綾辻行人『殺人鬼――逆襲篇』あらすじ | 好奇心の権化、アクティブに生きたい。

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今回は、綾辻行人さんの『殺人鬼――逆襲篇』のあらすじと感想を。

 

まず、この記事であらすじを。

次の記事でネタバレ感想をつづっていきます。

 

 

 

【注意】

※オチに関わるネタバレ部分はカットしました

細かい部分ははしょってはいますが、これから読む予定のある人の閲覧はお控え下さいますようお願いします。

 

またグロテスクな表現が含まれます。

苦手な方は閲覧にご注意下さい。

 

 

 

■登場人物
・白河真実哉
小学4年生の気弱な少年。他人の"目"と意識を同調させる能力があるが、自分でコントロールはできない。

・白河愛香
真実哉の姉。中学3年生。剣道部の部長をしている。

・白河誠二郎
愛香と真実哉の父親。40歳。半年前に登った双葉山で何者かに襲われて以来、植物状態。医者の見立てでは回復の見込みはないとのこと。剣道の有段者。

・白河啓一郎
誠二郎の兄にして愛香と真実哉の伯父。47歳。誠二郎が入院する白河外科病院の院長でもある。

・白河和博
啓一郎の息子にして愛香と真実哉の従兄。医科大学の3年生。愛香に剣道の指南をすることがある。

・後藤満代
白河家のお手伝い。54歳。

・冬木貞之
白河外科病院の職員。28歳。

・喜多山静子
白河外科病院の看護師。39歳。

・溝口沙也香
白河外科病院の看護師。22歳。

・加川泰子
白河外科病院の看護師。26歳。

・冴島美砂子
夫と娘を何者かに殺され、自身も大火傷を負って白河外科病院に搬送された主婦。29歳。

・曾根崎荘介
6人を切り付け内3人を殺した上、逃亡中のシャブ中。34歳。

・茜由美子
昨年の夏、真実哉が短期入院した東京の病院で知り合った女性。



■あらすじ
四月五日。
全身に大火傷を負った冴島美砂子が白河外科病院に搬送される少し前。

白河愛香は弟・真実哉と一緒に、植物状態になっている父・誠二郎の見舞いに白河外科病院を訪れていました。
自動販売機で飲み物を買って病室に戻ると、真実哉が倒れているのを目にします。
どうやらまた発作を起こしたようです。

真実哉は心が突然、体から離れてしまうことがあります。
離れた心は誰かの"目"になり、その誰かが見ているものを一緒に経験するというのが真実哉の発作です。

この時の真実哉は美砂子の"目"になっていました。
目の前で何者かに夫と娘を無残に殺され、さらには車に乗ったまま崖から落ちるという体験をした真実哉は、目覚めてから必死に愛香に説明します。けれど彼女は取り合ってくれません。

窓の向こうでは黒い煙が狼煙のように上がっています。
ひょっとしてあれが、自分が"目"になっていた美砂子が落ちた場所ではないか…
そう思って窓から外を見ていると、林の中から黒焦げの男が姿を現しました。男は沼の中に入っていきます。ふと目が合ったかと思うと、次の瞬間、凄まじい殺意の感情に襲われます。
恐ろしい波動から逃れようとしている間に、男の姿はどこにもなくなっていました。

この日の夜、真実哉と愛香は病院の隣にある白河家に泊まることになりました。
白河家の主人である白河啓一郎は、誠二郎の兄にして白河外科病院の院長でもあります。

真実哉と啓一郎、それから白河家のお手伝いである後藤満代が、曾根崎荘介という薬物中毒者が三人を殺して逃亡したというニュースを目にする頃、愛香と白河和博が裏庭の道場での剣道の稽古を終えて戻ってきました。
和博は啓一郎の息子で、医科大学に通う三年生です。
「今夜は愛香ちゃんもいるし、もし逃亡犯が入ってきても突き一撃で撃退してくれるさ」
そう言って笑っています。

夜も更けて真実哉が眠っていた時、また発作を起こしました。
湿った靴音を立ててやってきた、ずぶ濡れの男に見下ろされています。それが誠二郎の"目"であると気付いた真実哉は、目を覚ますなり家を飛び出します。
「お父さんが殺される」
危機感を覚えて、雨が降る中、白河外科病院へと走り出しました。


