大沢在昌『北の狩人』あらすじ | 好奇心の権化、アクティブに生きたい。

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今回は、大沢在昌さんの『北の狩人』のあらすじと感想を。

 

まず、この記事であらすじを。

次の記事でネタバレ感想をつづっていきます。

 

 

 

【注意】

細かい部分ははしょってはいますが、上巻のほとんどを記載します。

これから読む予定のある人はお気を付け下さいますようお願いします。

 

 

 

■登場人物
・梶雪人
12年前に父親が殺された事件の真相を追って、秋田から新宿へやって来た青年。25歳。マタギの孫にして秋田県警捜査一課の刑事。

・藤田杏
雪人が新宿へ来て間もなく声をかけてきた女子高生。ぼったくりスナックのキャッチ。雪人をスナックに案内したのを最後に更生する。

・佐江
新宿署四課の刑事。太った中年。雪人を気にかけており、何かと手を貸している。

・宮本
新陽会内本藤組若頭にして後の新宿事務局長。元田代組ナンバーツー。42歳。刑事である佐江とは別方向から雪人を気にかけている。

・近松
新宿事務局長にして後の新陽会トップ最有力候補。インテリ風ヤクザ。42歳。宮本とは同じ旧田代組の外様同士で仲もよかったが、盃は交わしていない。

・鴨下
都内で複数の店を経営する、遊び人風のキザな男。30代後半。関東出身だとうそぶいてはいるが、時々言葉が訛る。

・新島
鴨下と行動を共にする金貸しの男。30過ぎ。男前で物腰は丁寧だが、何を考えているのかわからない。

・刈部耕次
12年前、殺人容疑で新宿から秋田県警への移送中に行方をくらませた田代組組員。雪人の父親が殺された事件に関係していると思われる。



新宿に来たばかりの梶雪人は、スナックのキャッチをやっていた藤田杏とその友達エリに声をかけられます。
連れていかれた先はぼったくりスナック。

エリと杏がこっそり店を出た後、雪人はとんでもなく高額な飲食代を請求されます。
払えないと言うと、店の男に殴りかかられました。
しかし雪人は相手を返り討ちにします。

そこへ怒鳴り声が響きます。
仲間を呼びに出ていた店の者が、新陽会内本藤組若頭の宮本を連れてきてしまったのです。

「途方もない請求だろうが、飲み食いしたものは払うのが筋だろう」
宮本から厳しい口調で言われても、雪人は動じません。それどころか
「田代組のことを知っている人はいませんか」
「知らねえな」
「わかりました」
出ていこうとする雪人を、宮本は引き留めます。
 

そこへだみ声が割って入ります。店の入り口に太った薄汚い中年――佐江が寄りかかっています。

「あなたは本藤組の人じゃないんですね」
雪人は佐江に聞きました。
「ああ、違う」
「ならあなたには関係ない」

二人のやり取りを聞いていた宮本は大声で笑いました。
それから険しい顔になって、
「消えろ、小僧」と一言。

雪人は店を出ました。


店を出た雪人は歌舞伎町の中で杏と再会します。

報復を警戒する杏でしたが、雪人がフレンドリーに接するものだから、すっかり毒気を抜かれてしまいます。

この場にエリの姿はありません。
雪人が理由を聞くと、エリがキャバ嬢をやっていた頃に散々貢がせたヤクザがいて、そいつに連れていかれたとのこと。
雪人は「助けなくちゃ」と杏に事務所へ案内させます。

事務所に乗り込もうとした雪人は、案の定、ヤクザに殴られます。
その時、また佐江が姿を見せます。ヤクザの発言から、佐江が刑事であることが判明します。

三者が問答を始めた隙に、杏はエリを連れて逃げ出しました。

刑事の前ということもあり、ヤクザは雪人に捨て台詞を吐くと街へ消えていきました。

佐江は雪人に職務質問をかけます。
職業を聞かれて、雪人は無職だと答えます。
佐江は「田代組について知りたいなら教えてやろうか」と水を向けますが、その発言が本気でないと知った雪人は不機嫌になってその場を後にします。

