「特例拡大版」です。基本的なしくみは雇調金と変わりません。コロナウイルス感染症の被害が拡大する北海道限定で時限措置ですが、生産性要件(売上が下がらないと助成金もらえない)がゼロになったところが大きいです。文字通りの不況にかかる「無料のカンフル剤」化しました。

 

☆ 副業・兼業労働者の健康診断助成金

労働者健康安全機構の助成金の“一族”です。新たに副業・兼業をする労働者向けに作られました。副業を「される」会社が、健診機関と契約を結び、健診した場合に降りるものです。額面的には大したことはありません。

 

 

☆彡 要件等がよくなる助成金 

 

〇人材開発支援助成金

 ・一般訓練コース 支給要件からセルフキャリアドック規定を除きました。福島県の震災特例措置は引き続きます。

 ・教育訓練休暇付与コース(長期教育訓練休暇制度) 1事業主当たりの上限人数を、1人または2人から1年度あたり5人までに引き上げ。

 ・建設労働者技能実習コース 昨年度できた助成の特例の賃金助成措置を今年度も継続。

 ・特別育成訓練コース:  有期実習訓練コースの最低期間が3カ月から2カ月に短縮。また開始届がなくなり、変更届を出す場合が多くなり、いったん出したカリキュラムの固定化が進められます。

 

〇 働き方改革推進支援助成金 

・労働時間短縮・年休促進支援コース(もとの時間外労働等改善助成金 職場意識改善コース 時間外労働上限設定コース): 働き方改革で最も気合いが入る助成金。2つのコースを併合し、取組の数が多いと、併給できるようにしました。 また、賃金を上げると(3~5%)加算が付くようになります。

・勤務間インターバル導入コース:勤務間インターバル制度を設けた企業向け助成金です。内容はあまり変わりませんが、賃金アップで加算が付きます。

・テレワーク・コース:名前が変わって、年休取得の“目標”がなくなります。

・団体推進コース:同業組合など傘下企業の時間外労働の上限規制対応に向けた取組への助成です。こちらも加算が付きます。

 

 

〇 時間外労働等改善助成金:コロナウイルス対策でイレギュラーで“復活”します。

・テレワークコース:いつもは春に始めて秋に終わるのですが、コロナウイルスの影響でこの2月17日からさかのぼって特例コースとして「復活」します。目標が3つから1つになります。

・職場意識改善コース:これも上述のように「働き方改革推進支援助成金」としてリニューアルさせるはずだったのですが、旧内容の要件を簡素化して2月17日にさかのぼって5月末に至るまで進めます。特別休暇の規程を整備すれば、あとの「目標」はクリアできることになります。

 

〇キャリアアップ助成金

 ・正社員化コース:「5%賃金アップ要件」が賞与を用いる場合とそうでない場合に分けられます。

 ・賃金規定等改定コース: 賃金増額の加算が増え、5%増額した場合の加算が追加されます。

 ・選択的適用拡大導入時処遇改善コース:賃金増額の幅ごとの加算額が増え、他に、処遇改善や雇用管理の改善措置に加算措置ができます。中小企業への社会保険労務士らに依頼して説明や相談、就業時間など働き方の意向調査を行い、適用を行った際に原則19万円を支給。生産性向上に向け、研修などを実施した場合は10万円を加算します。

 ・短時間労働者労働時間延長コース 1時間以上5時間未満延長での助成で、今年も引き続き措置をやります。

 

〇求職者支援制度(認定職業訓練実施奨励金)

教育関連の委託型助成金。就職氷河期向けの短期資格習得コースが新設され、最低研修期間が3カ月から2カ月に短縮されます。建設人材育成コースはなくなります。 

 

〇業務改善助成金 

30円賃上げコースが、最低賃金850円未満の県で、60円、90円賃上げコースもできることになります。前年12月~今年3月には25円コースもありました。 

 

〇特定求職者雇用開発助成金   

・就職氷河期安定雇用実現コース :もとの安定雇用実現コース。対象者を転職回数等から、通常労働者に通算1年以下、過去1年なったことのない者に変更。 求職者支援訓練の、短期資格等習得コース受託者を対象者に含めます。

 ・生活保護受給者等雇用開発コース:対象者が広がります。地方公共団体の支援要請がなくても、生活保護受給者又は生活困窮者であり、ハローワーク、被保護者就労支援事業又は生活困窮者自立相談支援事業を通算して3ヶ月を超えて受けた者。 