同じ頃、看護師・溝口沙也香はナースコールに呼ばれて、不審に思いながらも誠二郎が眠っているであろう病室に向かいます。植物状態にある患者の病室から、一体どうして…
沙也香が病室ドアを開けると、そこには目と鼻をふさぎたくなるような惨状が広がっていました。
ベッドに横たわるのは、両目をくり抜かれ、両耳と鼻を削ぎ落とされ、切り裂かれた腹部から引き出された腸を首に巻いた死体――

「警察」
つぶやいてきびすを返す沙也香の前に、何者かが立ちふさがります。
沙也香は顔面を激しく打たれます。沙也香の顔を打ったものは、死体から切り取られた大腸でした。
前後不覚に陥った沙也香は、殺人鬼に両腕をへし折られます。逃げようとするも今度は俵を担ぐように持ち上げられ、そのまま頭を死体の腹部に落とされます。
死体の内臓を鼻と口に詰まらせ、沙也香は窒息死しました。


真実哉は病院の玄関ポーチの側で、病院の職員である冬木貞之の死体を目にします。
死体は眉間を一突きにされ、顎から喉元を野犬に食われていました。
殺人鬼の仕業だと思った真実哉は、開いていた玄関扉から建物内へ飛び込みました。
それからナースステーションにいた喜多山静子に、一緒に来て欲しいと頼みます。

静子とともに病室に入ると、そこで凄惨な光景を目撃します。
「外へ出ましょう」
静子に呼びかけられた途端、真実哉は発作に見舞われて意識を失いました。真実哉は今、殺人鬼の"目"になっています。
目の前には白いドアがあり、部屋番号を示す数字が見えます。殺人鬼は隣の病室に身をひそめていたのでした。

静子がナースステーションに飛び込んで受話器を取り上げた時、部屋の明かりが突然消えます。開けっ放しのドアから男が侵入していました。
静子は洗い場にあった塩酸の容器に手を伸ばすと、ふたを開けて殺人鬼に投げ付けました。
しかし与えたダメージは静子が思ったよりも遥かに小さかったようで、静子は鼻の骨と前歯が折れるほどの力で顔面を殴られ、気を失います。
気が付くと、仮眠室のベッドに横たえられていました。手足を縛られています。
殺人鬼は静子の口に漏斗を突っ込むと、そこから塩酸を流し込みました。やがて漏斗を抜き取ると、代わりに消火器のホースが押し込まれます。
ノズルから噴出した消火剤と炭酸ガスに鼓膜を破られた瞬間、静子は絶命します。
肺と胃袋を破裂させ、ぱんぱんにふくらんだ静子の腹へ向けて、殺人鬼は拳を振り下ろしました。その手には漏斗が、尖った部分が突き出るように握られています。
静子の腹は破裂して、肉片が四方八方に飛び散りました。


一方、大火傷を負った美砂子が目覚めると、そこは集中治療室でした。室内には美しい看護師・加川泰子がいて、「痛みますか」と声をかけてくれます。
そんな泰子の背後から男が現れました。
男は泰子の喉を締め上げて持ち上げると、適当なところで投げ捨てました。
それからハサミを手にすると、泰子の頬を、唇の端から耳の辺りまで切り開きます。さらには上唇の中央から鼻までも。
元の美しさなど見る影もなくなった泰子は美砂子にすがり付きますが、すでに気が触れていた美砂子は泰子の腕にかぶり付くと、その肉を食べ始めました。
泰子はたまらずベッドから離れようとしますが、殺人鬼の持つハサミに耳を突き刺され、それが脳まで至ったことにより死亡。
殺人鬼はハサミを引き抜くと、泰子の顔の肉を切り取りました。それを美砂子に食わせます。

美砂子の口の中は泰子の肉でいっぱいです。それでも殺人鬼は押し込んでくるのをやめません。
吐き出そうとすると、手で口をふさがれます。
窒息する直前に、大きく開かれたハサミに両目を突き刺されました。それが美砂子の最期となりました。

殺人鬼はベッドから離れると、窓辺に立って外を見ました。視線の先には白河家があります。
(だめだっ!)
ずっと殺人鬼の"目"になっていた真実哉が叫んだ途端、その意識は真実哉の体に戻りました。
殺人鬼の凶行を知らせる為に、白河家へ戻らなければと立ち上がります。


白河家では、翌日に手術を控えているのに眠れない啓一郎が睡眠薬を飲んだところで、満代が部屋にやってきます。
大きな物音がしたと伝えられ、一緒に玄関へ向かいました。そこで真実哉の靴がなくなっていることを不審に思います。
そういえば真実哉は夕方に発作を起こしていたことを思い出します。
誰かの"目"になるというのは、狂言の可能性もありますが、啓一郎の死んだ妹も同じことを言っていた記憶があります。啓一郎は本心では、真実哉の言うことが嘘と切り捨てられずにいました。

