「だいち4号」、通信速度3.6Gbpsを記録–地球観測衛星として世界最速







 「だいち4号」(ALOS-4)が衛星-地上局間のデータ転送で通信速度3.6Gbpsを記録した。地球観測衛星での通信速度として世界最高性能という。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の第一宇宙技術部門が7月23日に発表した。



 実現したのは、だいち4号に搭載されたKaバンド(26GHz帯)の電波による直接伝送系。直接伝送系はJAXAの研究開発部門が開発したという。


 地球観測衛星は地球を周回しているが、地上局との見通しが得られるのは10分程度。10分の間に、衛星から最大2000km以上離れた地上に向けて観測データを送り届ける必要がある。観測幅の拡大で観測データ量が増加するため、観測衛星のデータ伝送を支える技術は大きな課題の一つとされている。



 だいち4号で採用したKaバンド(26GHz帯)は、「だいち2号」などで採用したXバンド(8GHz帯)と比較して使用できる周波数帯域が広いことが特徴と説明。


 Kaバンドで衛星などに割り当てられている帯域は25.5G~27.0GHz(帯域幅1.5GHz)であり、Xバンドの8.025G~8.4GHz(帯域幅0.375GHz)の4倍となっている。



 だいち4号では、Kaバンドの広い帯域幅を活用して周波数多重(1.8Gbps×2周波)で多値変調方式と併用することで伝送速度の高速化を実現したとしている。


 Kaバンドの電波は雨や大気で減衰する性質があるため、減衰した分を補填するために信号を増幅する増幅器の高出力化が必要になる。その際に派生する信号の歪みが通信品質を劣化させることが課題となっていた。


 この課題を解決するために、だいち4号では、研究開発部門の研究成果を活用して、増幅器に信号歪みを直接伝送系のデジタル変調器で補償する「Digital Predistortion(DPD)」と呼ばれる機能を採用した。



 だいち4号は三菱電機がプライムメーカーとして設計、製造。同社はJAXAの初期運用も支援している。

(出典:JAXA機関誌「JAXA's」81号=2020年10月15日発行)
(出典:JAXA機関誌「JAXA’s」81号=2020年10月15日発行)

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JAXAプレスリリース
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