 

〇65歳超雇用推進助成金 

・高年齢者評価制度等雇用管理改善コース:「みなし経費」の額が多くなり、少ない額でも申請しやすくなります。 また、コンサル料の他、機器システムも助成金対象になります。

 

〇中途採用等支援助成金

 ・中途採用拡大コース 中途採用計画期間前3年間の中途採用率に係る要件を「50%未満」から「60%未満」に緩和し、中途採用率の向上度合いに応じた助成額とするとともに、これまで中途採用を行ったことのない事業所の事業主に対する上乗せ助成を創設 

・UIJターンコース : 東京圏から地方への採用のための助成金です。 経費で外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士、民間有料職業紹介事業者等)による コンサルティング費用も対象となります。

 

〇地域雇用開発助成金 

・地域雇用開発コース 対象地域に寄附をした企業に対象が広がります。ただ、熊本地震(平成28年)の特例要件が廃止になります。 

 

 

〇両立支援等助成金

 ・出生時両立支援コース 育児休業の開始前に、個別面談等の育児休業の取得に資する個別的な取組を行った事業主に対し、現行の助成金にさらに加算が付きます。 

・介護離職防止支援コース 支給要件について休業期間を「14 日以上」から「5日以上」に緩和し、労働者が就業と介護との両立に資する制度を利用した場合の利用期間を「42 日以上」から「20 日以上」に緩和します。 

・育児休業等支援コース 子の看護休暇制度を導入した場合の支給要件について、取得時間数を「20 時間以上」から「10 時間以上」に緩和。 

 

〇障害者雇用安定助成金

 ・障害者職場定着支援コース 職場復帰支援又は中高年障害者への雇用継続支援について、現行の助成に加え、職務転換後の職務遂行に必要となる基本的な知識及び技術を習得するための研修を実施した場合に、その実施に要した経費に応じて助成します。 

 

〇人材確保等支援助成金:  

・雇用管理制度助成コース(建設分野) :   登録基幹技能者の処遇向上支援助成で、賃金アップは10万円が最低限度だったものが、5万円上げれば要件を満たす場合も作られます。

 

〇障害者雇用納付金制度に基づく各種助成金

・障害者介助等助成金、重度障害者等通勤対策助成金

それぞれの助成金について、重度訪問介護に係る指定障害福祉サービス等を 受ける対象障害者である労働者への職場介助者の委嘱を実施した場合の助成が新設されます。

 

〇企業主導型ベビーシッター利用者支援事業(仕事・子育て両立支援事業費補助金)

昨年夏走り始めた派遣ベビーシッターの送迎補助事業。コロナウイルス感染症関連で、送迎割引券の有効期間が3月末まで伸び、1世帯当たりの限度額が3月に限り5倍に増えます。

 

〇雇用調整助成金

1月から出た新型コロナウイルス感染症特例が相次いで緩和され、また去年の台風の特例等が続いていますが、熊本地震の特例が廃止になります。 

 

 

★彡 要件等が悪くなる助成金 

 

〇両立支援等助成金 

・女性活躍加速化コース: 取組目標達成時の助成、女性管理職比率達成時の加算を廃止。数値目標達成時助成だけになります。 

 

〇企業主導型保育事業 :  企業内の保育所の助成金。令和2年度新規募集は1年越しの復活。審査が2段階になり、厳しくなります。

 

〇人材確保等支援助成金

・介護福祉機器助成コース : 助成対象機器追加1つ。廃止2つ。対象機器が5つから4つになります。

 

★廃止される、または未定の助成金 

 

なし

 

 

☆★ あまり変化のない助成金 

 

〇人材開発支援助成金 

・建設労働者認定訓練コース:認定職業訓練を行う団体、または行わせた事業主の助成です。 

 

〇人材確保等支援助成金:  

・雇用管理制度助成コース:  各種雇用管理制度の助成です。 

・雇用管理制度助成コース(建設分野) :   雇用管理制度助成+若年者と女性に対する上乗せです。

・作業員宿舎等設置助成コース(建設分野) : 被災3県、女性、広域訓練者向けの助成です。

・保育・介護労働者雇用管理制度助成コース : 介護・保育の雇用管理改善の助成です。   

・若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野) :若年・女性の入職・定着のための助成。 

・設備改善等支援コース : 生産性の向上や雇用管理の改善に関する、設備投資を行う企業の助成。 

・中小企業団体助成コース :同業等の組合の、雇用管理改善の助成金です。 

・働き方改革支援コース:働き方改革推進支援助成金やその前身の助成金の上で、その改革の穴を埋める雇用のための助成金です。

 

