食堂車はなぜなくなったか | 新労社 おりおりの記

食堂車はなぜなくなったか

当ブログをご訪問頂き、ありがとうございます。

 

○ 著書、『すぐにもらえる!雇用関係助成金 申請・手続マニュアル』の内容はこちら

○ 助成金の無料診断はこちら 、法改正最新情報はこちら
○ メルマガ「新労社が贈る、人事のツボ!」はこちら

=====================================

JR(国鉄)の食堂車は、鉄道が普及して長距離を走るようになった明治年間からの歴史です。列車はむかしむかしは、10何時間も乗るものでした。その間食事の用もあるので、専門の車両が生まれたのです。

 

車端に通路と調理室、大部分にテーブル10個くらいと、それを囲む椅子が並べられているのが、基本的なスタイルでした。冷房なども旅客車では優先して取り付けられ、快適な乗り心地です。特急・急行はもとより、戦前、戦後まもなくまでは各駅停車の普通列車にまで、食堂車があったものでした。

 

そんな便利な食堂車がなぜなくなったのでしょうか?

 

 

ひとえに「採算が合わなくなった」ということに尽きます。第一は時代の変化でしょうね。特急はお金持ちの乗るものという時代は過ぎ去り、大衆化した列車内で、どう供食するか?という課題に、列車という閉鎖空間が応えきれなくなったのです。

 

飲食店は売り上げを上げるには少なくとも、3つの要素をクリアする必要があります。

 

・回転率(1つの席で、なるべく大勢のお客さんが食べるようにする)

・立地(大勢が通行するところ、もしくは宣伝でお客さんが入るようにする)

・客単価(1人の客が高い値段払うようにする)

 

 

この3つすべてがダメになってきたのですね。ビール一杯で数時間も粘る客、また、列車自体も大入り満員ということがなくなってきて、また、新幹線なども、せいぜい4~5時間くらい乗らないと、揺れる車内をフラフラ歩いてこようとは思わないというところです。

 

 

では上画像のように、車両の半室は普通の客室、もう半分は気軽な寿司カウンター、そば屋のビュッフェといったものでイケるかというと、これは単価が低すぎて、話にならないのです。急行の乗車時間はせいぜい2~3時間で、軽食を食べる気になるかというところでしょう。それだったら車内販売で十分ということです。軽食でも値段を吊り上げざるを得ず、それだったら降りたら食べるよ、ということになるのです。

 

 

今はその車内販売すら衰退しています。特急・急行であれば必ずあったのに、今では存在しない特急も珍しくなく、一部区間だけなどの措置も多いのです。

 

そこはJRも考えていて、食堂車は予約制でフランス料理や懐石料理を出し、時間を区切って回転を保証するやり方にしました。寝台特急北斗星などは、それで食堂車も採算が合うようになってきたのです。

 

 

しかし今度は、寝台特急離れで定期列車としては、客が減ってきたのです。鉄道はビジネス客や通勤通学客など、定期的に長期間利用する客で持っています。風情を楽しむことや観光というのは年がら年中するものでもないので、お客は減るのです。

 

 

飲食店としての「立地」そのものが危ぶまれ、今度は食堂のみならず、列車そのものを「予約制」にし、ものすごいお金持ちしか載せない列車に限るようにしました。九州のクルーズトレイン、ななつ星などは、究極の飲食店列車です。立地も回転も客単価さえ保証されているのですから。

 

列車やバス、飛行機など、交通機関は行き先を同じくした「選択されたお客」です。それをどこまで限定して選択し、効率化するか、というところに、食堂車のみならず、設備におカネのかかる鉄道というのは行き着かざるを得ない気がします。その結果、少なくとも大衆が気軽に利用できる食堂車はなくなったのです。

 

 

しかしいかがでしょうね。当たり前の設備で、自由に飲み食いし、何気ない日常のささやかな飲食が列車内に組み込まれている感じは、今後どこかで要望されるような気がしますね。いや、もう出ていることかもしれません。