焼き鳥
たかが焼き鳥されど焼き鳥
お肉に串を刺し、塩と胡椒で焼き上げるだけの料理には底知れぬ奥深さが潜んでいる。
以前、札幌市にある焼き鳥チェーン店で働いていた時代、最初の数年は焼き鳥の奥深さなど微塵もわかっていなかった。
いつからだろう?
衝撃を受けた美味さを味わったのは・・
自分の味との違いに気づき、追求し始めてから何年たったのだろう・・
いつしか自分の焼く焼き鳥が、そこらじゅうの焼き鳥屋さんよりはるかに美味しいと思えた。
肉の切り方から串の刺し方、火加減、塩加減、焼き加減、全てを意識し始めてから俺の焼き鳥は数段美味しくなった。
もちろん美味しい肉を使えば、美味しい焼き鳥が出来る。と考えていた時もあったが、焼き鳥はそんなに簡単なものではないことにも気づいた。
料理とは最高の料理人とその食材のコラボレーションによって最高の味が生まれる。
一概にいい食材を使えば美味しくなるという思い込みは間違いだ。
その料理人にあった食材が存在し、値段が高かろうが安かろうが、そのスタイルを見つけることが出来れば、全ての料理が美味しくなる。
無論焼き鳥も当てはまるのだ。
現在市場では、やれイベリコ豚だ名古屋コーチンだとブランド肉が飛び交っている。
俺はあえてそこを避ける。
言わば変わった性格なんだな。
食べた人たちは、この肉は北海道産の肉か?とか聞いてくるが、ぜんぜん違う。
ちなみに最近良く使う豚肉はフランス産。鶏肉はブラジル産。
他にもノルウェー産やカナダ産、オランダ産なども仕入れることがある。
十分美味しい焼き鳥が焼ける。
次は「やっぱり炭火が美味しいね~!」とくるが、ガス火でも電気でも美味しい焼き鳥は十分できる。
ようは腕次第
今回は俺が実践する、焼き鳥の中の一部を教えましょう。
テーマは「手羽先」
近年近くのスーパーなどでも売られる手羽先は焼き鳥以外にも色んな調理方法があるが、どう考えても焼き鳥で食べる手羽先がダントツナンバー1!
他にも手羽元、手羽中などが存在するが、焼き鳥で焼くなら手羽先だ。
この手羽先は、焼き鳥屋の中でも試行錯誤を繰り返してきた肉。
ある焼き鳥屋では食べやすさを重点に、ある焼き鳥屋では焼き上がりの速さを重点にしてきた。
どれも間違えているとは思わないが、俺の場合、美味さを重点にする。
まず串の刺し方だが、人間の手で言えば親指側に串を刺す
手羽先が丸まらないようにピンと背筋を伸ばすような感覚だ
理想として一発で決める
何度も串を刺すと肉に無数の穴が開いてしまい肉汁が落ちやすくなってしまう
この肉汁が手羽先のポイントでもある。
どれだけ旨みを閉じ込められるかがポイントだ。
最初から皮が破けている手羽先は、スープにでも使おう!焼き鳥にはむいていない。
そして焼き台にのせるときは、毛の生えている面を下にしてのせる。
なぜ?こっちが下なのかは、焼いてみるとわかってくるだろう。
肉と骨の構造上、逆面を最初に焼いてしまうと中にある血が中でそのまま固まってしまうのだ。
毛の生えている面をのせると見る見るうちに血があふれ出すように出てくるのがわかる。
火が通っていくうちに肉が凝縮して血を押し出してくれているのだ。
これを半対面から焼いてしまうと血が固まり、押し出して流れる入り口がふさがれてしまう。
食べた時に味の違いがはっきり出てしまうのだ。
しかし、流しすぎも良くない。
最初に言ったと通り、肉汁をいかに閉じ込めるかがポイントで、あまりにも流しすぎると肉汁も流れ出てしまうので程ほどに流してふさいでしまおう!
ふさぎ方は簡単。焼けばいいのだ。
ひっくり返すだけ。
塩、コショウは最初に振っておこう!
そして酒をかけると肉の色が数段に変わってくる。
加減は好み。口や文では説明できない。
ある程度狐色になったら、仕上げに入る
仕上げといっても焼くだけだが、まずは裏面(毛の生えていないほう)を焼き過ぎないように焼く。茶色の一歩手前、狐色がベスト!
そしてひっくり返し、皮面。
この最後に皮面。にも理由がある。
手羽先の両面は肉質が違っていて毛の生えている面はパリッと、半対面はしっとりとしている。
このパリッと面をよりパリッとさせるために最後に仕上げる。
余分な油を落として皮面がジュワジュワしていたら最高だ!かぶりつきたくなる!でもきっとやけどする。
揚げたてのような熱さなので気おつけて欲しい。
以上が手羽先の焼き方
これだけではわからなくて当たり前だとおもう。
書いてみて何だが、伝わらないと思う。
そう思う人は、美味しく焼ける人に焼いてもらったらいい。
以上