〇労働移動支援助成金 

・再就職支援コース :再就職支援のため労働者を「出す」ための助成金です。 

・早期雇入れ支援コース: 再就職の労働者を「受け入れる」ための助成金です。 

 

〇65歳超雇用推進助成金   

・65 歳超継続雇用促進コース : 65 歳以降の継続雇用延長や65 歳までの定年年齢の引上げの助成。 

・高年齢者無期雇用転換コース :50歳以上の非正規⇒正社員の昇格に助成されます。 

 

〇両立支援等助成金 

・再雇用評価処遇コース : 介護や育児等で長期間を職を離れざるを得なかった方の助成金です 

 

〇キャリアアップ助成金  

・健康診断制度コース: 有期契約労働者を対象に健康診断を実施した場合に助成します。  

・賃金規定等共通化コース:非正規と正社員の共通の賃金規定等の新製に対して助成されます。 

・諸手当制度共通化コース:正社員、非正規社員共通の手当制度を作った場合の助成金です。 

 

 

〇職場適応訓練費 

あまり使われませんが、障害者の方にいい場合があります。 

 

〇人材開発支援助成金 

・障害者職業能力開発コース:障害者の方の施設設置・教育訓練のための助成金です。 

 

〇トライアル雇用助成金 

・一般トライアルコース 令和元年補正で、就職氷河期が対象になりました。

・障害者トライアルコース:障害者の方をフルタイム、または短時間で試用雇用できる制度です。 

・若年・女性建設労働者トライアルコース : 建設業での若年者や女性のトライアル雇用への助成です。 

 

〇特定求職者雇用開発助成金     

・特定就職困難者コース : 主に高齢・父子・母子家庭の方を雇った場合の助成金です。   

・生涯現役コース : 65歳以上の方の雇入れに対して助成されます。   

・被災者雇用開発コース : 東日本大震災の被災者を雇用した場合の助成金です。   

・発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース : より特化した障害者の助成金です。   

・障害者初回雇用コース : 障害者雇用経験のない企業向けです。   

 

〇地域雇用開発助成金 

・沖縄若年者コース: 沖縄県で、35歳未満の若年求職者を雇い入れる事業主に助成。 

 

〇通年雇用助成金

季節的業務に就く方を通年雇用した場合の助成金です。 建設業が主です。

 

〇 障害者雇用安定助成金

・障害者職場適応援助コース:職場適応援助者による支援に対する助成金です。 

 

〇労働者健康安全機構の助成金・・・5月にアナウンスが出て、6、7月改正が多いです。

・ストレスチェック実施促進のための助成金 :ストレスチェックの義務のない事業所の助成金です。

・職場環境改善計画助成金 : ストレスチェックをもとに環境改善を図った場合の助成金です。 

・小規模事業場産業医活動助成金:50人未満の事業所が産業医に具体的な活動をさせた場合の助成。

・心の健康づくり計画助成金 :企業が計画を立ててメンタル対策をした場合の助成金です。

・治療と仕事の両立支援助成金 : 通院などの治療と、仕事を両立させる制度を作った場合の助成です。

 

〇受動喫煙防止対策助成金

喫煙室設置費用に関する助成金です。 

 

〇中途採用等支援助成金

・生涯現役起業支援コース:40歳以上の起業における雇用関係の助成金です。

 

令和2年度は予算も横ばいで、働き方改革そのものに力を入れる影響もあり、助成金は新しいものも廃止も出ずに保守的になります。現場でのローカル・ルールも電子化に向けて下火になるだろう、ただし窓口で不正への反応から細かい要件は増えるだろうというのが見方です。

 

今までと変わりないものも多いですが、雇用関係は地域のもの、働き方改革関係は経産省の助成金などとも比較して選ぶ、ということが多くなっています。金額によるものでなく、いかに面倒なく受けられるか、ということかと思います。私の今年度のセミナーも厚労省の雇用関係という枠から外れないものの、地域や他省など他の選択肢もご紹介するつもりです。