世界を覆っている空気は、戦争・貧困・地球汚染と悲しいことばかりだ。この「厳選スクラップ」で取り上げたテーマも、冤罪・餓死・尊厳死と痛ましいテーマばかりだ。それも、世の中でそういうことが多くなっていることなので、しょうがないことなのだろう。しかし、今月は正月なので、少しでも明るい話題を探して見た。(日本がまだ戦後の食糧難だった時代の話です)

三好さんはずっと家族と広島県に住んでいる。家の近くに国鉄の己斐(こい)駅があり、そこで早朝4時ごろ魚を積んだ貨物列車が停車し、トラックが横付けされる。そしてイワシと氷が入ったトロ箱が手作業でトラックに積み込まれる。この時イワシがこぼれ落ちるのだ。三好さんのお父さんが、トラックの下にもぐって拾ってきていた。三好さんが中学生になると、この「仕事」は三好さんが引き継いだ。ときには大きなサバが落ちてきたこともある。三好さんが今になって気が付いたのは、トロ箱を積み込むのはいつも同じ人だった。このおじさんは、わざと落としてくれていたのではないかと。

 (2014.9.4朝日新聞「記憶の食」三好敬)より

「漁港朝景」(写真:南岳)