正法眼蔵随聞記
(曹洞宗の開祖、道元の言葉や問答を弟子が克明に書いた書)
道元禅師がある日言われた。
私が宋にいて、禅院で古人の語録を読んでいた時、ある西川の僧が私に問い掛けた。「語録を読んで何の役に立つのか」
答えて、「古人が何をしたかを知るためです」
僧が云う、「それが何の役に立つのか」
答えて、「郷里に帰って人々を教化するためです」
僧が云う、「それが何の役に立つのか」
答えて、「人々の利益のためです」
僧が云う、「つまるところ、それが何の役に立つ」
あとで、このことを考えたが、語録や公案(禅の課題)を読んで古人の行為を知ったり、または迷っている者に説き聞かせる、そういったことはすべて自分の修行や人々にとって結局無用である。ただ、ひたすら座禅をして大事を考えれば、後は一字をしらなくても、悟りを開くことが分かった。だから、あの僧は「つまるところ、それが何の役に立つ」と云ったのだ。これが真実の道理なのだと思って、その後語録等を読むのをやめて、ひたすら座禅に励み、大事を明らかにすることが出来た。(意訳:海千)
「座禅・犬禅」(写真:南岳)