靖国通りの人混みに飲まれた雪人を見付けることは、佐江にはできませんでした。


翌朝、宮本は馴染みの喫茶店でモーニングサービスを摂ろうとしていました。
そこへ佐江が現れます。

「お前の古巣のことを聞いて回ってる小僧が気にならねえか」
佐江は雪人のことを話題にします。それから、新陽会本部で何があったのか尋ねます。
宮本は取り合いません。
けれど雪人の名前を教えたところ、反応らしい反応を見せます。

さらに秋田から来たことを伝えたところでもう一度、本部で何があったか尋ねると、
「大親父が危ないらしい」
宮本は答えました。本家の組長は癌を患っていました。


同じ頃、杏が新宿で横断歩道の信号待ちをしていると、ポルシェに乗ったキザな中年が声をかけてきました。
知り合いの鴨下です。
杏は鴨下が嫌いでした。田舎者のくせに、それを隠そうとする根性が気に入らないのです。

「鴨下さんて、本当は東北でしょう。昨日会った友達に訛りが似てるんだもん」
そう言って「梶くんていうんだ」と続けると、鴨下は目に見えて動揺しだします。出身を見抜かれたせいではありません。
「今度紹介してくれよ」
梶という青年に異様なまでの興味を示す鴨下に、杏は返事を濁しました。

鴨下と別れた後、杏は雪人のことを無性に気にしている自分に戸惑います。
キャッチのバイトももうしないと決めます。雪人のことを考えると、急に心が咎めてきたのです。


その日の夕方。
新陽会の本家組長が亡くなりました。


雪人は秋田の郷土料理屋にいました。
ここの大将は、十二年前に新宿から秋田県警への移送途中に姿を消した田代組組員・刈部耕次の兄でした。

刈部耕次の移送を担当した刑事の一人が雪人の父親・誠人(まさと)であり、誠人は苅部逃亡の際に殺されたとみられています。
雪人は大将に弟の話を聞けないかと訪れました。

直後、宮本も店にやってきます。

宮本は雪人を店の外へと連れ出します。
行き付けのバーで競うように強い酒を飲みながら、大将に代わって刈部のことを話します。
「俺は確かに田代組にいた。刈部は弟分だったが、この十二年、一度も会ってない」

雪人の方は、自分が十二年前に殺された刑事の息子であることの他、マタギの孫であることも話します。

宮本は店の代金を置くと、先にバーを出ていきました。


雪人がバーを出てから花園神社で酔いを醒ましていると、ヤクザに絡まれます。エリを手籠めにしようとしているヤクザでした。
今度こそ乱闘に発展します。

その後、雪人は駆け付けた警察官に連行されることになりました。


一方、佐江は小倉のアパートを訪れていました。
小倉は旧田代組の組員で、ヤクザでいることもカタギに戻ることもできず、シャブに溺れていました。
いい機会だからと、色々と吐かせてやろうと思ったのです。

部屋に鍵はかかっていませんでした。
佐江が踏み込むと、室内は血の海と化していました。他殺のようです。

通報を入れた後、佐江は新宿署から、喧嘩で引っ張られた若者が佐江の名前を出したと聞かされます。カジというそうです。
佐江の指示で指紋を取ったところ、データベースに該当がありました。
梶雪人は、秋田県警の巡査で、捜査一課の刑事でした。

秋田県警に確認を取ると、現在雪人は休暇中とのことでした。

佐江は理解しました。
雪人は休暇を使って、十二年前の事件を刑事としてでなく、個人として捜査していたのです。

十二年前、秋田の営林署員が殺される事件がありました。
その容疑者は、新宿にいた田代組組員の刈部。
その身柄を引き取りにきた二人の刑事の内、一人は刈部とともに行方不明。もう一人は雪人の父親で、死体となって見付かっています。

