1967年8月30日、茨城県利根町布川(ふかわ)で強盗殺人事件が発生した。手掛かりが少なく事件の捜査は難航した。県内の不良少年をしらみ潰しに当たった結果、アリバイが曖昧な二人の不良少年がいたので、取り敢えずその二人が別件逮捕されることになった。世に言う「布川(ふかわ)事件」の始まりだった。その一人、桜井昌司さんは全く身に覚えのない強盗殺人事件を「お前がやった」と何度も言われているうちに「どうせ、裁判になれば、やっていないことは明らかになるのだろうから」と、繰り返し刑事から言われたことをそのまま認めてしまった。そして身柄は検察に送られ裁判となったが、嘘であれ一度自供した行為は重く、それを取り消しても裁判官に認めてもらえず、終身刑の判決が下されてしまった。

 一度下った判決は更に重く、控訴したがそのまま最高裁で終身刑が確定してしまった。刑務所に入って直ぐに再審請求をするもその扉は固く、請求は何度も棄却される。29年間の服役後、仮保釈となり、また再審請求を開始した。それから14年かかったが、桜井昌司さんは奇跡的に無罪判決を勝ち取った。死刑・無期懲役事件では戦後7件目となる再審無罪判決であった。表題の「俺の上には空がある広い空が」は、無罪を勝ち取ってから言った言葉ではない。桜井昌司さんが、ときに気が狂いそうになる拘禁生活の際、呪文のように唱えていた言葉だという。そしてそのまま題名とした本を2021年に発刊している。(文:海千)

「生かす・スイス・スカイ」(写真:南岳)