バスの降り口に立つ人々 | アジアご飯、とくにマレーシアご飯、時々つぶやき

アジアご飯、とくにマレーシアご飯、時々つぶやき

2005年から2009年までの4年間、常夏のマレーシアで暮らしていました。2年過ぎた今でも、日本食は「ハレ」の料理でちょっぴりよそよそしく、アジア飯のほうが「ケ=日常」のご飯で、ホッとします。私にとっての食とは、味わいながら、みんなとつながることです。

ヘッドホンから音が漏れる。

かなりの大音量で聞こえてくるのは、妙な機械音。

「ツツツタンツツタン」「タッタッタッタ」

同じテンポでくり返されるドラムようなリズムに

ときおり何かの機械音が、かぶさり、

そのたびに、ヘッドホンの持ち主は頭を揺らす。

 

小さく横にブンブン。

中くらいに横にバンバン。

角度を変えて、縦にガンガン。

 

わたしにとって聞き慣れない音楽だからなのか、

この妙な機械音を耳に直接とどろかせ、

ときに頭を動かし、目をグイッと見開いて窓の外を見つめている彼が
ちょっと怖かった。

「機械の星からワープしてきた、瞬きをしないマシーンマン」と

遭遇した気持ちだった。

 

そして、次に現われたのは、

「6歳にて色気を放つ、おさげ美少女戦士、プリティ」

 

はじめわたしの横に立っていた彼女は、

居心地が悪かったのか、スタスタとバスの降り口近くに

移動していった。

 

手すりにもたれて立つ。

バスが揺れるたびに少女は手すりに全身をあずけ、重心をささえる。

そのたびに、茶色でやわらかいおさげの髪がハラリ。
その姿がとても美しくて、かわいくて、そして色気もムンムンで、

近くにいた大学生ぐらいの若者は、すっかりドキドキ。(のように見えた)

少女を見下ろしながら、ニッコリ微笑んだりしている。(これは本当に)

 

親密な空気が流れるふたりの間。

つかのまの愛の劇場。

「揺れたり、危ないことが合ったら、オレが守ってやるよ」

「ハイ、お兄さん。頼りにしてます」

 

そんな契約が心のなかで交わされ、少女は安心、若者は戦士気取り。

 

しかしバスの終点で、その契約はブッチリ終わりを告げ、

お互い右左に歩き出す。


つかのまの空間と時間を共有したものたち。
そんな瞬間のひとときでも、こんなに色んな人がいる。
わたしの頭で想像できるタイプ以外の人がいっぱいいる。

いっぱいいるってことが、良いとか、悪いとかを超えた真実。