しかしその後田代組の組長が殺され、組員はバラバラに。
手がかりは掴めず、事件はお宮入りになっていました。


佐江が雪人の正体を知る頃、雪人は新宿署を出ていました。
宮本との遭遇で話が聞けずじまいでいた郷土料理屋へ向かいます。

大将は雪人が十二年前の事件の被害者の身内であること、その雪人の口から「刈部も被害者だったのではないかと思う」という言葉を聞き、宮本の他に刈部を可愛がっていた者の名前を口にします。
近松という男です。
大将は近松がどこにいるのかはわからないものの、恐らく田代組にいたであろう不動産屋の名前と場所は教えられると言いました。

翌日、雪人は大将から教えられた不動産屋へ向かいます。
大島不動産の大島と話を終えたタイミングで電話が鳴りました。
雪人が出ていこうとすると、電話を受けた大島から呼び留められます。

「小倉んとこ行ったのか、お前」
「小倉?」
「俺らと同じ元田代組だ」
「その小倉さんがどうしたんです」
「殺られたんだよ」

大島は、田代組を嗅ぎ回る雪人が現れた途端に小倉が殺されたと聞き、雪人を疑います。
雪人の名前と住所と職業を聞き出したところで、大島は怒りを爆発させそうになりました。

「これからどこで誰と会うか知らねえが、警察だってことは早めに言った方がいいぜ。じゃないと長生きできないぞ」


その日、杏がエリと遊んでいると、鴨下からコールが入ります。
エリが美味しいものを奢らせようというので、二人は鴨下と合流することにしました。

合流した鴨下は仕事仲間と一緒でした。新島という、三十過ぎの青年実業家です。
ヤクザに顔が利くという新島と知り合えて、エリはすっかり気を良くしています。


一方、雪人が小倉のアパートに足を運ぶと、佐江が待っていました。
雪人は警察だと言わなかったことを謝り、佐江の案内の元、現場を見せて貰います。

詳しい話をする為に、二人は雪人が祖父の知人から借りているビルへ向かうことになりました。

そこで雪人は、十二年前に殺された営林署員が世にも珍しい青い春蘭を見付けたが為に、刈部に強殺を企てられたのではないかとの推論を述べます。
そしてその事件で最も被害を被り、最も得をしたのは誰かを。

損をしたのは、事件のせいで潰された田代組。
得をしたのは新陽会に取り込まれ、昇りつめた近松。

一度秋田に戻るという雪人に、佐江は色々調べておくと言い、二人は酒の入ったコップを掲げました。


秋田に発つ日、雪人はぎりぎりまで新宿を体に覚えさせようと、街を歩き回るつもりでいました。
ビルを出て間もない頃でした。

「あんた、梶さんだろ」
三十過ぎぐらいの、端整な顔立ちではあるものの表情の乏しい男に声をかけられます。
雪人と話したがっている人がいるので、その人のところまで連れていくように言われたと言います。

雪人は男の車に乗ります。

連れていかれたのは、地下にあるバーの跡地でした。
男は誰かと電話をすると、雪人に向き直りました。

「なんで田代組のことを聞いて回っている?」
「親父を殺した犯人を突き止めたいからです」
「なぜ、今なんだ?」
「あんたを動かしているのは誰なんだ」

質問に答えない雪人に、男は回し蹴りを見舞います。
雪人も応戦しますが、流れるようにくり出されるフェイントまじりの回し蹴りになす術もありません。
雪人は何発も貰いながら、全身で押さえ込みにかかります。
背負い投げが決まり、かろうじて雪人は勝利しました。

けれど男は雪人の質問には何も答えません。
雪人は最後に、自分が刑事であると男に告げて、地下を後にしました。


それから間もなく、杏と偶然の再会を果たします。

 

杏から手当てを受ける中、鴨下という男の名前を聞き出した雪人は次の上京後、鴨下の経営するディスコに向かうことになります。

ところがそこでとんでもないことに気付き…

 

 

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以上があらすじです。

感想は次の記事に続きます。