それはともかく物置小屋を一人で確認しに行くと、床に濡れた足で歩いた跡が残っていました。裸足の足跡だった為、真実哉の靴がなくなっていた事実と矛盾します。

風雨から逃げ込むように玄関に戻った時、啓一郎は異変に気付きます。床がひどく濡れているのです。
効いてきた睡眠薬のせいで朦朧としながら進んでいると、満代が姿を見せます。その腹部は赤く染まっており、破れた服の間から腸が飛び出してきました。
啓一郎自身も危ないのではないかと思い至った瞬間、肩口に衝撃を受けます。
啓一郎は放り出したばかりの傘に手を伸ばしますが、狙い澄ましたように斧を打ち下ろされました。肘から先が切断されます。
両足も切断されます。繋がっていたもう一方の腕も切断され、啓一郎はダルマにされてしまいます。

殺人鬼はひとまず啓一郎から離れると、満代の頭部を切断しました。
啓一郎はなおも逃げようとしますが、満代と同じように頭部を切断されてしまうのでした。


一方、真実哉は病院の門から道路に出る手前でぬかるみに足を取られて突っ伏していました。
今からぼくが駆け付けてみたって、どうしようもない。そんな絶望に襲われます。
ふと、昨年の夏に、病院で出会った茜由美子という女性のことを思い出します。彼女には双子の姉がいて、テレパシーで互いの心の声が聞こえると言っていました。
そのことを思い出した真実哉は、心の中で愛香に呼びかけます。

白河家の二階で眠っていた愛香は目を覚まします。弟の声が聞こえてきました。
(殺人鬼が、そっちへ…すぐにみんなを起こして。逃げて)
愛香は半信半疑のまま部屋から出ます。雨音の狭間に、物音と人の叫び声のようなものが聞こえてきました。
和博の部屋に飛び込んで、眠っていた彼を起こします。
同じように物音を聞いた和博は、木刀を手に、愛香とともに階下へ向かいます。そこで二人は、啓一郎と満代の無残な死体を目にします。

「警察に電話を」
和博に言われ、愛香は階段ホールへきびすを返しました。
和博は木刀を構え直します。陰から突然、何かが振り下ろされてきます。和博は飛び退くと、再び襲いかかってきた殺人鬼の持つ凶器を打ち払います。間を置かず攻撃に転じ、喉元に突きを見舞います。殺人鬼は仰向けに倒れました。
「なぜ殺した」
しかし和博が殺人鬼の顔を認めた途端、ひどく動揺します。その隙が命取りになり、ふくらはぎの肉を食い千切られてしまいました。
通報を終えた愛香に「逃げろ」とうながすのがやっとです。
和博は顔面を壁に叩き付けられた挙句、口に押し込まれた木刀を直腸まで突き刺され、汚物にまみれて絶命しました。

愛香は必死の思いで逃げ出します。逃げた先は裏庭の道場。
自ら袋小路に逃げ込んだことを後悔しながらも、追ってきた殺人鬼に対抗するために、剣道の防具を身に付けます。愛香が竹刀を持つのと扉が破壊されるのはほとんど同時でした。

愛香がいくら剣道の経験者といえど、異常なまでの怪力と耐久力を持つ殺人鬼に到底敵う筈などありません。
絶体絶命――その時、足音が聞こえてきました。
真実哉でした。真実哉は白河家から持ち出した殺虫剤を殺人鬼の目に噴き付けると、スプレー缶を逃げる方向とは逆に投げ付けて音で誘導してから、愛香とともに走ります。

「ぼくが引き付けるから、お姉ちゃんはその間に逃げて」
真実哉は愛香を家の中に隠すと、殺人鬼に小石を投げ付けました。身をひるがえして雨の中を駆け出します。
気付けば病院の南側にある沼のほとりにいました。下草の中にべたりと身を伏せます。
パトカーのサイレンを聞きながら、近付いてきた足元を見た時、真実哉ははっとします。
父の"目"になって病室に入ってくる者の足音を聞いた時、それは湿った靴音をしていた。なのに、こいつは裸足でいる…
真実哉は視線を上げていきます。どろどろに汚れた、パジャマのような服。そして、その顔は――

 

 

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以上があらすじです。

感想は次の記事に続きます。