助成金にひびく“特定受給資格者” | 新労社 おりおりの記

助成金にひびく“特定受給資格者”

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助成金の計画や、申請を当局に出しに行くと、担当者の方が、書類を持って、「ちょっと確認してまいります」と後ろに引っ込むことがあります。これが「従業員の解雇や特定受給資格者を出していないだろうな?」ということの確認です。そもそも助成金の書類を、受理されるかどうかはともかく、出す資格があるかという、助成金窓口の交渉の第1の関門です。

 

解雇をすると、会社都合退職者を出した、ということで、その日以後6か月は、書類を提出できない、つまり雇用関係助成金が受けられなくなる、期限に遅れても知ったことではないよ、というのは、周知のことですが、その解雇より“軽い”要因で会社を去ることになるとその会社の助成金に響くことがあります。それが特定受給資格者です。ちなみに特定理由離職者(その他の理由の離職)は助成金にひびきません。

 

特定受給資格者に関する、助成金の要件は以下のようになります。

 

計画提出から6か月前の日から支給申請書の提出日までの間に、倒産や解雇などの離職理由により離職した者の数が、計画提出日における被保険者数の 6%を超えていない、また、特定受給資格者が3人以下であること。

 

この離職理由とは、雇用保険の離職票上の離職区分コードの・・・

 

1A (事業主都合解雇、勧奨退職)

3A (事業縮小や賃金大幅低下等による正当理由)

 

に当たる区分で、「特定受給資格者」に該当する従業員が、その支給申請時の雇用保険加入の従業員総数の6%を超え、かつ4人以上発生する場合、助成金の不支給要件に該当します。

 

その要因“特定受給資格者”はどんな人でしょうか?

 

〇 倒産などにより離職した者。その原因が・・・

・ 倒産または、 事業所の廃止

・1 か月に30 人以上の離職予定の届出がされた

・雇用される被保険者の3 分の1 を超える者が離職 した

・事業所の移転により、通勤することが困難となった

 

〇 労働契約がまずい・・・

・労働契約の締結で、明示された労働条件が事実と著しく相違した

・有期労働契約の更新で3 年以上雇用された場合、その契約が更新されない

・有期労働契約の締結に際し、更新が明示されたのに、労働契約が更新されない

 

〇 お給料が減った、遅配した・・・

・お給料の額の3 分の1 を超えて、支払い遅延が 2 か月以上となった

・離職の直前6 か月で、支払い遅延が3 ケ月あった

・賃金が前と比べて85%未満に低下した

 

〇 残業などで健康損ねそう・・・

・離職の直前6 か月間で3 月連続45 時間、1 月で100 時間、2~6 月平均で月80 時間を超 える残業が行われた

・事業主が当局 から指摘されたにもかかわらず、危険若しくは健康障害の防止措置 を講じなかった

・労働者の職種転換等が必要なのに、職業生活の継続のために必要な配慮を行わなかった

 

〇 会社の内部事情、人間関係のもつれ・・・

・上司、同僚等からのいじめなどを受けた

・事業主から退職するよう勧奨を受けて離職した者(早期退職優遇制度等除く)

・事業所において使用者都合の休業が引き続き3 か月以上となった

・事業所の業務が法令に違反した

 

いかがでしょうか?倒産や賃金の遅配などはそうそうありませんが、会社の内部事情や、残業の多さなどは、ありがちではないでしょうか。ただ、1 か月に30 人以上の離職予定の届出がされた、というのは大量離職者届のことで、かえって労働移動支援助成金に結び付くのは、興味深いところです。

 

また、面倒なのは、会社で事実を隠して離職票を作って従業員の方に発行しても、それをハローワークで覆される可能性があることです。書面その他で固めても「強制的に書かされた」と言われることもあります。それを担当者が会社に照会し、事実を突き止めて修正などをするのです。

 

助成金を受ける会社は「国の労務施策を率先して行ういい会社」なのです。そういう会社になるためには、社員が健康でなければならないし、いじめなどあってはならないのです。こんなところからも、助成金を受ける意味があるといえるでしょう。