悟りを得るのに「正法眼蔵随聞記(しょうぼうげんぞうずいもんき)」より

(曹洞宗の開祖、道元の言葉や問答を弟子が克明に書いた書)

 

ある日、仏道修行者が尋ねて来て言った。

「私は長い間、仏道を心にかけて過ごして来ましたが、未だに悟りを得るに至りません。悟りを得るに頭の良さや才能は要らぬと聞いておりましたが、その様に考えて良いのでしょうか」

道元禅師は言われた。

「その通りです。悟りを得るのに、聡明・博識である必要はありません。まず、何としても仏道を究めるという志が重要です。その切なる心があれば、その思いが遂げられぬことはありません。仏道を求める痛切な志を持っていれば、座禅の最中に、あるいは古人の公案(禅の課題)に向っている時、あるいは新しい知識に出会った時、それがどんなに高くても射落とすことが出来、またどんなに深くてもそれを釣り上げることが出来るでしょう。頭の良さや才能は全く問題にしなくて良いのです。

(文:海千意訳)

「紅葉」(写真:南岳)