あれから・・・ | 陽の光浴びて、月は輝く

陽の光浴びて、月は輝く

 ― シンイ 二次小説 ―

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※今回はこちらの「ふたり」のお話です。

 

 

 

「…ギ!トギー!」

 

微かな、しかし確かな声に、私は薬草に落としていた目を上げた。

胡麻粒のような影が、跳ね転げながらこちらに駆けてくる。

私が立ち上がり身体ごとそちらに向こうとしたとき、強い衝撃が私を襲った。

倒れる、と目を瞑ったけれど、倒れてはいなかった。

私は、あいつに、抱きしめられていた。

きつく、強く。

 

(くるしい)

 

拳で胸を叩くこともできず、ただ頭を横に振った。

こんなふうに誰かに抱きしめられたことなどなかったから、どうしていいかわからずに私は混乱した。

心臓の音がうるさい。

私の音?それともあいつの音?

 

「トギ。言いたいことがある」

 

耳の近くで、あいつの声がした。

びっくりしてあいつの身体を押してほんの少し空いた隙間からあいつを見た。

 

「…あったのに。たくさん。生きて帰れたら言おうと思ってたことが。なのに」

 

嬉しさと、呆れと、情けなさとが入り混じったあいつの表情。

そして、もうひとつの表情。

そういえば、テホグンがあの女(ひと)のことを話すとき、こんな顔をしていた…

 

「胸、が。笑ってら…」

 

そう困ったように言ってあいつが私の手を取り、自分の胸に当てた。

くすぐったくなるほど、心臓が跳ねている。

私に向かって駆けてくるあいつにそっくりだったから、私は笑った。

 

(ほんとだ)

 

「…なんでだろって思ってた。今までずっと戦うときは夢中で、何も考えられなかったのに、いつからかお前のことばっかり考えるようになってた。…お前がいるここに帰りたいって。お前に会うまで死ねないって。そしたら自分でも知らない力が湧くんだ。なんでかわからなかったけど、お前の顔を見てわかった」

 

胸の上の私の手を握りしめて、あいつが眉をしかめながら笑った。

 

「俺、お前と生きたいんだ」

 

胸がぎゅっと苦しくなって、喉がふさがったように息ができなかった。

私は空を仰いだ。

テホグンが用意してくれたこの庵で。

あんたが、私が使いやすいようあちこち手を入れてくれたここで。

畑を耕しているときも、種をまいているときも。

芽吹けば知らせたかったし、花が咲けば見せたかった。

陽射しが眩しい朝も、嵐の夜も、どんなときも。

 

(私もあんたのことばっかり考えてたよ)

 

あんたはここに帰ってくる気がしてた。

それでも、心配だったし、会いたかった。

 

(おかえり。テマン)

 

心の中でつぶやいただけなのに、あんたは真剣な顔になって背筋を正した。

そして見たことのない笑顔で、言った。

 

「ただいま。トギ」

 

聞こえたの?

聞こえたんだ。

私の声が…

 

涙を堪える私をそっと抱いて、それから腕に力を込める。

さっき抱きしめられたのだって初めてだったのに。

怖いような、おかしな気分だけど。

 

(きっと、慣れる)

 

そんな気がする。

抱きしめられることも、おかえりと言うことも、これから生きていく中で、たくさん経験するだろうから。

 

ぬくもりを感じながら、私は目を閉じた。

 

その少しあと、テホグンと一緒に4年ぶりに帰ってきたあの女(ひと)に飛びつくように抱きしめられて、(やっぱり慣れる気がしない!)と思うのだけど、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

ご無沙汰しております~

色々なことがあった夏が過ぎ、すっかり涼しく(寒く?)なりましたね。

今日は当ブログ設定のテマナのバースデイイブ💛

( 十月八日、テマン ←こちらのお話になります )

テマンはトギと話すときは吃音が出ませんよね。(出てたらすみません💦)

それに気付いたあたりからカプにしたかったこのふたり。

念願かなってくっつけちゃいました!

テマトギ?トギテマ?かわゆいです🤭

何だかこのふたりはいわゆる結婚という形にこだわらない感じがします。

テマンはテホグンとの仕事がありますから、終わればここに帰ってきてしばらくトギと過ごす。

そんなふうに生きていくんじゃないかなと。

それこそバルサとタンダみたいに(ご存知の方いらっしゃるかにゃ~)💛

テマン、お誕生日おめでとう!

 

 

 

 

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